ボクっ娘剣士と奴隷少女の異世界甘々百合生活

沢鴨ゆうま

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第三章 平和のための戦い

第十四話 のちの姿に向けて

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Szene-01 トゥサイ村、村長宅前 

 ダン剣聖率いるトゥサイ村侵攻部隊は、当初の予想を超えた速さで村を占領した。
 村民の様子からすると、カシカルド王国からの依頼案件違反や同盟しているレアルプドルフへの反逆と見なされる一連の行為は、村長の独断で行われていたことが分かった。
 村民のほぼ全員が村長の企みには関係が無いため、部隊の作業は一人ずつ今後の意思について聞く時間へと移っていた。
 トゥサイ村の村長宅前で行われている作業を、三部隊のうち一部隊に任せてダンを含めた残りの部隊はレアルプドルフへ戻る。
 ダンは残る上級剣士にひと声掛けた。

「後は頼んだぞ。全員の答えが揃ったら伝令を寄こしてくれ。町長から次の指示を受けるはずだ」
「はい。お疲れさまでした」
「ああ。そっちもお疲れさん」

 村長の息が掛かった者と企みに関わった者は、レアルプドルフの町長が直接話を聞くことになるため、ダンが連れてゆく。

「それじゃあ鐘楼へ戻るぞー。町に戻るまでしゃきっと動けよ!」

 まとまりが無くなりつつあった剣士たちは、図星を突かれたようで、改めて背筋を伸ばした。
 全員が姿勢を正した様子を見てから、ダンはレアルプドルフに向けて歩き出す。

Szene-02 カシカルド王国、カシカルド城王室

「陛下」

 王室付きの侍女が王室の扉を叩く。
 人員を割いてまでレアルプドルフの占領を見届けさせた結果を報告するためだ。

「いいぞ」

 女王ローデリカが入室を許可した。王室付きの侍女と秘書官ならば、声を掛ければ入室許可は大抵下りる。
 ただ、秘書官は男性であるために制限されることがある。
 侍女は、王室へ手際よく静かに入室した。

「失礼します。陛下へ急ぎのご連絡が届きました」

 鞘から出した自身の剣を眺めていたローデリカが言う。

「で、どうだった?」
「無事占領が完了したようです。予想以上に呆気なかったとのこと」
「占領できたか。負傷者はいるのか?」
「いいえ、村民は無抵抗だったそうです。どうやら村長一人が起こした騒動だったようで」

 ローデリカは、眺めている剣に映る自分の顔を見ながらにやりと笑った。

「はっ。あそこの村民が反逆行為をすることに違和感があったが、やはりそうであったか。村長め、自分の置かれている立場を見失っていたな。レアルプドルフに相談すれば良かったものを――」

 トゥサイ村は、戦後の孤立時にレアルプドルフから手を差し伸べられ、今日に至るまで村として存続していられた。

「村長は自業自得という話で済むが、村民にとっては迷惑でしかないな。可哀そうに」

 ローデリカが村民のことを口にすると、侍女は軽く息を吸ってから連絡の続きを言う。

「村民についてですが……一人一人の意向を聞いているそうです」
「というと?」
「レアルプドルフの町民になるか、別の地へ行くか。各人の意思を尊重するとのこと」

 ローデリカは、眺めていた剣を窓際へ向けてゆっくりと振り下ろすと、剣の根元から剣先にかけて陽光が走り、よく磨かれていることを証明する。

「まったく、相変わらず世話好きな町だ。私が嫌いになれないではないか」
「お嫌いになる予定でもあったので?」

 細く、深紅に塗られた唇が光るローデリカは、剣を鞘へ納めながら侍女へ振り向いて言う。

「無い――お前、意地悪を言うようになったのか?」
「いえ、とんでもありません。会話をされるのも必要かと思いまして。お気を悪くされたのなら控えますが」

 至って平静を装う侍女に負けたのか、ローデリカは静かに答えた。

「お前を付けたのは間違いでは無かったようだ。だがこれ以上は不要。他に情報は?」
「以上でございます」
「……ならば下がってよい。新たに情報が届いたら秘書官に伝えさせろ。奴に鈍られては困るからな」
「かしこまりました。では、私はこの辺で。陛下も何かありましたら、いつでもお呼びくださいませ」

 ローデリカは無言で椅子に座った。承知したという合図だ。
 侍女は静かに王室を出て扉を閉めると、少し離れたところに立っている秘書官がいた。

「ふふ。心配そうな顔が続いている人がいるわね」
「当然だよ。陛下の機嫌がいつ戻るのか気掛かりしかないよ」
「そんなあなたに陛下から伝言よ。次の連絡係はあなたにさせろって」
「――本当か!?」
「私、嘘を言うような酷い人のつもりは無いけれど」

 両手をギュッと握って力強く両肘を引く秘書官。

「お許しが出た! よし、張り切っていくぞ!」
「空回りしないでね」

Szebe-03 ブーズ、区長宅前

「エールさまあ、ああ、ああ、エールさまあ」
「はいはい。これは限界だねえ。区長そういうことで、また作業をお願いしますけど」

 甘え声を出しながら、エールタインの背中に抱き着いているティベルダ。
 エールタインが歩きにくくなるほどにくっついて離れなくなっていた。

「なんだかうちの子が申し訳ないですなあ。まさか剣士様にそのようなことをしているとは。こらティベルダよ、失礼過ぎますよ」
「この子は許してあげてください。ボクが許していますし。能力の絡みもあって、ティベルダには必要なことなんです」
「能力が絡んでいるのですか。エールタイン様がお許しになられているのならば、私が口出しすることではありませんが……」

 心配そうにエールタインのご機嫌を伺う区長だが、それは杞憂に終わる。
 エールタインはティベルダの手を引いて前に来させると、今度はエールタインがティベルダの背中を抱いた。

「とりあえず、トゥサイ村への侵攻は無事に終わったので、いったん家に帰りますね。ダン剣聖とも話をしなければなりませんので」
「そうですな。差し当たり、エールタイン様からの案である壁の強化を進めていきます」
「よろしくお願いします。ルイーサも戻れる?」

 じっとエールタインと区長の話を聞いていたルイーサは、軽く息を吐いてから答える。

「こうして待っているでしょ? いつでもいいわよ」

 二組のデュオは、それぞれ寄り添いながらブーズを後にした。

「これからのレアルプドルフの姿――うちの子たちを送り出すことを、誇れるようになる時が来そうですな」

 区長は感慨深げに西門から見送っていた。
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