三つの背徳の果実 【2時間ドラマ小説】中編小説集

翔田美琴

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氷の微笑と奇跡の紳士

7話 ギャンブル

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「ンンっ…!」 

 背後からレンブラントが抱きしめつつミライの顎を掴みキスをする。 
 キスが激しくなるがミライがレンブラントから離れようと少し藻掻いた。
 彼が唇を離す。  
 そして抱きしめるのをあっさりと止めた。 

「すまない。キスをするとやめられなくて」
「レンブラント社長。やっぱり変ですよ。あのシャロンの色目にヤラれています」
 
 ミライの鋭い指摘に彼は苛立つように言葉を募る。

「自分自身でも抑えられない…! 夜の肉体同士の欲望に…! 今夜は寝酒でもあおらないとやってられないな」
「……私はシャワーを浴びて来ます。レンブラント社長もひとしきり寝酒をあおったら眠った方がいいですよ」
「ああ……そうするよ。そうした方がいいな」 

 キッチンでミライが飲みかけのまま放置したウイスキーをぼんやり見てレンブラントは呟いた。

「楽しいゲームか」
 
 そうしてお互いに別のベッドで二人はそれぞれ別の方向を向いて横になった。  
 お互いに背中を向けて寝ている。 
 モンテローザに来て以来張り詰めぱなしだったミライは寝息を立てて寝ている。
 レンブラントは起き上がる。そして寝酒で汗が出た身体をシャワーを浴びて綺麗にした。
  
(シャロンの奴。これも全て仕組んだゲームなのか?)
 
 翌朝。朝食を食べた彼らは次なるシャロンのゲームの内容を聞く為にまたシャロンの屋敷へと向かう。
 朝のモンテローザは夜の喧騒と比べると比較的静かな雰囲気だ。モンテローザは夜になると本領発揮する街。そんなに朝方は騒がしくない。
 シャロンの屋敷が見えた。
 程なくインターホンを鳴らすと出てきたのは女性だった。 

「何の用かしら?」
 
 その背格好はどことなくシャロンに似ている。紺色のタンクトップの上着に黒いズボン姿のシャープな美女だった。

「シャロン・レドールはいます? 昨日訪れたレンブラント・バートンだが」
「ああ…あなたが? シャロンなら奥の部屋で休んでいるわよ」
「入ってもよろしいでしょうか?」
「いいわ。入って?」

 見知らぬ女性は彼らを案内してくれた。
 一体、彼女は何者だろうか?
 いや、そんな事よりも今はノイズとブライトを助けないと。
 若干の焦りを感じる2人はシャロンが休む部屋に導かれた。
 シャロンは日当たりの良い部屋で外の景色を眺め、開口一番で訊いた。

「昨夜は良い夜だったかしら? レンブラント」
「そこそこは」

 レンブラントは流した。こいつの言う事をいちいち受け止めると身を滅ぼしかねない。

「何故、私の小説を書こうと思ったのかな? ネタに事欠かない奴なら他にもいると思うが」
「あなたの起こす事件が一番刺激的なのよ。バートン財団を率いる男は危険な事が大好き──違う? レンブラント」
「──どういう意味だ」
「そのままよ。毎日同じ事を繰り返すなんて真っ平。あなたは誰より刺激が大好き。違う?」
「まぁ大体は合っているね」
「次は何をすればよろしいのかしら? シャロン・レドール」
「ミライさん。あなた、レンブラントと昨夜一緒の部屋だったのでしょう? よく夜の欲望を抑えられたわね?」
「次の条件に入らせてくれないかしら?」
「今の会話が次の条件なのよ? あなた達の昨夜の様子を聴きたいの。何も無かったの? 本当に?」
「──キスはしたわ。でもそれ以上は出来なかった」
「何故? 小説の参考にさせて頂くわ」
「私には今あなたに捕らえられているパートナーがいる。その人を裏切る事は出来ない。それだけ」
「でも──キスはした。そのパートナー以上に魅惑的だったから。レンブラントが。違うかしら?」
「どうでしょうね」

 今度はミライが苛立ち始める。
 おそらくはこういう相手をするのは初めての経験だからだろう。このような恐ろしい相手にはなかなか出会えない。
 ミライは思わず腕を組む。傲慢不遜な感じで。だがシャロンは煙草を吸い優雅に横目でレンブラントのみを見つめている。
 シャロンはここで囚われているノイズとブライトの話をした。

「あの2人ならとある場所に監禁してあるわ。気になるなら場所だけ教えてあげようかしら?」
「何処に彼らを監禁している?」
「モンテローザのカジノ『ゲーム』に向かってみて?  カジノの店長が知っているわ。多分」

