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第一章
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車で到着した所は、高級そうな高層階のマンションの駐車場だった。けれど、マンションの入口には数人警備員が立っていて見るからに厳重なのが伝わってくる。こんな厳重な所でする仕事ってなんだろうか、見てから決めてと言われたけれど、言いようもない不安が今更襲ってきた。けれど、百合の誘いだし、そんな心配することないだろうと自分を鼓舞して前に進む。
「ここ、パパが経営してるから給料の未払いなんて絶対ないよ」
「そうなんだ…」
給料はしっかりと払われるという言葉だけでも今は安心できる。なんなら、百合の父が経営しているキャバクラに誘われた時にそこで働けばよかったなと今更後悔する。なんかコネを使ってるみたいで罪悪感があったから断ったのだけれど、給料の未払いなんてされるくらいなら…もう何度目か分からない後悔にのまれそうだった。
「すごっ…」
マンションのエントランスの床は一面真っ白で、私の顔も映ってしまいそうなくらいピカピカに磨かれていた。大理石ってやつかな…自分の靴で汚してしまっていないかと気になる。何してるのと百合に笑われてしまったけれど、こっちは汚してしまっているかもと気が気じゃない。
こんな安いスニーカー履いてくるんじゃなかった。自分の服装も安いチェーン店のキャラメル色のパーカーと黒いスキニージーンズ。こんなマンションに場違いにもほどがある。
「規則だからこれ見てサインしてくれる?」
「え…うん」
出されたのは、秘密保持契約書。ここで起きたことは他言しない。撮影禁止。友人、知人を紹介したい場合、調査が行われることなど色々書いてあった。
簡潔にいえば、ここで起きたことに責任は持たない。ここで起きたことを言うなってことだと思うけれど、そんなに隠したいことって何?
頭に疑問がたくさん浮かぶけれど、それだけの秘密を抱えるから支払われる金額が高いのだと無理矢理自分を納得させて、サインをした。
「出来た?」
「うん、大丈夫」
用紙を受け取ると百合は付いてきてと手を子招いた。中に進んでいくとエレベーターがあり、そこに乗り込む。エントランスの前に居た警備員以外の人に会ってない。まるで、異世界に来てしまったような感覚になる。
チンっと到着を知らせる音が鳴ると五十階と表示された画面を見て、そんな高層階まで来たのかと唖然としてしまう。
「お嬢様、久しぶり~!」
「麗奈さん、お久しぶりです!」
百合がお嬢様と呼ばれている事にも驚きだが、麗奈と呼ばれる女性の美しさに目をパチクリさせて驚いてしまった。長身で、出るとこ出ていて、なんて均等がとれた体型。同じ異性なのにドキドキしてしまいそうだ。
「この子?新入り希望は」
「そうなの、あたしの親友」
自分に目線を向けられるとドキリと胸が高鳴る。こんな綺麗な女性見たことないよ!と叫んでしまいそうだ。
「ふーん、どっち?」
「Mだと体使うでしょ。Sのがいいと思う。性格的にも」
さっきからSとかMとかなんの話なんだろう。何か二人で盛り上がっているけど、話の内容が分からないのでぼーっと突っ立ていた。部屋に入ってきた初老の紳士な男性にペットボトルを出されてお礼を言った。しばらくお待ちくださいね、すぐ終わりますからと言って男性は去って行った。
出された紅茶のペットボトルの蓋を開けて一口飲み込む。ずっと緊張していたから喉がカラカラだった。ふんわりと香るアールグレイの匂いに美味しいなこれとラベルを見てみる。見たこともない文字で書かれていて、外国のものなのだと知った。金持ちの家で出る飲料は日本製でもないのかと訳の分からない事を考えていた。
