絶対服従執事養成所〜君に届けたいCommand〜

ひきこ

文字の大きさ
11 / 21
本編

7(3)

しおりを挟む
※攻め視点


 ルカとの再会をずっと夢見ていた。
 確かにそれは叶ったけれど、思いもよらない姿だった。

 何も反応しない彼を、どうしようというのか。


 常に迷いを抱えたまま、それでも諦めきれずにやってきたことが――ついに報われたように思えた。



 美少年の面影を残しながらも年相応に成長した身体とはうらはらに、少し舌足らずで声変わりすらしていない。
 そして、すっぽりと抜け落ちている執事の記憶。
 
 あの頃のまま変わらない、というのは僕の都合の良い解釈で。
 結局のところ、あの頃から……ずっと彼の時は止まっていた。


 コマンドをかけてみたのは賭けでもあった。

 かつての歴史の中では、DomとSubはコマンドの応酬を通して絆を強めていたとも言われているが、執事制度のある今となってはコマンドそのものの存在すらも失われている。
 だから僕がコマンドを使うことができるのか、そしてルカに対して効力を持つのだろうかと半信半疑でもあった。

 それがあんなに効くなんて、嬉しい誤算だった。
 そして、その嬉しさとはまた別の感覚が呼び起こされて満たされたような気持ちになるのは……これがDomとしての本能ということなのか。

 
SubにとってDomに放たれたコマンドによる命令は「絶対」であるが、そこに快感を伴わせることができるか否かはその二人の信頼関係が大きく影響するという。
 つまり僕が満たされているこの感覚は、決して独りよがりなものではないと……期待してもいいのだろうか。


 そもそも、ダメ元で試していた制御チップの無効化がうまくいっていたことすらも奇跡でしかなくて。
 壊れてボロボロになっていたルカと、言葉でコミュニケーションまで取れる日が来るなんて。

 そうなってしまえば、欲が出てくるのが人間というもので。
 もっとルカに必要とされたいし、このままずっと、僕が彼のDomでありたい。
 彼から失われた長い時間、それ以上にめいっぱい甘やかしてやりたいし、またあの頃みたいに笑ってほしい。

 絶対に、ここから連れ出してやる。



 この施設にとってはボロボロになったSubはお荷物で、誰もそれには興味がないのは幸いだった。
 だからこそすんなりと自分の保護下に置くことができたのは、本当に役得だったのだ。
 このまま慎重に目立つことなく、ルカが人形状態であることを印象付けて適当な理由をつけてみれば、拍子抜けするほど簡単に買い取ることに成功した。


 あの日以来、また本当に人形に戻ってしまうのではないかと怖かった。
 けれどそんな日々ももう終わり、ようやく彼を連れて帰ることができるのだ。
 言葉を交わしたあの日に垣間見えた不安な顔も、もう隠さずに全部見せてくれていい。

 自分の意識がないまま奴隷のように扱われ、ボロボロになっていた彼を思うと悔しくて堪らない。
 これからは優しく愛して、ドロドロになるまで甘やかしたい――――
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【BL】捨てられたSubが甘やかされる話

橘スミレ
BL
 渚は最低最悪なパートナーに追い出され行く宛もなく彷徨っていた。  もうダメだと倒れ込んだ時、オーナーと呼ばれる男に拾われた。  オーナーさんは理玖さんという名前で、優しくて暖かいDomだ。  ただ執着心がすごく強い。渚の全てを知って管理したがる。  特に食へのこだわりが強く、渚が食べるもの全てを知ろうとする。  でもその執着が捨てられた渚にとっては心地よく、気味が悪いほどの執着が欲しくなってしまう。  理玖さんの執着は日に日に重みを増していくが、渚はどこまでも幸福として受け入れてゆく。  そんな風な激重DomによってドロドロにされちゃうSubのお話です!  アルファポリス限定で連載中  二日に一度を目安に更新しております

隠れSubは大好きなDomに跪きたい

みー
BL
ある日ハイランクDomの榊千鶴に告白してきたのは、Subを怖がらせているという噂のあの子でー。 更新がずいぶん遅れてしまいました。全話加筆修正いたしましたので、また読んでいただけると嬉しいです。

鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる

結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。 冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。 憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。 誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。 鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。

世界で一番優しいKNEELをあなたに

珈琲きの子
BL
グレアの圧力の中セーフワードも使えない状態で体を弄ばれる。初めてパートナー契約したDomから卑劣な洗礼を受け、ダイナミクス恐怖症になったSubの一希は、自分のダイナミクスを隠し、Usualとして生きていた。 Usualとして恋をして、Usualとして恋人と愛し合う。 抑制剤を服用しながらだったが、Usualである恋人の省吾と過ごす時間は何物にも代えがたいものだった。 しかし、ある日ある男から「久しぶりに会わないか」と電話がかかってくる。その男は一希の初めてのパートナーでありSubとしての喜びを教えた男だった。 ※Dom/Subユニバース独自設定有り ※やんわりモブレ有り ※Usual✕Sub ※ダイナミクスの変異あり

完成した犬は新たな地獄が待つ飼育部屋へと連れ戻される

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

不器用な僕とご主人様の約束

いち
BL
敬語のクラブオーナー×年下のやんちゃっ子。遊んでばかりいるSubの雪はある日ナイトクラブでDomの華藍を知ります。ちょっと暑くなってくる前に出会った二人の短編です。 🍸カンパリオレンジのカクテル言葉は初恋だそうです。素敵ですね。 ※pixivにも同様の作品を掲載しています

やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。

毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。 そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。 彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。 「これでやっと安心して退場できる」 これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。 目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。 「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」 その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。 「あなた……Ωになっていますよ」 「へ?」 そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て―― オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。

【完結】俺だけの○○ ~愛されたがりのSubの話~

Senn
BL
俺だけに命令コマンドして欲しい 俺だけに命令して欲しい 俺の全てをあげるから 俺以外を見ないで欲しい 俺だけを愛して……… Subである俺にはすぎる願いだってことなんか分かっている、 でも、、浅ましくも欲張りな俺は何度裏切られても望んでしまうんだ 俺だけを見て、俺だけを愛してくれる存在を Subにしては独占欲強めの主人公とそんな彼をかわいいなと溺愛するスパダリの話です! Dom/Subユニバース物ですが、知らなくても読むのに問題ないです! また、本編はピクシブ百科事典の概念を引用の元、作者独自の設定も入っております。 こんな感じなのか〜くらいの緩い雰囲気で楽しんで頂けると嬉しいです…!

処理中です...