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第33話【燃ゆる思い】(9)

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【非常通路ニッシャ側】

「気分は、悪くないがちょっとぬるくないかコレ?」

ニッシャは、煮えたぎるマグマ800℃に入っている......というか、浸かっていたのだ。
まるで自宅で入浴するように自慢の長い足を組み、バブル風呂の様に両手ですくい息を吹き付けていた。

「さてと......奴を探すか。まぁ、随分と分かりやすい隠れん坊だな」
正面を眺めると暗い通路を灯す様に道標みちしるべが一本のレールの様に、天井付近まで燃え盛っていた。

風呂マグマから上がり、まずやることはというと瓦礫に埋まっているノーメンの救出が最優先だ。
裸足で近寄り、少しだけ「チクチク」感が気になるが、埋まっている瓦礫に腕を突っ込み、胸ぐらを掴んだと同時に外へ放り投げ、「ドスンッ」という音と共に出荷されたマグロの様に床を滑る。

近づき、お面の様に真っ白な顔を覗く。
「よぉノーメン、元気してたか?」
私がそう言うと、咳払いが聞こえてくる。

(元気そうに見えるか?もう体がボロボロだ。お前は随分と元気そうにだな......)
と言っている気がする。

「悪いんだけど、犬っころタイニードックを少し出してくれないか?」

ノーメンは握り拳を開くと右手から小さな犬が現れ、ニッシャは優しくその身をでる。
「おー久しぶりだなぁ!!よしよし!ちょっと失礼......おー、有った有った!!」

犬の足には耐熱性のポーチが装着されていてそこから何やら数本取り出す。
口に咥えいつも通り、利手みぎで火をつけ、上に煙を吹き付ける。

「これがないと、始まらねえよな!!ありがとうな犬っころ!!あと、ノーメンは支払いよろしくな~」
(小さな子と話する時だけ、声色変えるのやめてくれないかな)
と少し思った。
ニッシャは手を振ると、小さく手を振り返される。

私はこれから、の痕跡を辿って行くわけだが、ミフィレンが心配で少しだけ焦りが見える。
消炭けしずみになったヒールの代わりに「トントンッ」と脚を鳴らすと火で出来た靴が現れる。それを履き、道標を足で消火しながら辿る。






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