「あぁ、ごめんなさい!えーっと」
「あ、兼高愛音です」
「愛音ちゃんね!よろしく、麗奈よ」
やっと話が一段落したのか、麗奈が手を差し出して来た。ぎこちなく握手すると口角をあげてふんわりと微笑んでくれた。眩しい、後光がさしているんじゃないかっていうほど眩しい。
「本当に綺麗ね、可愛いって言うより綺麗。それに…長身じゃないとこがいい売りになりそう。見たまんまより、ギャップの方が最近じゃ売れるのよね」
「えっと…」
「麗奈さん、愛音戸惑ってるから」
怒涛の如く話始める麗奈に戸惑っていると、まぁまぁと百合が止めに入ってくれて助かった。あのままじゃ、ずっと訳も分からず愛想笑いをする羽目になったと思う。
「これから私出番だから、ちょうどいいから見てて」
部屋から出ていく麗奈の背中は足取り軽やかで楽しそうに見えた。いい席取ってあるからと百合に手を引かれ、再びエレベーターに乗り、最上階である六十階というボタンを百合が押した。
到着するとすべてがワンホールになっていて、半分がガラスで仕切られているようなショールーム風な作りだった。椅子やソファが並べられていて、ガラスの中にはベットと…なんだろう、あれ。天井から吊るされた手錠?壁にも手足を拘束できるように拘束具が点在している。
「まさか……SとMって」
「今気が付いたの?」
「いやいやいや…体売るのと変わらないじゃない!」
「別に最後までするわけじゃないし」
「そういう問題?それに私そんな趣味ないよ⁉」
「大丈夫だって、あたしだって何も勝算がなくて連れて来たわけじゃないんだよね。前々から誘いたかったし」
言い返したかった私の口を塞いで、いいから見てなってと言った百合の顔は、何故か自信満々といった感じだった。一番後ろのソファ席、飲み物や果物も用意されていた。ほら座ってと百合に誘導されて、その席に座る。ふわふわして体が吸い込まれそう。私のベットよりふわふわなソファに座りながら待っていると、急に電気が消える。
ガラスの向こうだけはスポットライトが当たってて色濃く見える。
{お越しいただきありがとうございます。本日はサディスティックデー、女王様は麗奈様でございます。落札価格はこの店最高価格の三百万円!奴隷様のご希望で回覧自由になっております。是非、お近くで見てください}
部屋の中に響くアナウンスに耳を疑う。三百万?一回で?今の私が喉か手が出るほど欲しい金額だ。さすが麗奈さん…あの美貌じゃ奴隷になりたいって人も多いのか。
「ここ、パパが経営してるから給料の未払いなんて絶対ないよ」
「そうなんだ…」
給料はしっかりと払われるという言葉だけでも今は安心できる。なんなら、百合の父が経営しているキャバクラに誘われた時にそこで働けばよかったなと今更後悔する。なんかコネを使ってるみたいで罪悪感があったから断ったのだけれど、給料の未払いなんてされるくらいなら…もう何度目か分からない後悔にのまれそうだった。
「すごっ…」
マンションのエントランスの床は一面真っ白で、私の顔も映ってしまいそうなくらいピカピカに磨かれていた。大理石ってやつかな…自分の靴で汚してしまっていないかと気になる。何してるのと百合に笑われてしまったけれど、こっちは汚してしまっているかもと気が気じゃない。
こんな安いスニーカー履いてくるんじゃなかった。自分の服装も安いチェーン店のキャラメル色のパーカーと黒いスキニージーンズ。こんなマンションに場違いにもほどがある。
「規則だからこれ見てサインしてくれる?」
「え…うん」
出されたのは、秘密保持契約書。ここで起きたことは他言しない。撮影禁止。友人、知人を紹介したい場合、調査が行われることなど色々書いてあった。
簡潔にいえば、ここで起きたことに責任は持たない。ここで起きたことを言うなってことだと思うけれど、そんなに隠したいことって何?
