【本編完結】それを初恋と人は言う

中村悠

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俺と彼女の一週間

五日目 ハーブティー

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 昨日俺は、茉莉花の家に行って指示を仰ぐつもりだった。なのに、昔のようにゲームをして遊んだだけだった。帰り際「ごめんね。お母さんがなんか喜んでいたから、夏樹と二人で話したいって言えなくなっちゃって。明日こそ、よろしく!」とあっさりと言われた。
「は?俺、忙しいんだが」と言ったが「家に帰ってゲームかPCいじってるだけでしょ?」と言われ図星だったので言い返せない。「手短にお願いします」それだけいうのが精いっぱいだった。



 いつも通り、学校に着く。だけど、今日はいつも通りの朝ではなかった。玄関で彼女の姿を見つけた。向こうもこっちに気が付いたようで、視線が合った瞬間大きい瞳をさらに見開いた。またゲームの話でも始まるのかな、そう思ったのだけど、彼女は一瞬固まって「おはよ」とだけ言うとさっさと教室の方へ駆けて行った。

 なんだろ、これ。

妙な引っ掛かりを覚えたが、違和感の正体なんてキモオタの俺にわかるわけがない。今の俺はいろいろと手いっぱいだ。不得意分野は、気にしないでおこう。




******




 放課後いつも通り教室を出て生徒玄関へ向かう。
いつも通り、という表現もこの頃怪しいな。俺のいつもとは一体何だろう。靴をひっかけて歩き出す。後ろからパタパタと足音を確認し、そのまま玄関を出る。
横に並んだ彼女を目の端で捉え、「うっす」と小さくつぶやく。



 そこへ



「ねえねえ、今日も途中まで一緒してもいい?」


と後ろから声がした。俺は振り向かない。
隣で「別にいいよ、ね?」と茉莉花が言ったのでうなづく。


 彼女は茉莉花の隣に並ぶと楽しそうに話し始めた。茉莉花は、彼女と普通にゲームの話をしていた。キャラがどうとかステージがどうとか。話の内容から、どうやら教室で誰とでもこんな感じらしい。そのことに俺は驚きつつも安堵した。


 たぬき公園へ向かう道の交差点まで来ると、彼女は「じゃあ、わたしはここで。バイバイ。また明日ね」と言って駅の方に向かっていった。俺は違和感を覚えたが、その正体にすぐに気づけず無言で彼女の後姿をじっとみつめた。
そのまま、だまって公園に向かう。途中のちいさな商店で、飲み物とお菓子を買った。田舎の裏通り。コンビニはない。小さなころから通っている店で、俺も茉莉花も勿論顔馴染みだ。


「おばちゃん、喉かわいた」


 コンビニのような大きな冷蔵庫はない。レジの横に冷蔵ケースがあって、そこに少ない品揃えの商品が無造作に入っている。
おばちゃんが俺たちの顔をみると俺にはハーブ系のお茶、茉莉花にはミルクティーのペットボトルを差し出した。二人で顔を見合わせて苦笑する。お菓子だけ選んで、俺が支払う。茉莉花は「自分のは出す。奢りはしないけど」と言ったが、「俺、懐に余裕があるから」とだけ言ったら「ありがと」って笑った。



「いつも紅茶飲んでるけど、ハーブティーも飲むんだね」



「どっちかっつうと、ハーブティーが好きなんだよ。だけど、ハーブティーのって、どこにでもあるわけじゃないから紅茶を飲んでることが多いだけ。お茶全般、好きなんだけどさ」



「ハーブティーって癖があるんじゃないの」

「なんか、そのクセにはまった?みたいな?」

「そうなんだ」




 ハーブティーで喉を潤しながら、俺は今朝の彼女の様子を話した。



「いま、一緒に居て茉莉花は違和感あった?」

「全然。だって、普通に話しかけてきたよね?楽しくしゃべってたよね?」

「お前たちがな」

「まさか夏樹は言葉を発してない?」

「じゃあな、ぐらい?」

「嘘。夏樹、おしゃべりなのにね」

「はあ?内気だろ?」

「内弁慶でしょ」


「……まあいいや。茉莉花に思い当たる節がないなら、いいか」

「んー、ちょっと気を付けてすみれの様子見てみるね」

「悪いな。ああ、もう時間だ。ごめん。結局今日も話聞けなかったな」















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