罪の劇場 〜SMクラブWhich Trials〜

翔田美琴

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第1クール 魔女裁判編

Case08 謝るなチャレンジ開催

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魔女名 レイナ・ハーネスト
罪状名 無駄に謝りがち罪(罪状・過剰謝罪癖罪)
判決 謝るなチャレンジ開催!(耐えられるのか?)

「魔女レイナ・ハーネスト、入廷せよ」

 その言葉で魔女レイナは薄暗い回廊を出て魔女裁判の舞台へと上がる。
 そして、同時に観客席の煽りの祝詞が発せられた。

「やって来やがった!」
「何だ!? 陰気な魔女だなぁ」
「おーい! 陰気が何を考えてノコノコやって来たー?」
「怯えてやがるぜ!」 
「そ、そんな……っ、ごめんなさい……ごめんなさい……」
「初っ端から謝りまくってら!」
「読めた! 過剰謝罪癖罪だよ! あの魔女」
「静粛に……」

 エドガー・ラミエル判事が入廷してきた。
 彼の姿はブロンドの長い髪の毛に端正な顔、何処か気品に満ちている。信じられないくらいに端正な判事で、流石はスーパーレア判事と納得してしまう。
 エドガー判事は舞台中央でオロオロしだした魔女レイナに視線を移して、一言。

「早速、魔女レイナの審問を行う。君の罪状は無駄に謝りがち罪……つまり過剰謝罪癖罪」
「まずは弁解を聞こう。どうして二言目には謝罪するんだ?」
「下手な弁解しやがったらエドガー判事の鞭打ちだ!」
「ひいっ! わ、私は……私は……ただ、波風立てたくないだけ……」 
「ほう……? どうしてそこまで波風立てたくない……? その様子だと君の気配が薄くなるだけだよ……」
「違う……私は……疲れた……」
「はぁ!? それでのこのこと処刑されに来たのか?」 
「だったらさっさと死ね!」
「エドガー判事、さっさと処刑を!」

 周囲の観客の暴風の如き罵詈雑言はたちまち焔となって彼女を裁く。
 魔女レイナは既に泣きっ面に蜂状態である。

「嫌っ……死にたくない……でもこんな世界」
「弁解を聞こうか? 世界を嫌いになった理由は?」
「だって……皆、自分の事しか考えていないもん……マウント取ったり、文句言ったり……」
「ほう……それで罪を安売りしているのか?」
「そ、そんなつもりじゃ……謝っておけば……」
「それが罪の安売りだよ。魔女レイナ。罪は安売りするものではない……謝罪も安売りするものではない。その謝罪は反射的なもの。微塵も誠意を感じないね……」
「す、すみません……」
「ほら、まただ」
「クセになってら! 救われないな! この魔女!」
「罪を切り売りして楽しんでやがるぜ! クソが!」
「そんなつもりじゃ……」
「では、どんなつもりで、今の「すみません」は言った?」
「あっ──」
「それが反射的と言うんだ。君の心の底は、こうだろう? 魔女レイナ? 謝る事で嫌われたくないだけ……」
「ううっ……」

 彼女、レイナが涙ぐんだ。
 まさに今、心が裸にされている気分だ。大勢の観衆の前で、多くの視線を注がれて、レイナは恥部を晒している気分になる。 
 煽りの祝詞はそんな彼女を煽る。徹底的に。

