絶対服従執事養成所〜君に届けたいCommand〜

ひきこ

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本編

12.それから(本編完結)

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※主人公視点



 おれだけがなにもかも忘れて、時間の止まった世界で生きていた。
 そんなおれに、なんの見返りも求めずにこんなにも尽くしてくれていたなんて。

 おれは、愛されてる……んだな…………

 あの頃から唯一の、おれの存在を認めてくれていた彼は今でも変わっていなかったのに。
 それに気が付かないほど、おれが知らないところで十数年もの時間が流れていたことをようやく理解した。
 


 施設の役員となったジャンは、その運営に携わりながら水面下では執事解放に向けた下準備に奔走していた。
 例えばおれのように返品されてきたSubに対して、臨床実験と称して徐々に制御を弱める措置を施していた。 

 そしてそんな彼らの受け皿を兼ねて、地下組織であるSubの保護団体に多額の寄付を行いながら秘密裏に連絡を取り合っていた。
 そこには表社会での存在こそ消されているが、施設行きを免れたSub――例えばジャンの妹たちや彼らの子孫が暮らす、地図には載らない国家機密として黙認された集落があったのだ。

 彼らと連携することで、元「執事」のSubたちの将来的な仕事や生きる居場所を確保するべく手を回していた。
 

 結果として施設から逃されたおれは、表立ってできることは少ないけれど、少しでも役に立ちたくて研究や実験に協力した。
 それから……おれだけが何も知らないなんて自分が許せなくて、空白の時間を取り戻すかのように勉強した。
 思えば今までこんなに勉強をしたことなんてなくて、新しい世界が広がっていくことが楽しかった。


 
 そんな日々の中で、保護団体との信頼関係もうまくいっていた頃、ジャンは妹との再会まで果たすことができたのだ。

 彼女には、既に大切な家族がいた。
 集落で出会ったDomのパートナーである青年と、彼とのあいだに息子を授かっていた。

 
 DomとSubでありながら対等な普通の人間として結ばれて、温かな家庭を築いていた彼らが眩しくて。
 社会はまだまだSubに厳しいけれど、こういう世界が現実に存在するというのは大きな希望だ。
  
 それに……おれ自身もジャンとずっとそうありたいと思っている、なんて言ったらその日は寝かせてもらえなかったし最後のほうは記憶も曖昧なのは、まあ、惚気だ。


 それから数年後、彼女の息子……つまりジャンの甥っ子にあたるあの少年もDomであると判明するのだけれど、生まれながらの王様気質の彼が、初めて出会った執事ルーカスに異常な執着を見せはじめるのは――まだ誰も知らない少しだけ先の話。



 それから――――
 
 やがてジャンたちが施設上層部の汚職を突き止め執事制度を改革するのは、そう遠くない未来の話――――




 End.





 最後まで読んで下さってありがとうございました。
 こちらで本編完結です。

 以降は番外編を更新予定です。
 ストック2本+不定期更新となりますが、よろしければまたお付き合い頂けましたら幸いです。
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