64 / 218
第二章 剣士となりて
第十七話 決意と仲間
しおりを挟む
Szene-01 ダン家、ダンの部屋
エールタインとその師匠であるダンは、二人きりで話をするためにダンの部屋に移った。
ダンは椅子にゆっくりと腰を下ろすと、机に肘を乗せて楽な姿勢をとる。
エールタインは普段ヘルマが使用している椅子に座り、自分の部屋のように力を抜く。
「さて、どうした?」
早速本題に入ろうとするダンにエールタインが困った顔をして答えた。
「もう本題に入るの?」
「なんだ、話さないのか?」
「話すけど。久しぶりにこの部屋へ入ったんだから少しは……いや、なんでもない」
エールタインは片手を振ってその先の言葉を自身で止める。
「変なやつだな」
「ダンって……ああもう、いいよ。話せばいいんでしょ、話せば」
口を尖らせてしまったエールタインを見て、ダンは首を捻る。
「お前、たまに分からないことを言うのは変わらないな」
拳で膝をバンバンと叩いてみせるエールタイン。
少々息を荒くしたが、拳を膝から胸に運び、トントンと軽く叩いて落ち着かせた。
それからティベルダの家で得た能力についての情報を伝える。
「ほう、水の違いか。では下流の町でも能力者が生まれているかもしれないな」
「それはボクも気になったよ。これからは案件をこなしながら能力について調べていこうと考えているんだ」
「途方もない事のようにも思えるが、能力について知ることはレアルプドルフにとって重要な情報だ」
ダンは机から肘を離れさせ、両肘を膝に乗せて話を続ける。
「これまで分からず終いで済ましているのが不思議だった。ひょっとしたら真相を掴んでいた時期があったのかもな」
「そんな時期があったのなら、さすがに伝わっていると思う。それか……言い伝えを阻まれた事があるとか?」
二人とも興味を持っているからか、想像が膨らむようだ。
「案外近いところ……役場のどこかにでも情報が眠っているのかもな」
「考えるとありそうな事だらけだね。止めた止めた! はっきりさせるためにボクが動くんだから」
エールタインがダンの前に片手のひらを見せた。
ダンはその手のひらをポンと叩く。
気持ちの確認が完了した合図だった。
Szene-02 ルイーサの家
「はあ。一緒に活動できるようになったのね」
「今日も元気ね。この家が気に入ってくれたみたい」
自宅にて、ルイーサはエールタインと組めたことに酔っていた。
隣では、アムレットがヒルデガルドの両腕と頭の上を行ったり来たり、部屋中を駆けずり回ったりしている。
「アムレット、あなたと私の修練が始まるわ。あなたにとって天敵ばかりを相手にすると思うけれど、私がいるから。怖かったらすぐに戻ってきなさいね」
アムレットは二足立ちをして止まり、主人を見る。
きちんと聞いていると言わんばかりのアムレットを見てヒルデガルドが言う。
「うふふ、分かってくれたのね。ありがとう」
ヒルデガルドが微笑むと、壁の外側からカリカリと音が聞こえた。
「何の音かしら」
アムレットが玄関へと駆け寄る。
ヒルデガルドはアムレットに促されて扉を開けた。
「あら、すごい! みんなアムレットのお友達?」
玄関を囲むようにアムレットと同じ何匹ものリスが二足立ちをしていた。
「あなたには仲間がたくさんいるのね。私を安心させてくれているの? 優しい子」
ヒルデガルドは一旦家の中に入ると袋を持って戻ってきた。
「ごく普通のしかないけれど、私の気持ちよ。受け取ってくれる?」
いつもアムレットにあげている木の実を片手で持てるだけ手のひらに出す。
そして差し出した。
「良ければどうぞ。私とも仲良くしてね」
「ヒルデ、私抜きで楽しいことをしないで」
玄関を開けたままだったせいだろうか。
エールタイン酔いが醒めたルイーサが声を掛けた。
「ルイーサ様。そんなつもりでは……。アムレットが仲間がいると教えてくれたので」
「この子たちみんなアムレットの仲間なの? 情報をくれているのはこの子たちってことかしら」
「そうみたいです。アムレットはみんな仲間だと言っていますから」
「茂みに隠れていたのかしら」
驚いたヒルデガルドが勢いよく振り返る。
「ルイーサ様、アムレットの言うことが分かるようになったのですか!?」
「いいえ。分からないけれど、なぜ?」
「おっしゃる通り、みんなこの茂みにいるそうです」
ルイーサ家の背後を囲む茂み。
そこはアムレットを筆頭にリスの住処となっていたらしい。
リスに囲まれたルイーサの家は、日が沈んだ町の冷えを忘れさせるような風景となっていた。
エールタインとその師匠であるダンは、二人きりで話をするためにダンの部屋に移った。
ダンは椅子にゆっくりと腰を下ろすと、机に肘を乗せて楽な姿勢をとる。
エールタインは普段ヘルマが使用している椅子に座り、自分の部屋のように力を抜く。
「さて、どうした?」
早速本題に入ろうとするダンにエールタインが困った顔をして答えた。
「もう本題に入るの?」
「なんだ、話さないのか?」
「話すけど。久しぶりにこの部屋へ入ったんだから少しは……いや、なんでもない」
エールタインは片手を振ってその先の言葉を自身で止める。
「変なやつだな」
「ダンって……ああもう、いいよ。話せばいいんでしょ、話せば」
口を尖らせてしまったエールタインを見て、ダンは首を捻る。
「お前、たまに分からないことを言うのは変わらないな」
拳で膝をバンバンと叩いてみせるエールタイン。
少々息を荒くしたが、拳を膝から胸に運び、トントンと軽く叩いて落ち着かせた。
それからティベルダの家で得た能力についての情報を伝える。
「ほう、水の違いか。では下流の町でも能力者が生まれているかもしれないな」
