ボクっ娘剣士と奴隷少女の異世界甘々百合生活

沢鴨ゆうま

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第四章 ボクたちの町

第四話 思惑

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Szene-01 レアルプドルフ、ドミニク家

 父ドミニクと共に上級剣士への昇格申請を済ませたルイーサは、自宅にてヒルデガルドと証石を眺めていた。
 役場の謁見部屋でエールタインがしたように、ルイーサとヒルデガルドもこれまで持っていた証石とは違う輝きに見入った。
 ルイーサは役場から証石を受け取った後、母リジーに見せるため父と共に実家に戻った。
 見せるとリジーは大いに喜び、ルイーサは抱きしめられたり撫でまわされたりとたっぷり褒めてもらった。
 ルイーサは母から解放されると、満面の笑みを浮かべて椅子に座り直した。
 それら一部始終を見ていたヒルデガルドは、上機嫌なルイーサに寄り掛かって目を閉じている。

「あら、ヒルデガルドが甘えることってあるのですね。今日は娘が立派になって、ヒルデガルドの可愛らしいところまで見られて良い日だわ」

 リジーもルイーサと同じく満面の笑みが絶えない。家では主人のそばではなく、体の弱いリジーに付いているメリアも笑みを見て肩の力を抜く。
 ルイーサは、目を閉じつつも曇りの無い笑みを浮かべているヒルデガルドの頬を、人差し指でツンツンと押しながら言う。

「何よヒルデ、そいうことができるなら普段からしなさいよ」

 ルイーサの言葉にリジーは声を出して笑った。

「あらあら、ルイーサこそしてもらいたかったら言えばいいじゃない。あなたは寂しがりやなのだから」
「そ、そんなことありません!」
「はいはい、ごめんなさいね」

 ルイーサは全てを知られている母親相手に否定してみせるが、表情は明るい。
 母娘のやりとりの中、ヒルデガルドはルイーサに寄り掛かったまま動く気配が無い。
 気になったルイーサが声を掛ける。

「ちょっとヒルデ、あなた寝てしまったの?」
「今回の昇格はヒルデガルドにとって一つの目標だったのかしら。起こすのは可哀そうだから少しの間そのままにしてあげなさい」
「はあ……はい」

 ルイーサは仕方なさそうにしつつも、椅子の背もたれにしっかりと体を預けて自身の体が動かないようにした。

Szene-02 スクリアニア公国、ヘルムート海賊アジト

 スクリアニア公から直々に傭兵依頼をされたヘルムート海賊の船長ヘルムートは、決して容易くない依頼について受けるかどうかを悩んでいた。
 愛船アイン・オアーズ・アウフ・ゼー号の船長室で、窓の外から見える水平線を眺めながら決断をする。

「今度は弓を使うと言っていましたねえ」
「はい」
「ならばこちらも弓を使って犠牲を最小限に――できれば無傷で乗り切るようにしましょうかねえ」
「弓のみで?」
「いやいや、それでは露骨過ぎでしょうねえ。レアルプドルフ相手にこちらが不利な面というと――地形ですねえ。となるとやはり川を使うことになるでしょうねえ。弓に不慣れなレアルプドルフなら、早々に隙ができるでしょうねえ」

 ヘルムートの代役として表に出ている大男グンナーは、語尾にクセのあるヘルムートの言葉を真剣に聞いていた。

「あの町は剣士しかいませんでしたね。川から矢をばら撒いて弱らせるだけでも、こちらの仕事は十分でしょう」

 代役の時とは打って変わり、船長には丁寧な言い回しをするグンナーが話を合わせた。
 グンナーの言葉にヘルムートは一度うなずいてから言う。

「その通りですねえ。そして上手く町に入ることが出来れば漁り、無理なら帰る。こちらにとって勝敗はどうでもよいこと。勝ったところで大して利益はありませんからねえ。スクリアニア公が退けば以前のような日常に戻り、残ったとしてもこちらの仕事に何ら影響はありませんねえ。ふむ、この話は受けておきましょうかねえ」
「わかりました。一人城へ走らせます」

Szene-03 スクリアニア公国、ザラの部屋

 スクリアニア公の妻であるザラの部屋に、息子のフォルター卿とケイテ嬢が訪れている。
 三人並んでザラのベッドに座っている。ケイテはザラの膝を枕にして寝転がり、ケイテをザラと挟むようにフォルターがいる。

「母様、いつ動くのですか?」
「焦らないの。フォルターのように焦っていることがわかりやすいと、あの人にすぐ見つかってしまうわ」
「――ごめんなさい」
「ふふ、すぐに謝ることができて偉いわ。でも今のはあなたを責めているわけではないの。焦る気持ちは私も同じだけれど、失敗しないためには色んなことが全て揃った時に動くべきなのよ。焦るとその機を逃してしまうの。少々慌てたところで今さら変わらないわ。ならば成し遂げるためにじっくり慌てずに動かないと、ね」

 ケイテの頭を撫でながらフォルターの目をしっかりと見つめて話すザラに、フォルターは見入っていた。

「わかった。母様の言う通り、落ち着いて動くようにする」
「頼もしくなったのね、フォルター。ケイテのことをしっかり見てくれているし、いつもありがとう」

 フォルターはにこりと笑う母から目線を外し、照れくさそうにうなずいた。
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