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第51話【子育て日記2日目】(5)
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【屋敷内廊下】
ニッシャの気力と体力は、ここへ来てもはや限界を迎えようとしていた。
森の中での生活を思い浮かべると決して安全とは、言えなかったが不自由な事は何一つなかった……いや、寂しがりやな私は、孤独を打ち消す為に無心で滝に打たれるのが日課だったっけ。
炎魔法を使う私にとっては、水に対して極端に嫌っていたんだが不思議とあの滝に打たれると、魔力の巡りが良くなり思考が落ち着くのに気づかされたんだ。
ある日、心の奥底で柄にもなく願ったのかも知れない。
生まれて直ぐ「無償の愛」って奴で育てられなかったせいか、人へ気持ちを伝えるのが苦手だった私の本心を引き出すために、「運命」って奴がミフィレンと引き合わせたのかもな。
「こんな遠い都まで5年振りに来たかと思えば初っ端から「喧嘩」吹っ掛けられるし、知らない屋敷で「雑用」と「飯の準備」とは全く……意外と楽しいじゃねえか!! 」
前へ進むにつれて鼻先を過る芳ばしい香りにより、食欲が刺激され先ほどまで歩くのが億劫だった体が前へ前へと足早に歩みを開始させたのだ。
広々とした廊下からでも、ハッキリと聞こえるほどの賑やかな話し声に私は、何かに吸い込まれるように大きな扉を力一杯押し開けると、そこで待っていたのは、屋敷内で暮らす弟子達100人が部屋の隅まで届く食卓に綺麗に着席していたのだ。
【屋敷内大広間】
見渡す限りのむさ苦しい男の列に少々視界がふらついたが、目線を斜め下へ落とし、膝下程の所に子ども様の小さな食卓3台と「ニッシャせんよーです!!」と殴り書きで書かれている椅子が横に置かれていた。
とりあえず椅子に腰掛けると、奥の方からアイナが拍手を鳴らしながら此方へ歩いてくる。
鳴らした側から手作り料理達が姿を現し、腹ペコの男達の前へ大量の朝食が眼前を覆い尽くす。
「今日の朝食は、私でも師匠でもなく彼女が作ってくれました!!」
隅まで聞こえるほどの声量は、静かになった部屋内で小さな存在を微塵も感じさせないほど響き渡り、待ってましたと言わんばかりの、惜しみ無い声援と拍手に少しだけ体が熱くなるのが分かり、思わず照れ隠しで煙草を吸い出す。
アイナが端から歩き終わる頃には、最後に私達の食卓へ特別メニューが現れる。
目の前の小さな椅子には、いつの間にか「フォーク」と「ナイフ」を器用に持ったミフィレンと前掛けをしたラシメイナが、今か今かと待ちわびていたのだ。
変わらず食いしん坊なその光景に軽く頬笑むと、満面のコロコロ笑顔で答えてくれた。
こんなに大勢で賑やかな朝食は、生まれて初めてかもしれない。
「すべての命に感謝し、皆とこうして同じ食卓で過ごせることを幸せに思います。それでは、ご一緒にいただきます」
普段仏頂面だと思ってたが、その時のアイナは楽しそうに見え、その一言で朝食が開始された。
いつだって、何かがあれば弱気になって自暴自棄になるのが嫌で、常に「笑顔」を絶やさず「気丈」に振る舞おうとしていた。
だけどそんな気持ちとは裏腹に空回りして、また落ち込んでを繰り返す日々に、憤りと居心地の悪さを感じていた私に、ドーマは生きることの意味を教え、そしてミフィレンと出会い改めて感じたんだ。
諦めない「心」、何者にもめげない「強さ」や他人を信じ、共感しあい、分かち合う「愛」が何よりも「大事」で守らなきゃいけないものだってことが分かったんだ。
「いつもありがとうな。小さな絵描きさん」
賑やかな周りに打ち消されながら小さくそう呟くと、何かを感じたのか夢中に頬張っていた手を止め口元も拭かずに笑ったんだ。
