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第1クール 魔女裁判編
Case07 無駄に謝りがち罪 〜二言目には謝る魔女〜
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永遠の性奴隷コースの興奮も冷めやらぬままに、【WhichTrials】の夜は明け朝日が昇る。
そうして美術館としての営業が始まると、夜の狂気が嘘のように静まり返る。
だが、今夜裁かれる魔女は珍しく昼間の美術館に姿を現して、軽罪喫茶と呼ばれる魔女の城の軽食系レストランに姿を現していた。
しかし、どうにも卑屈な印象の彼女は誰にも存在が気付かれてないような暗い雰囲気の女性である。
そして僅かに肩がぶつかれば二言目には「すみません……」。何か波風立とうとすれば「すみません……」。陰気な彼女は孤独になり、何にも興味が惹かれるような心の渇きがもはや砂漠のような様相を呈する。
軽罪喫茶のメニューは、気楽なメニューが多い。例えば【出来心のチョコレートパフェ】はダイエット中に食べると罪悪感がやってくるという噂。【気まぐれ焼肉定食】は何故か間違ってハンバーグ定食になるなど、笑える。【気疲れのミントティー】は寝不足気味の人が飲むと安眠効果など。
それらを食べても、彼女──レイナ・ハーネストの心は晴れる事はなかった。そうして何かに導かれるように彼女は夜の21時に開演する【WhichTrials】の扉を叩く。
SMクラブ【WhichTrials】はこの夜も盛況で、様々な人物達が罪状ガチャを引いて腹の立つレシート相手に食い入るような文句を並べていた。
「何ー!? 虚言癖罪だとー!」
「おお~、良いじゃんか。スーパーレア罪状だぞ」
「神様ぁ、御免なさい」
「あんた、すげぇな存在がバグ罪とか……」
レイナも私は何かと思って引いてみた。
【無駄に謝りがち罪(罪状・過剰謝罪癖罪)】
レアリティはスーパーレア罪状。本日は中々の罪が乱舞していた。
「ヒィッ……ごめんなさい……ごめんなさい……」
「あの陰気な魔女……誰もいないのに、謝罪してるよ……」
「あれは目がヤバくないか?」
「怯えているね」
周りの人はいきなり独りで謝り出した魔女にせせら寒いものを感じる──。
彼女はこの店の初見さんかな……と考えた、黒子の一人が、判事ガチャを勧める。
「判事ガチャを回してみたらいかがですか? ここでは裁かれる判事が貴女の運で決まりますので……」
「は、判事ガチャ?」
「ほら……パリピ達が騒いでいる所に黒いベルベットの箱があるでしょう? あれが当店自慢の判事ガチャです」
今日もパリピ達は「SSR! SSR!」と騒いでいた。しかし彼女、レイナは怯えて箱にも近寄れない。
そんな彼女、レイナに近寄る一人の判事がいた。見た目は茶色のスーツの眼鏡の男性。40代くらいの渋い男性だ。しかし放たれるオーラは親密な空気そのもの。
彼は飯の判事ラファエル・ヘミングウェイ判事。店が誇るSSR判事の一人だ。
「やぁ、どうしたんだい? 判事ガチャに挑戦しないの?」
「あの……あなたは?」
「俺はこの店の従業員の一人だよ。この店では判事ガチャを引かないと始まらないよ。何か思う所があったから来たんじゃないの?」
「……ごめんなさい……」
「別に謝らなくとも」
(なる程、謝り過ぎの罪ね)
ラファエル判事は二言目には「ごめんなさい」を言う彼女は自分自身に嫌気が指したんだなと観察する。
そこで……
「判事ガチャに挑戦してくれたら君を舞台に出しても良いよ」
「そ、そんな……私なんて」
「いいや……そういう君の方が舞台が面白いからね」
「舞台に出て嗤われるのは嫌っ……」
「この店では嗤われるのは罪ではないよ。心の澱をそのままにしておく方がもっと罪」
「一欠片の勇気で良いんだ。ただ、あの黒のベルベットの箱に突っ込んでくじを引くだけ」
「しかも人生の逆転がたったの300リースから始まるかも知れないんだよ。引かなきゃそのまま。何にも起こらない。永遠に誰かに無視されたまま」
彼女は悔しそうに歯噛みしながら300リースを払うと黒のベルベットの箱に手を入れて、1枚、くじを引いた。
スーパーレア判事、エドガー・ラミエル判事だった。
「おお~、エドガー判事か……良い奴に当たったな」
「出たーー! スーパーレア判事!」
周りのパリピはスーパーレア判事が出ただけで盛り上がる。
彼女は茫然としている。
「私、くじ運ないのに……」
「この判事ガチャはね……不思議な事に来るべき人の下へ判事がやってくるようになってるんだ」
「君、お金はあるよね?」
「い、幾らですか?」
「魔女裁判コースなら10000リース、それ以上になると60000リースは必要になるよ?」
「え!? それ以上って……」
「永遠の性奴隷コースなんか60000リースは飛ぶからね」
「財布を覗いて行けるコースを選んで? 書類にきちんと何処まで許容するか書いてあるから」
「……はい」
レイナは書類をよく読んだ。確かにそこには何処までのコースを許容するかが項目に書かれている。彼女は魔女裁判コースオンリーを選択する。
ドレスコードの確認に入る。地味ながらもワンピースを着ている。
受付は頷くと舞台裏の回廊へと案内した。
仄暗い回廊からは舞台の明かりが漏れている。向こう側からは罵倒と煽りの祝詞が響く舞台。
