いつだってあなたが私を強くする

泥んことかげ

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第50話【子育て日記2日目】(4)

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【その頃協会内応接室】

両脇の護衛は、静かに見守っておりニッシャが居た時のような無礼がない様、細心の注意を払っている。

部屋には独特の雰囲気が漂っており、時を刻む針が半周を刻むまでお互いに沈黙を貫いていたが、珈琲を一口含ませると、痺れを切らした老体シバが話しかける。

「老い先短い我々だ。そろそろ話を付けんかね?……のぉ、リメイシャンよ」

言葉の先には、少し大きめな人形の様に容姿は小柄な姿があり、毛先まで綺麗な総白髪の老婆は、時折小刻みに頷く動作を繰り返す。
先手を打つように重い口を開けた老体の質問から、一体どれ程の時が流れただろうか、未だに返答はなく虚しい時間だけが過ぎていく。

(もしかして、死んでおるのか!?)
両脇の護衛へ合図を送り、脈拍と呼吸の確認を素早く行い、
両方共に正常に動作しているので考えられることは、只一つ。

(こ奴確実に寝ておるな。年寄りは朝、早いはず何じゃが)

老体シバは、脇に立て掛けてある杖を使い、曲がった腰をいたわりつつも半ば強引に老婆を突く……が、避けられる。
幾度となく右に左に乱れ打つも中々当たらず息ばかりが上がってゆき、体力も底をついた所でついに起こす事を諦めた。

「しかし、ここ最近異常事態が立て続けに起こっているせいでコッチ協会としては、後処理もあって大迷惑じゃよ」

かなり大きな独り言だが、聞くものはおれど返事を返すものはおらず、目の前の婆さんは、まるで自分の家にいるかの様にリラックスをしている。
目は開いているか定かではないが口は小さく何かを呟いている。

「うるさいねぇ、さっきからうら若き乙女相手にちょっかい出すんじゃないよ。私も主人に先立たれてねぇ、あんたでもいいかなって考えてるんだけどどう?」
「お主みたいなシワシワの枯れている婆さんなど相手にせんわい!!」

そんな、間髪かんぱつを入れぬ夫婦漫才でも始まりそうな程に、2人の掛け合いは息が揃っており、やり取りを間近で見ていた護衛の口元が少しだけ緩んでいた気がした。

「冗談じゃよ。血圧上がると年寄りは、あの世へすぐじゃよ?……のぉ、シバちゃんや?」

食えぬ態度でそう言われ右の頬が引きるが、咄嗟に行動した護衛のファインプレーにより、薬を珈琲で無理矢理流し込み落ち着かせると、頭を掻きむしりながら話を続ける。

「全く……死にかけの婆さんの話は、心臓に悪いわい。して、本題に移るが、昨日の件お主程の魔法使いならばの危険種なぞ、眼中にないはずだが?まぁ、さすがに【危険度level-Ⅳ】に関しては、うちのセリエが撃退したんじゃが」

「コラコラッ、ばばぁを少しはいたわらんかい。こっちは、愛しい娘達で手が一杯なんでね。まぁ、丁度あの時若い女子おなごいたじゃろ?その子達に助けられてねぇ、名前何て言ったっけかな?」

シバは、黄色い錦糸卵ミフィレンの事は、話そうとせず真っ先に浮かんだ朱い海星ニッシャについて話し出す。

「切れ長な目で背の高い朱毛が特徴な方が「ニッシャ」って言うのだが、お主がここへシレーネ来る少し前に追放されておる。
何の因果か分からぬが近頃都付近で多発する、危険種の増加に伴い戦力強化のため協会内部の反対を押しきって収集したのだが、襲撃にあったんじゃ。何か変だと思わんかね?」

その問いには返答がなく、リメイシャンは愛する2人の娘と2人の訪問者を陰ながら思い、小さな寝息と共に夢の世界へ旅立った。

(儂の話を聞かない輩が最近多いな……)
協会内部でも偉いはずなのにロクに聞いてくれる人がおらず、呆れて物も言えぬと染々しみじみそう感じていたシバでした。

【屋敷内調理場】

「まぁ……こんなもんかねぇ。私にしてはキレずに出来たな」

予定よりも半刻程早く終わったニッシャは、大量に作られた104人前の料理にため息しかでず、人の為にここまで作ったのは勿論初めてだったため、崩れ落ちるように尻もちを着くと残りの時間で窓から差す光を呆然と眺めていた。
約束の時間が経ち目の前から次々と消えて行く大量の手作り料理は、きっと見知らぬ汗まみれの弟子達に食されるだろう。

私と子ども達3人分で取り置きしていた特別メニューもいつの間にか消えており、疲れた体を引き摺るように子ども部屋へ向かって長い廊下をゆっくりと歩いていく。

綺麗に整えられた家具や装飾品、フラついて小さな棚に手を付いたが指には、一切の埃がない状態だったが驚きよりも「疲れた」「腹減った」の欲求が大半を占めていた。
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