三つの背徳の果実 【2時間ドラマ小説】中編小説集

翔田美琴

文字の大きさ
15 / 15
氷の微笑と奇跡の紳士

エピローグ 奇跡の紳士

しおりを挟む
「ウッ…」

 軽く呻きレンブラントが気付いたのは病院のベッドの上だった。
 そこにはノイズがいた。ずっと泣いていたのだろう? 目が紅く染まっている。
 ノイズがそこにいるという事は自分は生きているという自覚を持てたレンブラント。
 愛するべき人は何処におりましょう。 
 ここにいる。目の前にいる。
 レンブラントは思わず涙を流す。

「御免な。ノイズ」
「バカ──本当にあなたは馬鹿ね」
「生きているんだな。俺は」
「レイモンが応急処置してくれたお陰よ。それに彼はレンブラントは運が良かったと」
「運が良かった?」
「咄嗟にミライとブライトの銃弾を浴びて、力が出なかったようだって。ナイフだったのも幸運だった。刃は心臓の上じゃなくて、鎖骨の辺りに刺さったから良かったと」
「そうか──命拾いしたか」
「あれから何日間経ったんだ? 結局──」
「重役会議は見事に流れたわ。1週間は経ったわよ」
「本当か?」
「でも支社の社長も支店長達も理解してくれた。代表取締役が生命を張って皆を守ったから重役会議はこの際いつでもいい。社長が完調になったらにしましょうと」
「本当に泣けてくるな」
「謝りついでに言いたい。ミライと一夜を共に寝てしまった。それも謝りたい」
「どうだった?」
「──気持ち良かった──」
「でも、ブライトと比べるなんて出来ない──って言っていた」
「特別なのよ。きっと。ブライトもあなたも」
「全く本当にバカなんだから。生命を張らないとわからないなんて」
「君のバカ発言は愛があるからいいよ」
「なんだか眠くなってきた。寝ていいか?」
「寝る前に1つさせて欲しい事があるの」
「……?」
「あなたが生きている証の温度を感じさせて」
「抱きしめるくらいなら」

 そして個室の病室で2人は抱きしめ合った。温度を確かめるように。
 それをドアから覗くもう一組の男女がいる。ブライトとミライだった。

「妬けるなあ。ミライ」 
「やっぱりレンブラント社長のパートナーはノイズさんね」
「邪魔すると悪い。行こうか?」
「ええ」

 彼らも唯一無二のパートナーとわかって良かった。
 ブライトとミライの2人は外に出ると歌を唄った。

この世に果てはあるの
もしも世界を歩き尽くしたら
どうやって 笑おうか
どうやって 泣こうか
どうやって探そうか 
もうやり尽くしたね
でも 何度だって忘れよう
そして新しく出会おう
さよなら
初めまして

 傷もほぼ癒えてまたいつもの日常に戻るレンブラント。
 家族達も笑顔で日常を謳歌している。
 次女は忘れ物をしたと叫び慌てて家に帰り、それを観る三女は笑いながら姉の持ち物探しを手伝う。長女は大学へと歩いて向かっている。
 そんな光景を観ながらレンブラントは自らの左手の薬指に填められた結婚指輪を見つめた。
 俺達の公式のパートナーである事を示した結婚指輪。
 それを外す日が来ませんように。
 外す羽目になってもまた会えますように。
 それだけでも世界に宝物が増える。
 それだけでも生きる意義が見つかる。
 それだけでも素晴らしい世界だと思える。
 リムジンに乗ると運転席には自分自身の事を必死になって治療してくれた元外科医がいた。
 そうして会社に向かう時にラジオから素敵な歌が流れた。


でも 親愛なる人
私達の終わりがすぐ側に
描かれているとしてる 今
私は何をするべきでしょうか
もう少しの間
私達の為に歌が唄われるとしたら
心の傷を取り除く事は
出来るかもしれません 

だから私はあなたの為に
歌を唄おう
古くもなく 新しくもない歌を
太陽の光の下で歌って
あなたはきっと笑う
そうしたら 私も幸せになれる

あなたが私を見て
君の事は忘れましたと言うでしょう
でも少しだけ
世界の見方を変えて

だから私はあなたの為に 
歌を唄おう
古くもなく 新しくもない歌を
太陽の下で笑って 歌って
あなたはきっと笑う
そうしたら 私も幸せになれる

古いものも 新しいものもなく
何も変わらない世界で
あなたは私を見て
きっとこう言う
お目にかかれて光栄です
ここに居てもいいでしょうか
何度だって忘れよう
そしてまた新しく出会えれば
素晴らしい
さよなら 初めまして


「定例会議が終わったらその後はバーティでも開こうか?」
「何のパーティ?」
「世界中の仲間との再会のパーティ」
「その皆さんですけど、最近、社長の事をこう呼んでるらしいですよ。生命の危機から生還した『奇跡の紳士』と」
「大げさだな。奇跡の紳士なんて」

 そうして彼らはまたバートン財団の日常へと戻る。奇跡の紳士と共に。

THE END
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

ちょっと大人な物語はこちらです

神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な短編物語集です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

性別交換ノート

廣瀬純七
ファンタジー
性別を交換できるノートを手に入れた高校生の山本渚の物語

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

処理中です...