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第三十八夜 反攻の狼煙
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『黒猫館』の内情を原稿用紙にしたためた海堂は地元の新聞社へ原稿を持ち込む事にした。
彼らが『黒猫館』から集落に避難して約一週間の時間が経過した。
一週間も経過したのに松下を助けに行ってやれない事にもどかしさを感じる彼らは、集落の村長に頼んで、『黒猫館』に残る仲間の救出に協力してくれないか? と打診するが──。
「『黒猫館』に近寄る事は出来ない!」
「何故ですか!? あそこには仲間がいるんですよ! その仲間が助けを求めているのに、それを──」
「集落の者を殺人者がいる所へ行かせる訳にはならん。むざむざ殺されるようなもんじゃ」
「──! じゃあ……あいつを……松下をどうやって助けたらいいんだよ……?」
「お前さん達は書生だろう? この村に滞在するのは構わんが村の者を巻き込むのはならんぞ」
無下に断られて、彼らは思わず溜め息をついた。ここに滞在させて貰っているだけでも確かに恵まれているかもしれない。
だけど──松下を助けないと。
その使命感がまるで空回りしている状況だった。
しばらく滞在して判った事が何個かある。
一つは皆が『黒猫館』に対して畏れを抱いていること──。
一つは、『黒猫館』とは関わりを持つ事を意識的に避けていること──。
一つは皆が鮎川家の権力に怯えていること──。
一つは『黒猫館』は呪われた洋館なので、その姿を観たものは不幸になるという伝承だ──。
そのような伝承や畏れはそうそう狭い集落では簡単に打ち破る事はできない掟みたいなものだ。
そして彼らも『黒猫館』と関わりを絶っているからこそ、今日まで平和を維持出来たと過言ではない。
だから──村の者達には早々に、あの書生達を追い出すべきという話もチラホラ出てきているのも事実である。
集落の人間からすれば彼らは異分子に他ならない。それを排除しようとするのも当然の成行きだったのだ。
彼らは、そんな言葉が飛び交う村長の家にいるのは心苦しいので、彼らの家から出る事にする。
すると、例の海堂が彼らを誘ってくれた。
「何なら僕の家に来ないか? 手狭な家だけど村の中でも外れの方に住んでいるから住民の皆さんもあまり文句は言って来ないよ」
『黒猫館』に囚われて以来、行く所を失ってしまった彼らには、助かる一言だった。
しかし、何故、そこまで自分達を助けてくれるのかが気になる──。
海堂は理由についてこう語る。
「皆さんはあの呪われた洋館と言われる館から生還した貴重な人達です。僕はその『黒猫館』の全容を知りたいから皆さんを助けているんです。真っ当な理由でしょう?」
「確かに、妙な正義心で行動していないのが、逆に信用できるなぁ」
「助けを求めるにしても『黒猫館』の正確な位置は覚えているんですか?」
彼らはそこで最も大事なことが抜けている事に気付く。
そうだ──『黒猫館』の正確な位置、住所、目印になるような物を見つけていない──。
あの時は無我夢中で逃げていたから何処をどう通ってこの集落に抜けたのか、全然判らないのだ。
皆が苦労して開通させた隧道も何処に通じているのかも判らない──。
なら、まず自分達で出来ることをするか。
『黒猫館』の正確な場所や隧道が何処に通じているのか?
そして今の『黒猫館』で松下はどういう状況に立たされているのか?
