年上不能どM御曹司は年下貧乏どSフリーターを絶対逃がしたくない!

りこりー

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「ただいまー!ラブちゃーん!」

 両手いっぱいの薔薇の花束、匂いに過敏な彼女には少しだけ匂いがきついかもしれないなって苦笑してしまう。彼女はどう反応するんだろうって考えるだけで顔が緩んできて、重症だよなって最近つくづく実感する。もう三十歳だというのにこんなドラマの中みたいな贈り物。きっと彼女は面倒そうにありがとうとぼそりと呟くんだろう。

「ラブちゃーん?」

 さっきから呼びかけているのに一向に彼女は玄関に現れない。いつもなら、恥ずかしそうに遅かったねって顔を伏せながら来るはず。
 さっきまでの浮かれ具合が一転。嫌な予感がして、花束を置いて家の中へ入る。無駄に広いリビングには、電気もついていない。人の気配がしないリビングを抜け、彼女の為に用意した部屋をいつもならするノックもしないで開ける。

「ラブちゃん…?」

 彼女の為に用意したパソコンだけが煌々と真っ暗な部屋の中を照らしていた。中に入り、周囲を見渡してみても彼女は居ない。
 ベットが綺麗に整えられていて、違和感しかない。寝るのが大好きな彼女ならいつもシーツが乱れているのに今日はベットメイクされたように異様に綺麗になっているのだ。焦燥感から自然とクローゼットに足が向き、扉を開けた。自分が彼女の為にと送った洋服がずらりと並んでいて良かったと安堵する。

「………ない…」

 彼女が此処に来るときに着ていたキャラメル色の古びたパーカーがない。それに好きでよく着ていた黒いスキニージーンズがない。それにいつか旅行に行きたいからと買った大きめの旅行鞄。それらだけが無くなっていて、自分が買ったものはすべて置いていかれたんだと悟る。

「出ていったのか…?」

 スマートフォンで彼女に連絡を取ろうとするが、機械的な音声で電源が入って無い事を伝えられるだけだった。何か痕跡が無いかと必死に部屋中を探す。何か月も彼女と住んでいたのに何も無い。

 ふと彼女がいつも触れていたパソコンに目が行く。そこに何かないかとマウスに触れると映し出された画面に絶望に引きずり込まれた。


 今までありがとう。お元気で。探さないでください。


 要点だけの短い文章。彼女らしいといえば彼女らしいけど…受け入れらない現実にただひたすらにしゃがみこんで現実じゃないことを祈った。
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