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第7話【初めての都へ】(1)

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これから、都へ行くわけだがその過程は長い道のりで私なら魔法を使用すれば直ぐなのだが、「あれ」は魔力を高回転させる分、身体能力を飛躍的にあげるのだが
体への負荷が凄まじく2速以上はあまり使いたくない。

だが、小さな絵描きさんはそうは、いかない。
毛皮のリュックに食材と日用品をいれたのを持たしてある。
小柄なせいか、リュックが大きく見える。リュックが背負ってやってるって感じだな。
兎が余程遠くまで飛ばされたのか入り口付近までの一直線上は灰になり少し粉っぽい。
巻き添えを喰らった物も多いだろう。
ミフィレンが先へ先へ歩くなか、私は立ち止まり、黙祷を数秒し、また歩き続けた。
歩きづらい獣道が人口の遊歩道になっていた。
住み処から、2時間ほど歩いた頃には、

よたよたと右へ左へおぼつかない状態だった。
当たり前だろう、大人でさえ根を上げるこの距離をまだ年増もいかない子どもが歩いているのだから。
(毛皮から、顔をだしている滝魚がこんにちわしているのは一先ず置いといて)
1つ結びの髪の毛がゆらゆらと揺れていた。

暖かい日差しが森を照らし、木漏れ日が気温を下げ涼しさを感じながら二人は歩く。
あの出来事以降静まり返ってしまったのか小さな動物達の鳴き声や吹き抜ける風の音しか聞こえない。
通常なら、こんな小さな子と真っ昼間に出歩けないのだが今はそれを楽しんでいる。


「疲れた」とか「足が痛い」等文句も言わず良く歩くものだ。
どこにそんな小さな体にパワフルさがあるのやら

道中、木陰になっている小さな切り株に座り、ミフィレンに持たせたお手製、木製水筒で水分補給をする。
道中、食料調達ついでに滝で汲んどいて助かった。

柄にもなく「ぷはーっ」とか言ってしまった。
こんなに、歩いたのは久しぶりで体が水分を求めていた。
私のと同サイズの水筒を持ちそれを見て真似するお前は本当に可愛かった。
ちょっとバカにしてる感じで誇張してるのがムカつくがそれも旅の思い出にしまっとこう。

そこで、ミフィレンの腹の音が鳴り、顔を見合せ、含み笑いをお互いにした。

「朝からなにも食べていないな。腹が減ったから、食べようか」

リュックから、日持ちさせていた生肉と滝壺にいた魚を二人分取り出す。

生肉は、縄張り争いの中で怪我をした猛獣を仕留めたもの。
魚は、滝水が綺麗なお陰で、小さな魚達が集まり比較的楽にとれた。

途中、ミフィレンが水に向かって手を振ってたのだが何かいたのか?


【調理開始】小さな火を右手から出し、味付けをした食材を左で添えるように、挟み込む。

わずか2秒で、焼き物の完成だ。
最初の時は、火力を間違えて大量の炭を量産してたっけ。
私も器用になったもんだ。
アツアツの肉と魚、森に生息している野草を摘み取り
ミフィレンの木皿へ盛る。
簡易的だがお子さまプレートのようにした。

(本当は外で料理をすると、匂いが周囲に広がり猛獣が寄ってくるのだが今日は大丈夫みたいだ)

手掴み一口で魚を丸々「ボリボリ」食べる私を見て、また真似をしたが骨が詰まったのか「ケホッ」と咳き込んでいた。
それを見て笑う私とトマトのように真っ赤になる顔で腹がよじれてしまうほど爆笑した。
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