冷遇されたΩは運命の竜に守られ花嫁となる

花里しろ

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2《sidiテオドル》

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(情けないことだ)

 王宮の自室で、テオドルは何をするでもなく椅子に座り窓の外を眺めていた。一国の王太子がこうして捕らわれの身になっているなど、誰が聞いても笑い話にしかならないだろう。

 たった一晩で、不安定だった政情は一気にバリエ公爵側の有利となってしまった。

 数年前から王家側に対抗できる力はほぼ残っていなかったが、それでも長年仕えてくれている家臣や影、王宮の魔法使い達の助力もありバリエ公爵と渡り合ってきた。

 しかし『王太子の婚約者』が突然姿を消したことで、風向きは変わった。
 バリエ公爵は「王家の恥を曝したくなければ娘と結婚しろ」と迫ったが、テオドルは頑として首を縦に振らなかった。

 譲歩案を受け入れたところで、自分は事実上の傀儡となる。当然バリエ公爵は王妃の父という立場を利用し宰相に収まり、ゆくゆくは王家を乗っ取るつもりなのは明白だった。
 恫喝にも媚びにも反応しないテオドルに業を煮やした公爵は、私兵を城へ引き込み王族全員を監禁した。
 遅かれ速かれ、公爵は目障りなグーディメル王家の者を殺す気でいたのだろう。

 これまでは正当な理由がなかったが、今はリュカが失踪した件を利用する気でいる。

『オメガに逃げられたのは、王子がアルファではなかったからだ』

 という筋書きで国民に偽りを流布させ、王家への信頼を失墜させる。そして遠縁ながらも王家の血を引くバリエが新たな王に即位するつもりなのだ。

 馬鹿馬鹿しい計画だが、貴族達の大半がバリエ公爵陣営についた今、茶番劇は現実の物となりつつある。

「お前まで意地を通すことはない。逃げろウルリヒ」
「殿下…」

 護衛として扉の近くに控えていた黒髪の騎士に、テオドルは静かに言葉をかけた。
 彼は唯一残ってくれた、テオドルの私兵だ。

「我が父は息子可愛さに情勢を見誤った。国を救うには、お前の本当の主の力が必要となるだろう」

 せめて父が自分を信じ、公爵家との確執を教えてくれたなら。
 そしてアルファの本質をテオドル自身で調べる許可を与えてくれていたなら。
 今更後悔しても全ては取り返しが付かない。

「父はお前達が友人から譲られた私兵だと言って私の護衛に加えたが。本当は別の主がいるのだろう? 忠義は本来の主に示せ」
「……私は主の命で、護衛の任に就いております。私の仲間は既に母国へ向かいましたので、きっと主の助けを得て戻ることでしょう。ですから諦めず――」
「臣下の反乱を抑えられず、好き放題させて沈みかけている情けない王家だ。聡明な君主であれば、統治する者として失格だと判断する。違うか?」

 テオドルはウルリヒの言葉を遮り、額に手を当てる。

「王家の血を引くアルファだともてはやされ、ただひたすら帝王学を学ぶ日々。父の反対を押し切ってでも外へ目を向けていれば、このような結果にはならなかった」
「しかし殿下は、この限られた場でバリエ公爵らの不正の証拠を集めたではないですか」
「集めただけだ。本来であれば、王が罰するが……その力は王家には無い」


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