Kei

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その日仕事ははかどらなかった。いつもは見つかるようなプラスチックや金属がみつからない。
結局その日は、ほとんど見つけることができずに終わってしまった。
ゴミ置き場の素材回収の仕事は、時間が決められている。
新たに送られてくるごみや、焼却処分されるごみの作業、ほかの作業とバッティングしないようにするためだ。

幾分か見つけた素材をお金に換える。今日のご飯を変える分のお金にならなかった。家に蓄えはない。

その日いつも行っているお店に入ると、店の隅でいくつかの食料を見えないようにポケットに入れる。
そのまま店をでた。 見ることはできなかったが、店員が自分をみているようなきがして視線が痛かった。

店を出て、少し離れたところでポケットの中身をだして確認した。
自分のためのおにぎりと猫のためのささみ。

その日家に帰ると、いつものように猫に餌を与えると、ベットに倒れこむ。
盗みをやっているときの緊張感から解放され、安堵からすぐに眠りに落ちる。

その2時間後くらいには目を覚まし、いつものように屋上へいき本を読む。
その日読んだ本は、貧乏生活から脱却した偉人の話だった。

朝が来て、いつものように仕事へ行く準備をする。
傍らでは猫が寝ている。
バケツの花は、つぼみがおおきくなりきっともうすぐ花を咲かせるだろう。穏やかな光景だ。

ー仕事なんか行かずにここにいたいー

ふとそう思ったが、すぐにその気持ちを払いのける。
生きるためにはお金が必要だ、 ずっと盗みを働くわけにはいかない。
今も、お金が足りなくなると盗みを働いているが、きっと生活に必要なものをすべて盗みでてにいれるような生活は
できなくはないのだろうが、きっと自分の性格では耐えられない。

仕事に行く準備を終えると、眠る猫とバケツの花をのこして部屋を出た。

廃ビルから外に出て、いつものようにゴミ置き場へ仕事へ向かう。
それを遠くから見つめる男達がいた。

その男達は、ケイが出かけて行ったことを確認するとケイが出て行った廃ビルへ入っていった。
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