「罪を切り売りなんて気分良いよなぁ!? おい?」
「上から目線が気に喰わねえ」
「エドガー判事に鞭打ちで矯正されろ!」
「やれーー!」

 エドガー判事は裁判官席から下りて、舞台の中央へ歩み寄る。ゆったりと……。
 そして彼女が変わる為の代替案を出した。

「魔女レイナよ。判決を言い渡す。君はこれから【謝るなチャレンジ】に挑戦してもらう」
「まずはその謝罪癖を直せ。刑を執行する」

 黒子が舞台中央に歩み寄り、魔女レイナを磔台に処した。
 エドガー判事も黒の革鞭を持ち出して、その艶やかな鞭を地面に振り下ろし、鳴らす。

「これから【謝るなチャレンジ】開催だ。出来なかったら鞭打ちを一度する……」
「おお~! 面白えじゃねーか!?」
「さて、尋問の開始だ」

問1 何故、反射的に謝るのだ?
「……っ、ごめんなさい……」

 すぐに鞭打ちが一度された。太腿に一発。

「アウッ!」
「質問に答えないと永遠にこのままだ」
「謝れば、皆、引いてくれるから……そうすれば陰気な私には近寄らない……」

問2 陰気と誰が決めた? 親か? 兄弟か? それとも自分が勝手に?

「そ、それは……自分自身……」

問3 陰気になって何を得た?

「何にも、世界が憎いだけ……ごめんなさい……」

 また一発、鞭が飛んだ。今度は腹へ。

「ひああっ!」
「全く、もはや条件反射だな」

 エドガー判事は溜め息をつきつつ、次の問へ。

問4 この世界はあなたにとっては捨てた世界か?

「どういう意味……?」
「そのままだよ。滅びていい世界なのか? と聞いている。世界は確かに悪意に満ちている。誰もがそれを直そうともしない。何故なら、元々人間は善意も悪意も持ち合わせる。違うか?」
「……わからない。でも、昼間の軽罪喫茶は良かった」
「……あそこか。面白い喫茶だな、確かに」

 エドガー判事は鞭を弄びながら、軽罪喫茶の事を話す。顔は幾分かは優しい。

「あそこの気まぐれ焼肉定食は笑える。あそこはあれくらいの緩さで丁度いいのだ」
「うっかりチーズケーキも絶妙にうっかりしている。何故かホールで出されるのが静かな圧だな」
「ふむ……だいぶほぐれてきたな。表情か変わってきた」
「あっ──ごめんなさい……」

 また鞭打ちがきた。今度は肩に。

「その条件反射、簡単には消えないか?」

 鞭打ちがされるたびに、観客達の快感が段階的に増してきていた。
 叩かれるたびに魔女レイナの存在感が増している。すぐに消え去りそうな空気から段々と存在感が増している──。
 観客達は暴言的な祝詞はやがて静寂へと移り変わる。

問5 この店に来て良かったか? 

「この店は……不思議です……。何で私なんかの存在を肯定してくれるのですか?」
「この【WhichTrials】は魔女失くして、存在しないから。君達魔女は我々の娯楽であり、判事にとっては悦びでもある」
「その魔女が困っていたら手を差し伸べるのが店としての礼儀だ」

「流石、スーパーレア判事の言葉は重いねえ」
「エドガー判事はこの店、気に入っているからな」
「俺も出来るなら裁かれたい……」
「無理無理。俺ら男性が鞭打ちされても色気が無いだろう? 異端審問部門は見せる価値無しって言ってるぜ」
「惨めだもんな」

問6 少しは生きる意味は見出せたか? ほんの少しでもいい。

「……はい……!」
「ふむ。謝罪は無くなったか。一歩進歩だな」
「暫く問を続けよう」

問7 君はこれから、何をしていきたい?

「そ、それは……まだわからない……」
「ならじっくりと考えたまえ……焦る必要はない……」

 彼は魔女レイナの条件反射的な謝罪が少しは鳴りを潜めたのを確認して、鞭を置くと魔女レイナに改めて言った。

「魔女レイナ・ハーネスト。刑の執行は終わった。が執行猶予期間として店を去る前にラファエル判事に会うように」
「ラファエル判事?」
「飯の判事と呼ばれる判事だ。先程、判事ガチャを勧めてきたあの男性だ」
「あの人が……ラファエル判事……」
「それではこれにてこの裁判は閉廷とする。次の裁判は15分後に開演とする」

 閉廷の鐘が鳴ると、磔台から下ろされる魔女レイナ・ハーネスト。
 彼女は不思議な多幸感で暫く胸がいっぱいに満たされていたのだった。
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