どこにでもいる平凡な私

柚みかん

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おまけ1.

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今日は夜会の日

いつもなら1曲踊ればいなくなる
フォード様。


「本当はいつもこうしていたかった」

そう頭上にキスをし囁いてくる。

だ、誰ですの。
この恥ずかしい方は。

「真っ赤になる其方も可愛らしい。
こんなに可愛かったとは。」

腰に抱かれた手が強くなる。

「揶揄わないでくださいまし。」

そっとフォード様を見遣ると優しく微笑んでくれて…ま、眩しい。

でもそんな急に変わった王太子に周りがついて来られるはずもなく…

「一体何をなさったのかしら」

「きっと公爵家の力を使ったんですのよ」

「もしかしたら身体で凋落したのではなくて


「あんな貧相な身体で無理ですわよ」

「可哀想な王太子様。私が救ってさしあげたいわ」

いつものような聞こえるか聞こえないかのような嘲笑。
地獄耳な自分が嫌になる。

フォード様を見遣ると優しく微笑み

「シェールあちらに行こう。」

そう言って別の招待客の元に挨拶に向かう。

何人かに挨拶をした後、王太子様は側近に呼ばれて私から離れていった。

「いいね。
男性から話しかけられても一言も口を聞かないように。」

「わかっておりますわ。」

こうなってわかった事だがフォード様は随分と嫉妬深いという事だ。

今まで我慢していた分、我慢を一切しないそうで、それはそれで極端ではありませんか?
でも喜んでいる私もいて…どうしようもありませんわね。
クスッと笑うと給仕係から飲み物を貰い
少し涼みにテラスに出る。

これが間違いだった。



「どんな手を使って王太子様に近づいたか存知ませんけど地味なあなたでは役不足ですのよ。」

「早く王太子様のお側を辞するべきだわ。」

「あなたより相応しい方はたくさんいらっしゃってよ。」

「自分だけが特別だなんて思わない事ね。」

そんな事わかっているわ。
でも…

「そんな私を選んでくださったのはフォード様ですわ。」

私を特別だと言ってくださったフォード様の為にも。

「まぁ…愛称でお呼びするなんてどこまで厚かましいのかしら。」

「選んだのではなくて選ばざるように差し向けたのでしょう。」

「本当信じられませんわ。」

「私とフォード様は心を通わせておりますの。そんなご心配はいりませんわ。」

「そんなのあなたの勘違いよ。」

「そうよ、そうよ。公爵家の力がなければあなたなんか何の変哲もない石ころよ。」

「石ころの分際で生意気よ。」

言い返したせいか今日は特に酷い。
今までこちらから抗議などもしていないから何を言ってもいいと思っているのかしら。
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