「舞台では必ず判事様と呼んでください。もしくは今日の判事、エドガー判事と呼ぶように。この間は判事をちゃん付けしてひどい目に遭った子がいたので……」
「はい……わかりました……」
黒子は心配する。大丈夫かな。あの子と。
今夜も【WhichTrials】は狂気が渦巻いている──。
そうして美術館としての営業が始まると、夜の狂気が嘘のように静まり返る。
だが、今夜裁かれる魔女は珍しく昼間の美術館に姿を現して、軽罪喫茶と呼ばれる魔女の城の軽食系レストランに姿を現していた。
しかし、どうにも卑屈な印象の彼女は誰にも存在が気付かれてないような暗い雰囲気の女性である。
そして僅かに肩がぶつかれば二言目には「すみません……」。何か波風立とうとすれば「すみません……」。陰気な彼女は孤独になり、何にも興味が惹かれるような心の渇きがもはや砂漠のような様相を呈する。
軽罪喫茶のメニューは、気楽なメニューが多い。例えば【出来心のチョコレートパフェ】はダイエット中に食べると罪悪感がやってくるという噂。【気まぐれ焼肉定食】は何故か間違ってハンバーグ定食になるなど、笑える。【気疲れのミントティー】は寝不足気味の人が飲むと安眠効果など。
それらを食べても、彼女──レイナ・ハーネストの心は晴れる事はなかった。そうして何かに導かれるように彼女は夜の21時に開演する【WhichTrials】の扉を叩く。
SMクラブ【WhichTrials】はこの夜も盛況で、様々な人物達が罪状ガチャを引いて腹の立つレシート相手に食い入るような文句を並べていた。
「何ー!? 虚言癖罪だとー!」
「おお~、良いじゃんか。スーパーレア罪状だぞ」
「神様ぁ、御免なさい」
「あんた、すげぇな存在がバグ罪とか……」
レイナも私は何かと思って引いてみた。
【無駄に謝りがち罪(罪状・過剰謝罪癖罪)】
レアリティはスーパーレア罪状。本日は中々の罪が乱舞していた。
「ヒィッ……ごめんなさい……ごめんなさい……」
「あの陰気な魔女……誰もいないのに、謝罪してるよ……」
「あれは目がヤバくないか?」
「怯えているね」
周りの人はいきなり独りで謝り出した魔女にせせら寒いものを感じる──。
彼女はこの店の初見さんかな……と考えた、黒子の一人が、判事ガチャを勧める。
「判事ガチャを回してみたらいかがですか? ここでは裁かれる判事が貴女の運で決まりますので……」
「は、判事ガチャ?」
「ほら……パリピ達が騒いでいる所に黒いベルベットの箱があるでしょう? あれが当店自慢の判事ガチャです」
今日もパリピ達は「SSR! SSR!」と騒いでいた。しかし彼女、レイナは怯えて箱にも近寄れない。
そんな彼女、レイナに近寄る一人の判事がいた。見た目は茶色のスーツの眼鏡の男性。40代くらいの渋い男性だ。しかし放たれるオーラは親密な空気そのもの。
彼は飯の判事ラファエル・ヘミングウェイ判事。店が誇るSSR判事の一人だ。
「やぁ、どうしたんだい? 判事ガチャに挑戦しないの?」
「あの……あなたは?」
「俺はこの店の従業員の一人だよ。この店では判事ガチャを引かないと始まらないよ。何か思う所があったから来たんじゃないの?」
「……ごめんなさい……」
「別に謝らなくとも」
(なる程、謝り過ぎの罪ね)
ラファエル判事は二言目には「ごめんなさい」を言う彼女は自分自身に嫌気が指したんだなと観察する。
そこで……
「判事ガチャに挑戦してくれたら君を舞台に出しても良いよ」
「そ、そんな……私なんて」
「いいや……そういう君の方が舞台が面白いからね」
「舞台に出て嗤われるのは嫌っ……」
「この店では嗤われるのは罪ではないよ。心の澱をそのままにしておく方がもっと罪」
「一欠片の勇気で良いんだ。ただ、あの黒のベルベットの箱に突っ込んでくじを引くだけ」
「しかも人生の逆転がたったの300リースから始まるかも知れないんだよ。引かなきゃそのまま。何にも起こらない。永遠に誰かに無視されたまま」
彼女は悔しそうに歯噛みしながら300リースを払うと黒のベルベットの箱に手を入れて、1枚、くじを引いた。
スーパーレア判事、エドガー・ラミエル判事だった。
「おお~、エドガー判事か……良い奴に当たったな」
「出たーー! スーパーレア判事!」
周りのパリピはスーパーレア判事が出ただけで盛り上がる。
彼女は茫然としている。
「私、くじ運ないのに……」
「この判事ガチャはね……不思議な事に来るべき人の下へ判事がやってくるようになってるんだ」
「君、お金はあるよね?」
「い、幾らですか?」
「魔女裁判コースなら10000リース、それ以上になると60000リースは必要になるよ?」
「え!? それ以上って……」
「永遠の性奴隷コースなんか60000リースは飛ぶからね」
「財布を覗いて行けるコースを選んで? 書類にきちんと何処まで許容するか書いてあるから」
「……はい」
レイナは書類をよく読んだ。確かにそこには何処までのコースを許容するかが項目に書かれている。彼女は魔女裁判コースオンリーを選択する。
ドレスコードの確認に入る。地味ながらもワンピースを着ている。
受付は頷くと舞台裏の回廊へと案内した。
仄暗い回廊からは舞台の明かりが漏れている。向こう側からは罵倒と煽りの祝詞が響く舞台。
「舞台では必ず判事様と呼んでください。もしくは今日の判事、エドガー判事と呼ぶように。この間は判事をちゃん付けしてひどい目に遭った子がいたので……」
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