ボクっ娘剣士と奴隷少女の異世界甘々百合生活

沢鴨ゆうま

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第一章 見習い剣士と新人奴隷

第四十七話 昇格

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Szene-01 レアルプドルフ、町役場

 ダンはとある書面を出すために町役場に来ていた。

「いよいよですか」
「ああ。もう少し鍛えてやりたかったんだが」
「急がなくてもよろしいのでは?」

 受付係が書面を見せながら話す。

「こちらが剣士の証明書、それから証石です」

 ダンはその二つを眺めながら受付係と話を進める。

「少々急ぐ理由ができてしまったのだよ」
「理由……ですか?」

 受付係から渡された二品を受け取りヘルマに渡す。

「うむ。ティベルダの能力について調べるためにな」
「ティベルダの……噂は聞いていますが町の人たちは詳しく知らないようですね」
「その方が助かる。何もわかっていないのだからな。憶測は不安を煽るだけだ」

 受付係も大きくうなずいた。
 ダンは片手を挙げながら踵を返して去った。

Szene-02 ダン家

「エールさまあ」
「もう十分に頭を撫でてあげたじゃないかあ」
「あれでですかあ? 私のこと好きなんですよね? そうですよね?」
「そうだよ、好きだからいつも撫でているし、一緒にいるんじゃないか」
「えへへ」
 
 エールタインに甘えるティベルダが止まらない。

「剣の手入れをしたいんだ。そろそろ作業をさせてくれない?」

 エールタインの腰に腕を巻き付けるように抱きしめるティベルダ。
 目はオレンジ色から紫色に変わりかけている。

「作業は疲れますよね! 私が疲れないようにしてあげます~」
「ふええ。ヨハナあ」

 修練後に町役場へと向かったダン達の帰りに合わせて食事を準備していたヨハナ。
 ずっと二人のやりとりは聞こえているらしく、終始笑顔のまま家事を進めている。
 エールタインから助っ人依頼をされたヨハナが答えた。

「エール様の従者ですから、エール様のお好きなようにすればよろしいのでは?」
「お好きなようにって……ボクが困る事をするなら一日中くすぐっちゃうよ?」
「構いませんよ? エール様がしたいのでしたら。笑い地獄に落とされても喜びます!」
「もう……何しても喜ぶんだもん。一緒に道具の手入れしようよ、ね? ティベルダ」

 ティベルダはエールタインの腹回りを弄り出した。
 そして胸をがっちりとつかんで言う。

「外ではストールを巻かれているので分かりませんけど、エール様ってしっかり胸がありますよね」
「ちょっと、何やっているのさ!? こらあ」

 エールタインは外出する時腹回りにストールを巻いて女であることを隠している。
 だが、ティベルダは常に一緒にいるためエールタインの全てを知る者だ。
 おまけに溺愛している。
 能力を解放してからというもの、エールタインへの愛情表現が激しくなっていた。

「エール様を感じているのです……はあ、幸せ」
「ボクは恥ずかしいだけだよ!」

 ティベルダは主人の抵抗が緩いのをいいことに、思いの丈をぶつけてゆく。

「エール様、エール様、私のエール様!」
「嬉しいけどこれ以上はだめ! せめてこの手を離してくれないかな」
「嫌いになったわけじゃないですよね? 私のことが好きですよね?」

 エールタインは胸をつかんでいる手を外し技で離れさせた。

「はい、もうおしまい。主人の手伝いをしなさい!」
「……はい、わかりました」

 ティベルダはしょんぼりしつつ、主人の指示に従った。
 力が抜けたティベルダが立ち尽くしている。
 それを見たエールタインが思わず抱きしめてしまう。

「もう、可愛いなあ。これじゃあ何もできないよ。休みの時間以外は困らせないでね」

 抱きしめられたことで納得したような表情をするティベルダ。
 目の色が紫からオレンジに変わる。

「休みの時間は甘えていいのですか?」
「ん~、まあ、休みなら。ちゃんと休んでいられるようにしてくれれば、ね」
「それなら私は得意です! ヒールしちゃいます!」
「ああ、そうだったね……ボクの思う休みとどこかズレているような気がするけど」

 ヨハナはクスクスと笑っている。
 何も手を貸す気はないようだ。
 むしろ二人のやりとりを楽しむことが日課となっているとみえる。
 エールタインがティベルダから離れる。
 すると今度はティベルダがエールタインに抱き着いた。
 エールタインはそのままかまわず自分の部屋へと向かった。

「あそこまで仲の良い関係になるなんてね。エール様が毎日楽しそうで何よりだわ」

 エールタインの育ての親も同然なヨハナはホッとしたような顔になる。
 一番喜んでいるのはヨハナなのかもしれない。

Szene-03 レアルプドルフ、町役場

 町役場にドミニクがメリアを連れて訪れていた。
 受付係が対応している。

「そうですか、ルイーサ様も」
「も、とは?」

 書類と剣士の証石であるブラック・サファイアを差し出す受付係。

「先ほど同じように剣士への昇格申請をされた方がみえましたので」
「ふむ、剣士が増えるのは良い事だな。この町にとって一番心強いことだ」
「そうですね。こちらも証石をお渡しする時はとても嬉しいんです」

 受付係は言う。

「ルイーサ様、とても喜ぶのでしょうね。お知りになった時の笑顔が目に浮かびます」
「ふん。思っていたよりは努力をしていたようだが、あいつはすぐに慢心するからな。これからだよ」
「あらあら、あまり嬉しくなさそうですね」

 その場を早く去りたそうにしつつもドミニクは答える。

「コホン。まあ、師匠としてそれなりの成長を感じることができたことは良かったと言えなくもないかもしれんな」

 作り咳払いをしつつ答えを残して役場の外へ向かうドミニク。
 メリアは受付係と笑みを交わしてからドミニクを追った。
 受付係がボソッ呟く。

「相変わらず素直になれない人なのねえ」
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