ボクっ娘剣士と奴隷少女の異世界甘々百合生活

沢鴨ゆうま

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第一章 見習い剣士と新人奴隷

第四十三話 困惑する従者と迅速な同士

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Szene-01 ダン家

 ティベルダは日が沈むころにようやく起きた。
 ベッドに座るエールタインに気づいてそばにいることに安堵する。

「エール様ぁ。ちゃんとそばにいてくれたのですね」
「まだ心配しているの? ちゃんといるよ。ティベルダのご主人様だよ?」
「えへへ」

 照れるティベルダはエールタインの腕に抱き着こうとする。
 その時、髪の毛が生えていることに加えて長髪であることに驚いた。

「えっ! 私の髪の毛!?」

 藍色の髪の毛を手に取り理解に苦しんでいる様子のティベルダ。
 エールタインが教える。

「寝ている間に生やしたみたいだよ。驚いたのはボクさ。だってボクと同じ色の二色なんだから」
「二色……ほんと。でも青が多いからエール様と違いますね」
「ボクは同じだなあって思ったよ。なんだか嬉しくなった」

 それを聞いたティベルダは改めてエールタインの腕に抱き着いた。

「好きですか? これなら好きですか?」
「まだ心配なんだね。うーん……どうしたらわかってくれるのかな」

 肩越しに上目遣いで訴えるティベルダ。
 エールタインはすでに甘やかしモードになってしまったようだ。
 抱き着かれている腕をひっぱってティベルダを横にさせる。
 もう片方の腕でティベルダの頭を持ちあげた。
 閉じたままの口を一回り小さな口に触れさせる。

「可愛いからすぐにしたくなるよ。これからは回復する時だけにしないとね」
「もっと、もっとしてください! いつでもしてください!」
「主人におねだりし過ぎだよ。したばかりなのに」
「だって……」

 顔のどの部分でも触れられる至近距離で話す二人。
 お互いの目をしっかりと見ている。

「頬っぺたが可愛いでしょ」

 エールタインは頬に唇を触れさせる。

「お鼻も可愛いでしょ」

 唇を頬から鼻の頭へ這わせて触れる。

「目がとてもきれいでしょ」

 瞼へ触れる。

「おでこまで可愛いし」

 前髪を鼻の頭で退かせながらおでこに触れる。
 頬ずりをして耳元へ。

「耳も肌が透けるほどきれいで」

 耳たぶに触れる。

「小さい口も可愛い」

 最後は唇に触れた。

「ボクは全部好きだよ。これでも納得しない?」

 真っ赤な顔をしたティベルダが驚き半分、嬉しさ半分といった表情で答える。

「い、今は納得……しました。エール様ごめんなさい、わがまま言ってしまって」
「これはボクがしたかったんだ。主人からの気持ちだから、ただ受け取ればいいんだよ」
「……はい」

Szene-02 レアルプドルフ三番地区、地区道上

 見習いデュオが三番地区内を歩いていた。

「こちらの方面へは滅多に来ないから新鮮ね」

 しっかりと睡眠をとったルイーサとヒルデガルド。
 ルイーサは起きるとすぐにエールタインの家に行く支度をした。
 ヒルデガルドもそれに続いた。
 休日にしてもらったので、修練や父であるドミニクのことを気にせずに動くことができる。
 ルイーサは迷わずエールタインに会う時間とした。

「三番地区って思ったより密集していないのね」
「みなさんは一番、二番地区に集中しがちですから」

 レアルプドルフは東の外れにブーズがある。
 奴隷に対する考えが現在とは違った頃の話。
 町民はブーズから離れている西側に集まり勝ちであった。
 貧困のために中心部から離れて行った町民の集まりがブーズ。
 その者たちの素行が悪かったわけではない。
 しかし、貧富の差は町民の意識にも差をつける。
 そのため本能的とも言える行動として、町民はブーズとは逆位置にある西側に寄った。

「エールタインはこの風景を見ながら修練しているのね」
「ルイーサ様はあの方のことで頭がいっぱいのよう――」

 ルイーサはヒルデガルドの口を手で塞いだ。

「あのね。いつも言うけれど、あなたのことは大好きなの。エールタインのことは好きだけれど、あなたのことを好きな事は揺るがないから」

 ルイーサは手を戻して歩き出す。
 ヒルデガルドは肩をすくめてついてゆく。

「ごめんなさい。優しいご主人様で幸せです」
「ふん! 何よ今さら」

 ルイーサは言葉とは裏腹に微笑んでいる。

「剣聖様が東側に住んでいらっしゃるのは、奴隷に対しての意識が違うことの表れよね」
「素晴らしいですし、ブーズ出身としては感慨深いことです」

 剣聖のダンと、エールタインの父アウフリーゲンの二人が提唱していること。
 それは奴隷を家族として迎える。
 その考えに賛同するものが徐々に増え、奴隷への扱いも随分変わった。

Szene-03 ダン家

 ティベルダは話題の中心にいた。

「毎日のように変わっている私ですけど、みなさん嫌いにならないでください」

 ヘルマがティベルダの肩を抱く。

「なーにを言っているの! 驚きはしているけれど、可愛くてしょうがないわ」

 ヘルマはティベルダの身体がくの字になるほど肩を抱き寄せた。
 そして頭を撫でて言う。

「この髪の毛だってとってもキレイじゃないの。エール様と同じ色だからデュオらしさが増しているわ」
「そ、そうですか」

 二人の様子を見ながら他の三人が笑っている。
 そこへ玄関外からの声が届いた。

「ルイーサ・マイナードと申します」

 エールタインが反応する。

「ルイーサ!?」

 ティベルダを抱いたままのヘルマが言う。

「もう来られたのですか。エール様はよく好かれますね」

 エールタインが玄関へ向かった。
 ヘルマに抱かれたままのティベルダはエールタインを目で追う。
 心配そうな表情になったのを見て、ヘルマが声をかける。

「心配なの?」
「……はい。エール様は私のものなので」
「独占欲がすごいわね。その言葉はどちらかというと主人が使う方だと思うのだけど」

 玄関ではエールタインが扉を開けていた。

「ルイーサ、もう来たの?」
「あら、約束をしたのだから来ない理由は無いでしょ?」

 ルイーサは胸を張って目を瞑り、ツンとしてみせる。
 そんなルイーサの横でヒルデガルドが軽く会釈をする。

「いや、来るの早いなあと思ってね」
「今日はお休みをもらっているからよ。修練の都合で仕方がないの」
「そっか。ボクももっと修練しないといけないや。それじゃあ中へどうぞ」

 ルイーサたちがダン家に入ってゆく。
 ダン家の賑やかさが増されることだろう。
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