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竜人は獣人族の中でも長命で知られる。番の種族にもよるが、生きている間に数名の番を娶ることは珍しくない。
「竜人は200歳前後で成人します。ですから、レオンハルトは番を得て当然なのに、未だ迎えていません」
適齢期を過ぎて相手が決まらないのは、いくら臣に下った王族であっても外聞が悪い。領地の端に追いやられていてもおかしくないのだと、ノクスは言葉をオブラートに包みもせずそのまま告げる。
辛らつな言葉を聞かされている本人は、何故かカナデを見つめてにこにこしている。
「純血種の竜人は、気に入った相手しか番にしません。そして……番を見つけたばかりの竜人は、相手のことしか目に入らなくなります」
つまり上位貴族にあるまじき言動の数々は、カナデがレオンハルトに気に入られたからだとノクスは言っているのだ。
「番を持つきっかけになればと国王に進言したところ、閣下をオークション会場に同行する許可を頂けました。気に入る相手がいれば種族を問わず番として迎えてもよいと国王からも許可されています」
オークションは年に二回。
しかしカナデのように特殊なフェロモンを持つオメガは少ないので、必ずオークションが開かれるとは限らない。
「そして、カナデ様が選ばれたのです」
カナデは沈黙した。
これだけ説明を受ければ流石に騙されているとは思えない。それにカナデを騙したところで、彼らに利があるわけでもない。
(……僕が、選ばれた?)
理解はする。
でも感情が追いつかない。
公爵に見初められ幸せになれるのだと手放しで喜んでいいはずの状況なのに、何かが引っかかり胸の奥がきゅっと痛む。
「今日はお休みください。不安なことがあれば、後日改めてご説明いたします。――レオンハルト閣下は、仕事が溜まっているので執務室へご同行願います」
「私は罪人か?」
「罪状は職務放棄ですね。さ、書記官が待っています」
強引にレオンハルトを立たせると、ノクスが一礼して部屋を出て行く。名残惜しげにレオンハルトが何か言いかけたが、結局何も言わすノクスの後に続く。
静けさを取り戻した部屋の中で、カナデは小さく息を吐いた。
***
公爵邸の中では好きに過ごしていいと言われたが、外出は禁止だ。
「正式な披露目前までは隠しておきたい」
ノクスはそう言ったが、レオンハルトも他人にカナデを見せくないようだった。
アルファの独占欲……と呼べばいいのだろうか?
そんな感情を向けられたことがないので、今ひとつ実感がない。
ともあれ自分を買った先が公爵家だと男爵家に知られれば確実に揉める。
まして『番として迎えた』と知られたら、向こうは金を吹っかけてくるのは目に見えていた。
なのでカナデは他の奴隷と同じように、高位貴族と養子縁組をして身分を整え、別人として嫁ぐことになるらしい。
(それにしても、閣下が一度も番を持っていないなんて)
整った顔立ち、美しい金色の髪。碧の瞳は見ていると吸い込まれそうだ。ノクスは彼が「四百歳」だと言ってたけど、外見年齢は二十五、六と言ったところだ。
独身の美しい公爵ならば、見合い相手だってよりどりみどりだろう。
それを全て無視して、彼は自分を選んだ。
(番の絆は強いって習ったけど。それは番になってからのことだし……それにアルファの方からこんな執着するのかな)
『運命の番』という単語が、不意に頭を過った。が、カナデは頭を横に振る。
前世では良く聞いた言葉だ。強い縁で繋がった番は、互いに惹かれ求め合う。
唯一無二の存在。
しかし出会える確率はゼロに近く、おとぎ話のようなものだ。
何より『運命の番』であるならば、カナデも相手のフェロモンを感じ取れるはずだ。
それが無いということは、単に気に入られただけ。
それだって、十分幸運なのに……。
「竜人は200歳前後で成人します。ですから、レオンハルトは番を得て当然なのに、未だ迎えていません」
適齢期を過ぎて相手が決まらないのは、いくら臣に下った王族であっても外聞が悪い。領地の端に追いやられていてもおかしくないのだと、ノクスは言葉をオブラートに包みもせずそのまま告げる。
辛らつな言葉を聞かされている本人は、何故かカナデを見つめてにこにこしている。
「純血種の竜人は、気に入った相手しか番にしません。そして……番を見つけたばかりの竜人は、相手のことしか目に入らなくなります」
つまり上位貴族にあるまじき言動の数々は、カナデがレオンハルトに気に入られたからだとノクスは言っているのだ。
「番を持つきっかけになればと国王に進言したところ、閣下をオークション会場に同行する許可を頂けました。気に入る相手がいれば種族を問わず番として迎えてもよいと国王からも許可されています」
オークションは年に二回。
しかしカナデのように特殊なフェロモンを持つオメガは少ないので、必ずオークションが開かれるとは限らない。
「そして、カナデ様が選ばれたのです」
カナデは沈黙した。
これだけ説明を受ければ流石に騙されているとは思えない。それにカナデを騙したところで、彼らに利があるわけでもない。
(……僕が、選ばれた?)
理解はする。
でも感情が追いつかない。
公爵に見初められ幸せになれるのだと手放しで喜んでいいはずの状況なのに、何かが引っかかり胸の奥がきゅっと痛む。
「今日はお休みください。不安なことがあれば、後日改めてご説明いたします。――レオンハルト閣下は、仕事が溜まっているので執務室へご同行願います」
「私は罪人か?」
「罪状は職務放棄ですね。さ、書記官が待っています」
強引にレオンハルトを立たせると、ノクスが一礼して部屋を出て行く。名残惜しげにレオンハルトが何か言いかけたが、結局何も言わすノクスの後に続く。
静けさを取り戻した部屋の中で、カナデは小さく息を吐いた。
***
公爵邸の中では好きに過ごしていいと言われたが、外出は禁止だ。
「正式な披露目前までは隠しておきたい」
ノクスはそう言ったが、レオンハルトも他人にカナデを見せくないようだった。
アルファの独占欲……と呼べばいいのだろうか?
そんな感情を向けられたことがないので、今ひとつ実感がない。
ともあれ自分を買った先が公爵家だと男爵家に知られれば確実に揉める。
まして『番として迎えた』と知られたら、向こうは金を吹っかけてくるのは目に見えていた。
なのでカナデは他の奴隷と同じように、高位貴族と養子縁組をして身分を整え、別人として嫁ぐことになるらしい。
(それにしても、閣下が一度も番を持っていないなんて)
整った顔立ち、美しい金色の髪。碧の瞳は見ていると吸い込まれそうだ。ノクスは彼が「四百歳」だと言ってたけど、外見年齢は二十五、六と言ったところだ。
独身の美しい公爵ならば、見合い相手だってよりどりみどりだろう。
それを全て無視して、彼は自分を選んだ。
(番の絆は強いって習ったけど。それは番になってからのことだし……それにアルファの方からこんな執着するのかな)
『運命の番』という単語が、不意に頭を過った。が、カナデは頭を横に振る。
前世では良く聞いた言葉だ。強い縁で繋がった番は、互いに惹かれ求め合う。
唯一無二の存在。
しかし出会える確率はゼロに近く、おとぎ話のようなものだ。
何より『運命の番』であるならば、カナデも相手のフェロモンを感じ取れるはずだ。
それが無いということは、単に気に入られただけ。
それだって、十分幸運なのに……。
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