「それはボクも気になったよ。これからは案件をこなしながら能力について調べていこうと考えているんだ」
「途方もない事のようにも思えるが、能力について知ることはレアルプドルフにとって重要な情報だ」
ダンは机から肘を離れさせ、両肘を膝に乗せて話を続ける。
「これまで分からず終いで済ましているのが不思議だった。ひょっとしたら真相を掴んでいた時期があったのかもな」
「そんな時期があったのなら、さすがに伝わっていると思う。それか……言い伝えを阻まれた事があるとか?」
二人とも興味を持っているからか、想像が膨らむようだ。
「案外近いところ……役場のどこかにでも情報が眠っているのかもな」
「考えるとありそうな事だらけだね。止めた止めた! はっきりさせるためにボクが動くんだから」
エールタインがダンの前に片手のひらを見せた。
ダンはその手のひらをポンと叩く。
気持ちの確認が完了した合図だった。
Szene-02 ルイーサの家
「はあ。一緒に活動できるようになったのね」
「今日も元気ね。この家が気に入ってくれたみたい」
自宅にて、ルイーサはエールタインと組めたことに酔っていた。
隣では、アムレットがヒルデガルドの両腕と頭の上を行ったり来たり、部屋中を駆けずり回ったりしている。
「アムレット、あなたと私の修練が始まるわ。あなたにとって天敵ばかりを相手にすると思うけれど、私がいるから。怖かったらすぐに戻ってきなさいね」
アムレットは二足立ちをして止まり、主人を見る。
きちんと聞いていると言わんばかりのアムレットを見てヒルデガルドが言う。
「うふふ、分かってくれたのね。ありがとう」
ヒルデガルドが微笑むと、壁の外側からカリカリと音が聞こえた。
「何の音かしら」
アムレットが玄関へと駆け寄る。
ヒルデガルドはアムレットに促されて扉を開けた。
「あら、すごい! みんなアムレットのお友達?」
玄関を囲むようにアムレットと同じ何匹ものリスが二足立ちをしていた。
「あなたには仲間がたくさんいるのね。私を安心させてくれているの? 優しい子」
ヒルデガルドは一旦家の中に入ると袋を持って戻ってきた。
「ごく普通のしかないけれど、私の気持ちよ。受け取ってくれる?」
いつもアムレットにあげている木の実を片手で持てるだけ手のひらに出す。
そして差し出した。
「良ければどうぞ。私とも仲良くしてね」
「ヒルデ、私抜きで楽しいことをしないで」
玄関を開けたままだったせいだろうか。
エールタイン酔いが醒めたルイーサが声を掛けた。
「ルイーサ様。そんなつもりでは……。アムレットが仲間がいると教えてくれたので」
「この子たちみんなアムレットの仲間なの? 情報をくれているのはこの子たちってことかしら」
「そうみたいです。アムレットはみんな仲間だと言っていますから」
「茂みに隠れていたのかしら」
驚いたヒルデガルドが勢いよく振り返る。
「ルイーサ様、アムレットの言うことが分かるようになったのですか!?」
「いいえ。分からないけれど、なぜ?」
「おっしゃる通り、みんなこの茂みにいるそうです」
ルイーサ家の背後を囲む茂み。
そこはアムレットを筆頭にリスの住処となっていたらしい。
リスに囲まれたルイーサの家は、日が沈んだ町の冷えを忘れさせるような風景となっていた。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
旧校舎の地下室
守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。
お兄ちゃんはお兄ちゃんだけど、お兄ちゃんなのにお兄ちゃんじゃない!?
すずなり。
恋愛
幼いころ、母に施設に預けられた鈴(すず)。
お母さん「病気を治して迎えにくるから待ってて?」
その母は・・迎えにくることは無かった。
代わりに迎えに来た『父』と『兄』。
私の引き取り先は『本当の家』だった。
お父さん「鈴の家だよ?」
鈴「私・・一緒に暮らしていいんでしょうか・・。」
新しい家で始まる生活。
でも私は・・・お母さんの病気の遺伝子を受け継いでる・・・。
鈴「うぁ・・・・。」
兄「鈴!?」
倒れることが多くなっていく日々・・・。
そんな中でも『恋』は私の都合なんて考えてくれない。
『もう・・妹にみれない・・・。』
『お兄ちゃん・・・。』
「お前のこと、施設にいたころから好きだった・・・!」
「ーーーーっ!」
※本編には病名や治療法、薬などいろいろ出てきますが、全て想像の世界のお話です。現実世界とは一切関係ありません。
※コメントや感想などは受け付けることはできません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
※孤児、脱字などチェックはしてますが漏れもあります。ご容赦ください。
※表現不足なども重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけたら幸いです。(それはもう『へぇー・・』ぐらいに。)
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
月弥総合病院
僕君☾☾
キャラ文芸
月弥総合病院。極度の病院嫌いや完治が難しい疾患、診察、検査などの医療行為を拒否したり中々治療が進められない子を治療していく。
また、ここは凄腕の医師達が集まる病院。特にその中の計5人が圧倒的に遥か上回る実力を持ち、「白鳥」と呼ばれている。
(小児科のストーリー)医療に全然詳しく無いのでそれっぽく書いてます...!!
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる