罪の劇場 〜SMクラブWhich Trials〜

翔田美琴

文字の大きさ
10 / 60
第1クール 魔女裁判編

Case09 センスおバカ魔女の悲劇

しおりを挟む
 開廷の鐘が鳴らなかった。その代わりに鳴ったのは突然のサイレン、否週に一度の狂気のイベント【魔女狩りの夜】の始まりだった。
 そこでは観客席の誰かが強制的に舞台に引き出されるという。
 そこでの判事は、レア判事、ギャリー・オズモンド判事。魔女狩りの夜に駆り出される事が多いレア判事である。

「これより、【魔女狩りの夜】を始める! この私が特別に魔女の裁定をしてやろう!」
「きたーー!」
「【魔女狩りの夜】だーーー!」

 ギャリー判事が舞台の裁判官席から降りて、観客席へと歩みを進める。黒子が普段閉鎖されている舞台と観客席を繋ぐ階段を開けた。
 ギャリー判事が観客を値踏みする。顔を眺めて、頷いたり、腕を組んだり──。
 観客達はわかっている。判事には気軽に触れてはならないと。
 しかし、その静寂を破る愚かな魔女がいた。

「ねえ? 判事様ぁ~」

 ギャリー判事は顔を顰めた。
 その魔女の姿は余りにもセンスの欠片がないからだ。
 髪の毛は無理やり茶髪したボサボサの髪の毛、ドレスコードは無視。黒のダウンジャケットが合わない。ジャンバーの選別にでも失敗したか? 靴は何処かのコスプレショップに置いていそうな安物の人形靴。こんなものを平然と履く阿呆さ。絶望的なのは頭頂のピンク色のリボン。アホさ加減を絶妙に演出している……。
 脳みその出来は言わずもがな。言葉は軽々しい。
 ギャリー判事は溜め息をつくと魔女狩りの第一の犠牲者にセンスおバカ魔女を選ぶ。

「おい、この魔女を舞台に出せ。こういう魔女を矯正してやる」
「来るがいい」
「や、やめて~!」
「ハハッ、やれやれーー! ギャリー判事」
「この魔女のメンツ、潰したれーー!」

 一気に舞台は火を焚べられたかのように過熱していく───。
 センスおバカ魔女は黒子に引きずられ即時磔台ヘ処される。

「何で、アタシが!?」
「お前の格好がドレスコード違反なんよ!」
「馬鹿魔女ーー! 鏡も見てないのかー?」
「眼ぇ、腐ってやがる」

 周囲の罵倒は過熱するばかり。
 
「──それでは、貴様の魔女裁判を始めてやる。一応名前だけは聞いてやる」
「キャシー……」
「魔女キャシーよ、貴様の罪はセンス壊滅罪だ」
「そ、そんなセンス壊滅って……私は可愛いって思って」
「眼ぇ、腐ってんの? お前の何処にセンスがあるんだよ!」
「そこが浅いってんだ! クソが!」
「つーか、こんなもん、見せられる周りのことを考えろーー!」
「センスが迷子過ぎて救えねえ……」
「そ、そんな救えないって」

 既に魔女キャシーは半泣きである。
 しかし周りは更に暴言の祝詞の火力をあげる。
 ギャリー判事は腕を組み、肩で微笑っている──。

「お前、一度死んでセンス構築してこい!」
「そーだ、死ね!」
「てめえみたいなのがいるからオタクが誤解されるんだわ!」
「てめーの美意識、死んでるのよ」
「不愉快な奴には鞭打ちを」
「その服、引き裂いて、裸にしてやれよ!」
「裸の方が綺麗よ?」
「そーだ、ギャリー判事、服引き裂いてください!」

 ギャリー判事は鞭を軽く肩に担ぐと、その鞭で肩を叩きつつ、舞台を歩く。
 
「──そうだな。今夜は魔女狩りの夜。少しはサービスしてやろうか」
「ひいっ……!」
「文句あるか? 魔女キャシー」
「観客は貴様の壊滅的センスを剥げと言ってるよ。私も同意だ」
「そ、そんな! 必死でコーデしたのに!」
「では、その必死のコーデを引き裂いてやろう。刑はコーデ引き裂きの儀だ」

 瞬間、一気に観客は歓喜に轟いた。

「おっしゃ! やれ! やれ!」
「判事の手で汚らわしいコーデを引き裂いたれ!」
「てめーの壊滅的センスを呪えや!」

 ギャリー判事は周囲の黒子に「やれ」と命じると、黒子はダウンジャケットを文字通り銀のナイフで引き裂いた。

「いやあああっ!」
「こんなもの、役立たずですね」

 次は上着のフリルたっぷりブラウスをボタンごと引きちぎる。

「だめええぇ!」
「全く何を考えているのですかね」

 次はフリルたっぷりスカートを引き裂いた。銀のナイフが猛威を振るう。

「やめてええ! やめてぇ!」
「ふん、本当に馬鹿ですね」

 髪の毛もボサボサの彼女を鋏で更に荒らす。

「このような髪の毛など要りません」
「ダメェ……ダメェ……」

 頭頂のピンク色のリボンも外して靴で踏みつける。

「似合わないアイテムは処分ですね」
「ああっ! 一番大事なものなのにぃ!」

 ほぼ下着だけになったキャシーは周囲のライトに照らされる。

「身体付きはフツーな」
「ふん、特段綺麗でもねぇ……」
「やっぱりお粗末な魂よ……」

 周囲の観客の暴言が飛ぶ。
 ギャリー判事は肩に担いだ黒い鞭を弄び、嗤いながら淡々と裁く。

「ふむ、やっと直視できるレベルに落ち着いたな。さて、貴様のその粗末なセンスはなんだ?」
「……粗末って」
「何処が源泉なのだ。創作か?」
「人形……。き、綺麗だったから真似てみた」

 魔女キャシーは震える声で自白する。
 ギャリー判事はそこで顔をあからさまにしかめる。

「それは、創作者への最大の無礼だよ……」
「そんな姿を晒す事自体が罪なのだ」
「そ、そんな……!」
「てめえみたいな馬鹿がいるから誤解されるんだよ! 償え!」

 周囲の観客の怒りの焔は燃え盛る──。
 今夜は魔女狩りの夜。過激なまでに魔女は糾弾される。

「さて、観客に問おう。この魔女をどの罪に落とす?」
「性奴隷だ!」
「そうだ! 性奴隷として嬲ってやれよ!」
「永遠に嬲られてきやがれ」
「いやあ、そんなのいやぁ!」
「ほう……永遠の性奴隷コースか……それも良いな」
「魔女キャシーよ、判決を言い渡す。永遠の性奴隷コースへ送致する! そこで判事達に嬲られるがいい」

 魔女キャシーが泣き叫ぶ中、魔女狩りの狂気の一夜は終わりを迎えるどころか次の魔女を求めて、ショーは続く──。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

中1でEカップって巨乳だから熱く甘く生きたいと思う真理(マリー)と小説家を目指す男子、光(みつ)のラブな日常物語

jun( ̄▽ ̄)ノ
大衆娯楽
 中1でバスト92cmのブラはEカップというマリーと小説家を目指す男子、光の日常ラブ  ★作品はマリーの語り、一人称で進行します。

母の下着 タンスと洗濯籠の秘密

MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。 颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。 物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。 しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。 センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。 これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。 どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

借金した女(SМ小説です)

浅野浩二
現代文学
ヤミ金融に借金した女のSМ小説です。

まなの秘密日記

到冠
大衆娯楽
胸の大きな〇学生の一日を描いた物語です。

会社員の青年と清掃員の老婆の超越した愛

MisakiNonagase
恋愛
二十六歳のレンが働くオフィスビルには、清掃員として七十歳のカズコも従事している。カズコは愛嬌のある笑顔と真面目な仕事ぶりで誰からも好かれていた。ある日の仕事帰りにレンがよく行く立ち飲み屋に入ると、カズコもいた。清掃員の青い作業服姿しか見たことのなかったレンは、ごく普通の装いだったがカズコの姿が輝いて見えた。それから少しづつ話すようになり、二人は年の差を越えて恋を育んでいくストーリーです。不倫は情事かもしれないが、この二人には情状という言葉がふさわしい。

処理中です...