頭に疑問がたくさん浮かぶけれど、それだけの秘密を抱えるから支払われる金額が高いのだと無理矢理自分を納得させて、サインをした。
「出来た?」
「うん、大丈夫」
用紙を受け取ると百合は付いてきてと手を子招いた。中に進んでいくとエレベーターがあり、そこに乗り込む。エントランスの前に居た警備員以外の人に会ってない。まるで、異世界に来てしまったような感覚になる。
チンっと到着を知らせる音が鳴ると五十階と表示された画面を見て、そんな高層階まで来たのかと唖然としてしまう。
「お嬢様、久しぶり~!」
「麗奈さん、お久しぶりです!」
百合がお嬢様と呼ばれている事にも驚きだが、麗奈と呼ばれる女性の美しさに目をパチクリさせて驚いてしまった。長身で、出るとこ出ていて、なんて均等がとれた体型。同じ異性なのにドキドキしてしまいそうだ。
「この子?新入り希望は」
「そうなの、あたしの親友」
自分に目線を向けられるとドキリと胸が高鳴る。こんな綺麗な女性見たことないよ!と叫んでしまいそうだ。
「ふーん、どっち?」
「Mだと体使うでしょ。Sのがいいと思う。性格的にも」
さっきからSとかMとかなんの話なんだろう。何か二人で盛り上がっているけど、話の内容が分からないのでぼーっと突っ立ていた。部屋に入ってきた初老の紳士な男性にペットボトルを出されてお礼を言った。しばらくお待ちくださいね、すぐ終わりますからと言って男性は去って行った。
出された紅茶のペットボトルの蓋を開けて一口飲み込む。ずっと緊張していたから喉がカラカラだった。ふんわりと香るアールグレイの匂いに美味しいなこれとラベルを見てみる。見たこともない文字で書かれていて、外国のものなのだと知った。金持ちの家で出る飲料は日本製でもないのかと訳の分からない事を考えていた。
「あぁ、ごめんなさい!えーっと」
「あ、兼高愛音です」
「愛音ちゃんね!よろしく、麗奈よ」
やっと話が一段落したのか、麗奈が手を差し出して来た。ぎこちなく握手すると口角をあげてふんわりと微笑んでくれた。眩しい、後光がさしているんじゃないかっていうほど眩しい。
「本当に綺麗ね、可愛いって言うより綺麗。それに…長身じゃないとこがいい売りになりそう。見たまんまより、ギャップの方が最近じゃ売れるのよね」
「えっと…」
「麗奈さん、愛音戸惑ってるから」
怒涛の如く話始める麗奈に戸惑っていると、まぁまぁと百合が止めに入ってくれて助かった。あのままじゃ、ずっと訳も分からず愛想笑いをする羽目になったと思う。
「これから私出番だから、ちょうどいいから見てて」
部屋から出ていく麗奈の背中は足取り軽やかで楽しそうに見えた。いい席取ってあるからと百合に手を引かれ、再びエレベーターに乗り、最上階である六十階というボタンを百合が押した。
到着するとすべてがワンホールになっていて、半分がガラスで仕切られているようなショールーム風な作りだった。椅子やソファが並べられていて、ガラスの中にはベットと…なんだろう、あれ。天井から吊るされた手錠?壁にも手足を拘束できるように拘束具が点在している。
「まさか……SとMって」
「今気が付いたの?」
「いやいやいや…体売るのと変わらないじゃない!」
「別に最後までするわけじゃないし」
「そういう問題?それに私そんな趣味ないよ⁉」
「大丈夫だって、あたしだって何も勝算がなくて連れて来たわけじゃないんだよね。前々から誘いたかったし」
言い返したかった私の口を塞いで、いいから見てなってと言った百合の顔は、何故か自信満々といった感じだった。一番後ろのソファ席、飲み物や果物も用意されていた。ほら座ってと百合に誘導されて、その席に座る。ふわふわして体が吸い込まれそう。私のベットよりふわふわなソファに座りながら待っていると、急に電気が消える。
ガラスの向こうだけはスポットライトが当たってて色濃く見える。
{お越しいただきありがとうございます。本日はサディスティックデー、女王様は麗奈様でございます。落札価格はこの店最高価格の三百万円!奴隷様のご希望で回覧自由になっております。是非、お近くで見てください}
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