その顔は素直に綺麗で、まるでこれまでの疲労が一瞬で消える「魔法」の様に私の「心」を満たしてくれた。
ニッシャの気力と体力は、ここへ来てもはや限界を迎えようとしていた。
森の中での生活を思い浮かべると決して安全とは、言えなかったが不自由な事は何一つなかった……いや、寂しがりやな私は、孤独を打ち消す為に無心で滝に打たれるのが日課だったっけ。
炎魔法を使う私にとっては、水に対して極端に嫌っていたんだが不思議とあの滝に打たれると、魔力の巡りが良くなり思考が落ち着くのに気づかされたんだ。
ある日、心の奥底で柄にもなく願ったのかも知れない。
生まれて直ぐ「無償の愛」って奴で育てられなかったせいか、人へ気持ちを伝えるのが苦手だった私の本心を引き出すために、「運命」って奴がミフィレンと引き合わせたのかもな。
「こんな遠い都まで5年振りに来たかと思えば初っ端から「喧嘩」吹っ掛けられるし、知らない屋敷で「雑用」と「飯の準備」とは全く……意外と楽しいじゃねえか!! 」
前へ進むにつれて鼻先を過る芳ばしい香りにより、食欲が刺激され先ほどまで歩くのが億劫だった体が前へ前へと足早に歩みを開始させたのだ。
広々とした廊下からでも、ハッキリと聞こえるほどの賑やかな話し声に私は、何かに吸い込まれるように大きな扉を力一杯押し開けると、そこで待っていたのは、屋敷内で暮らす弟子達100人が部屋の隅まで届く食卓に綺麗に着席していたのだ。
【屋敷内大広間】
見渡す限りのむさ苦しい男の列に少々視界がふらついたが、目線を斜め下へ落とし、膝下程の所に子ども様の小さな食卓3台と「ニッシャせんよーです!!」と殴り書きで書かれている椅子が横に置かれていた。
とりあえず椅子に腰掛けると、奥の方からアイナが拍手を鳴らしながら此方へ歩いてくる。
鳴らした側から手作り料理達が姿を現し、腹ペコの男達の前へ大量の朝食が眼前を覆い尽くす。
「今日の朝食は、私でも師匠でもなく彼女が作ってくれました!!」
隅まで聞こえるほどの声量は、静かになった部屋内で小さな存在を微塵も感じさせないほど響き渡り、待ってましたと言わんばかりの、惜しみ無い声援と拍手に少しだけ体が熱くなるのが分かり、思わず照れ隠しで煙草を吸い出す。
アイナが端から歩き終わる頃には、最後に私達の食卓へ特別メニューが現れる。
目の前の小さな椅子には、いつの間にか「フォーク」と「ナイフ」を器用に持ったミフィレンと前掛けをしたラシメイナが、今か今かと待ちわびていたのだ。
変わらず食いしん坊なその光景に軽く頬笑むと、満面のコロコロ笑顔で答えてくれた。
こんなに大勢で賑やかな朝食は、生まれて初めてかもしれない。
「すべての命に感謝し、皆とこうして同じ食卓で過ごせることを幸せに思います。それでは、ご一緒にいただきます」
普段仏頂面だと思ってたが、その時のアイナは楽しそうに見え、その一言で朝食が開始された。
いつだって、何かがあれば弱気になって自暴自棄になるのが嫌で、常に「笑顔」を絶やさず「気丈」に振る舞おうとしていた。
だけどそんな気持ちとは裏腹に空回りして、また落ち込んでを繰り返す日々に、憤りと居心地の悪さを感じていた私に、ドーマは生きることの意味を教え、そしてミフィレンと出会い改めて感じたんだ。
諦めない「心」、何者にもめげない「強さ」や他人を信じ、共感しあい、分かち合う「愛」が何よりも「大事」で守らなきゃいけないものだってことが分かったんだ。
「いつもありがとうな。小さな絵描きさん」
賑やかな周りに打ち消されながら小さくそう呟くと、何かを感じたのか夢中に頬張っていた手を止め口元も拭かずに笑ったんだ。
その顔は素直に綺麗で、まるでこれまでの疲労が一瞬で消える「魔法」の様に私の「心」を満たしてくれた。
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