彼らの中で歯車がきちんと噛み合うようにアイデアが浮かぶと、自然と必要な物も見えてきた。
まずは食事だ。おにぎりなら用意はしやすい。それから水。まだ寒いから防寒着に、明かりとなる照明に、できれば周囲を探る為の磁石。贅沢を言うなら写真撮影が出来るカメラ。出来るならマッチなどの火を起こす道具があれば助かる。後は雑記帳と鉛筆があれば状況を書いて記録する事もできるだろう。
彼らが脱出の際に使った大きな袋が使えそうではある。薄めの毛布があれば一日がかりでも夜に焚き火に当たり休む事もできる。
彼らはそうしてまた『黒猫館』へ戻り作戦を立てる事にする。
必要な道具を揃えると、流石にカメラが無かったのは悔しかったが、他は集落でも手に入れる事が出来たので、彼らは『黒猫館』の正確な位置を特定する為に、この集落から『黒猫館』への道のりを聞いて、目安距離を聞いてから出発した──。
彼らの反攻の狼煙が今、上がる──。
彼らが『黒猫館』から集落に避難して約一週間の時間が経過した。
一週間も経過したのに松下を助けに行ってやれない事にもどかしさを感じる彼らは、集落の村長に頼んで、『黒猫館』に残る仲間の救出に協力してくれないか? と打診するが──。
「『黒猫館』に近寄る事は出来ない!」
「何故ですか!? あそこには仲間がいるんですよ! その仲間が助けを求めているのに、それを──」
「集落の者を殺人者がいる所へ行かせる訳にはならん。むざむざ殺されるようなもんじゃ」
「──! じゃあ……あいつを……松下をどうやって助けたらいいんだよ……?」
「お前さん達は書生だろう? この村に滞在するのは構わんが村の者を巻き込むのはならんぞ」
無下に断られて、彼らは思わず溜め息をついた。ここに滞在させて貰っているだけでも確かに恵まれているかもしれない。
だけど──松下を助けないと。
その使命感がまるで空回りしている状況だった。
しばらく滞在して判った事が何個かある。
一つは皆が『黒猫館』に対して畏れを抱いていること──。
一つは、『黒猫館』とは関わりを持つ事を意識的に避けていること──。
一つは皆が鮎川家の権力に怯えていること──。
一つは『黒猫館』は呪われた洋館なので、その姿を観たものは不幸になるという伝承だ──。
そのような伝承や畏れはそうそう狭い集落では簡単に打ち破る事はできない掟みたいなものだ。
そして彼らも『黒猫館』と関わりを絶っているからこそ、今日まで平和を維持出来たと過言ではない。
だから──村の者達には早々に、あの書生達を追い出すべきという話もチラホラ出てきているのも事実である。
集落の人間からすれば彼らは異分子に他ならない。それを排除しようとするのも当然の成行きだったのだ。
彼らは、そんな言葉が飛び交う村長の家にいるのは心苦しいので、彼らの家から出る事にする。
すると、例の海堂が彼らを誘ってくれた。
「何なら僕の家に来ないか? 手狭な家だけど村の中でも外れの方に住んでいるから住民の皆さんもあまり文句は言って来ないよ」
『黒猫館』に囚われて以来、行く所を失ってしまった彼らには、助かる一言だった。
しかし、何故、そこまで自分達を助けてくれるのかが気になる──。
海堂は理由についてこう語る。
「皆さんはあの呪われた洋館と言われる館から生還した貴重な人達です。僕はその『黒猫館』の全容を知りたいから皆さんを助けているんです。真っ当な理由でしょう?」
「確かに、妙な正義心で行動していないのが、逆に信用できるなぁ」
「助けを求めるにしても『黒猫館』の正確な位置は覚えているんですか?」
彼らはそこで最も大事なことが抜けている事に気付く。
そうだ──『黒猫館』の正確な位置、住所、目印になるような物を見つけていない──。
あの時は無我夢中で逃げていたから何処をどう通ってこの集落に抜けたのか、全然判らないのだ。
皆が苦労して開通させた隧道も何処に通じているのかも判らない──。
なら、まず自分達で出来ることをするか。
『黒猫館』の正確な場所や隧道が何処に通じているのか?
そして今の『黒猫館』で松下はどういう状況に立たされているのか?
彼らの中で歯車がきちんと噛み合うようにアイデアが浮かぶと、自然と必要な物も見えてきた。
まずは食事だ。おにぎりなら用意はしやすい。それから水。まだ寒いから防寒着に、明かりとなる照明に、できれば周囲を探る為の磁石。贅沢を言うなら写真撮影が出来るカメラ。出来るならマッチなどの火を起こす道具があれば助かる。後は雑記帳と鉛筆があれば状況を書いて記録する事もできるだろう。
彼らが脱出の際に使った大きな袋が使えそうではある。薄めの毛布があれば一日がかりでも夜に焚き火に当たり休む事もできる。
彼らはそうしてまた『黒猫館』へ戻り作戦を立てる事にする。
必要な道具を揃えると、流石にカメラが無かったのは悔しかったが、他は集落でも手に入れる事が出来たので、彼らは『黒猫館』の正確な位置を特定する為に、この集落から『黒猫館』への道のりを聞いて、目安距離を聞いてから出発した──。
彼らの反攻の狼煙が今、上がる──。
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