 とりあえず宛はない。
 行くしかないだろう。
 彼らがシャロンから去ろうとするとまた彼女の牽制の言葉がきた。

「今夜は2人で燃え上がる事が出来るといいわね」

 モンテローザを歩く2人はシャロンが出したキーワード、カジノ『ゲーム』を捜している。胡散臭い話だが今はとりあえずそれしか手掛かりはない。
 するとミライがそのカジノを発見した。

「ここではないでしょうか? カジノ『ゲーム』」
「入ってみよう」

 確かにカジノだった。そこら中にスロットやらポーカー台やルーレット台がある。彼らは店長探しをする。
 彼らはまず受付嬢に話しかけた。

「いらっしゃいませ! カジノ『ゲーム』にようこそ!」
「ここの店長を呼び出してくれないかな? レンブラント・バートンが話がある」
「レンブラント・バートン様ですね。少々お待ち下さいませ」

 5分ほど待ち現れたのは見た目50代の紳士だった。

「これはレンブラント・バートン様。ようこそ。我がカジノ『ゲーム』へ。どのような用件ですかな?」
「シャロン・レドールがこの店長がある人物達の事を知っていると教えてくれてね」
「なるほど。それを知りたいと」
「なら一勝負しましょうか? レンブラント様」
「一勝負?」
「ここはカジノです。そうですね。あちらのテーブルでブラックジャックで勝負はいかがですかな。すぐに決着は付きますよ」
「ブラックジャックか、確かにすぐ勝負はつくな。そうするしかないようだし」
「どうぞ、こちらのテーブルへ」

 そのテーブルではブラックジャックがゲームとして行われている。ブラックジャックは親が絶対的に有利なゲームだ。勝率は50%以上が親が勝つ。確かにカジノとしてこれ程有利なゲームはない。

「レンブラント様。こちらのディーラーと勝負してください。一度でも勝てたらお望みの情報を提供しましょう」
「厳しいようならお連れ様の力も借りるとよろしいでしょう」
「よろしく」

 レンブラントがテーブルの前に立つ。
 ディーラーは軽くルールをおさらいするかと尋ねる。

「ミライ君は知っているかな?」
「いいえ」
「じゃあディーラー。軽くルールを教えてくれ」
「はい。まず手元に2枚のカードを配ります。わたくしは1枚だけ手札を見せます。そこで次のカードを引くか考えてください。カードは合計点数が21に近い人が勝ちです。21ジャストだったらブラックジャック。その場で勝ち確定ですね。点数は2~9がそのまま。10から絵札は10点と数えます。エースは11点か場合によっては1点と数えます。手札が21を超えてしまった場合はバーストで負けです」
「なるほど。シンプルだけどコツは要りそうね」
「では行きましょう」

 ディーラーはトランプをシャッフルするとそれぞれに手札を配る。そしてディーラーは自分の手札を1枚見せる。見えている手札はダイヤの9だ。
 一方レンブラントの手札は、ハートの6とスペードの7だ。この時点て得点は13点。リミットの21点まで8点。引いた方がいいかなとレンブラントは思った。
 ここのディーラーには1つの特徴がある。ブラックジャックに於いては16点以下なら必ずカードを引く。親のカードが4点から6点なら親がバーストする可能性が高い。こうした状況ならこちらがバーストしないように気を付けたい。
 向こうは手札を引かない。ディーラーは引くか聞く。

「カードを引きますか?」

 ミライは13点はかなり微妙なラインだなと思った。下手をするとバーストする。
 レンブラントは言った。

「ヒットだな」
「わかりました」

 カードが配られた。
 よりにもよって絵札がきた。ハートのクイーンだ。つまりバースト。レンブラントは負けてしまった。

「バーストしたな。負けた」
「ちなみにわたくしはこの手札でした」

 伏せられたカードを見せる。クローバーの9だった。18点だ。いい引きを持ったディーラーだ。
 
「大体ルールはわかりましたか?」
「ええ」
「ここはミライ君がやってみた方がいいかもな」
「では、私が次の勝負を」
「よろしいでしょう」

 次の勝負が始まる。
 またカードをシャッフルするディーラー。そして自分とミライに手札を配る。そしてディーラーはカードを1枚見せた。
 見せられたカードはクローバーの7だ。
 ミライの手札はハートのジャック。10点のカードだ。もう1枚はスペードの8だ。

(余程、向こうが引きが良くないとミライ君に分はあるな)

 18点。かなりいい得点だ。このまま勝負に出るか。ミライは思った。

「勝負!」

 親のカードはクローバーの7とダイヤの9だった。16点。ミライの勝ちだ。

「やった!」
「やりますね。良い引きを持ってますね」
「すごいな、ミライ君」
「うちのディーラーに勝つとは、よろしいでしょう。こちらの部屋に来てくださいませ」

 そうして彼らは1つのゲームをクリアしてまずは手掛かりを得る事になった。
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