【本編完結】それを初恋と人は言う

中村悠

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セカンドラブの二週間

三日目 作戦会議という名の作戦

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 昨日家に帰ってから、後悔の波に襲われた。流れに流され、海面をぷかぷかと漂う。別に郎の店が悪いんじゃない。
 郎っていうのは勿論裕一郎のことだ。悠一と裕一郎で一緒に居ると周りが呼び辛いため、裕一郎は一郎と呼ばれていたのだが、中学に入り今度は一郎という名の同級生がいて、呼び名はさらに短縮されて郎となっている。郎と呼ぶのは、悠一と裕一郎共通の友達だけだ。裕一郎は物静かで穏やかな性格だったから普段学校ではあまり接点がないが、郎と呼ぶことは本当は親しいことがわかる一種の暗号のようなものだった。

 朗の店は雰囲気はいいし、飲み物も食べ物もなんだっておいしいいし。だけど、気になる女の子と初めていく店が友達の家の店で、しかも一度行ったことがあるところだなんて。A地点……店選びを任されて、新しい素敵なお店を紹介できないなんて、ダサすぎる以外何者でもない。
でも、俺はダサいんだ。これが俺の真の姿。

 ダサい俺はダサいので、女の子と二人っきりで出かけたことはない。休みに遊びに行くのも昂輝たちとばっかだし、しかもファストフードやファミレスばっか。まさに俺、まごうことなきカースト上位擬態。
 幻滅されたかな……。ベッドの上でのたうち回ってなかなか眠れなかった。
だけど、夏樹のと茉莉花の初デートがおしゃれなイタリアンだなんて、この時の俺は知らない。知らなくてよかった。


 学校に行くと、朝、夏樹の姿はなかった。忙しいのかな、この分じゃ今日は休みだろうな、そう思ったのに昼休み、登校する夏樹の姿に驚いた。思わず教室に行って声までかけてしまった。
 いい変化なのかもしれないな。様々にかみ合わさって、歯車が回り始めているのかも。いい方向に回り始めるといいなそう思っていた。授業が終わって、すみれの姿を探す。教室には姿はなく、カバンなども消えていた。
もう、帰っちゃったか。昨日の挽回したかったな。塾に行って自習する気にもなれないし、今日は家に帰ろうかな。浮き沈みの激しい自分の感情に半ば呆れ、窓の外を見やると三人の後姿が目に入った。


 夏樹は相変わらず俯き加減で、でも視線は前を向いて。隣で女の子二人が大きく開いた花のように笑う。その笑顔を見た途端、わけもわからない衝動に突き動かされ、俺はスマホの電源を入れた。


  塾の時間まで少し時間がある
  都合があえば
  お茶という名の作戦会議に
  付き合ってもらえたら嬉しいんだけど


 送信すると、教室を出る。
返事が来るかはわからない。あのまま、三人で遊ぶのかもしれない。メッセージに気づいてくれれば、仲間にいれてもらえるかもと淡い期待を持つ。急ぎたい歩みをぐっとこらえ、三人に追いつかないように普通に歩く。普通に、だ。

 たぬき公園に向かう交差点のあたりで、スマホが鳴った。



  今、駅に一人でいるよ
  来られる?
  場所指定してくれれば行くし?


 顔が緩んだのが自分でもわかった。なんて単純なんだ、俺って。すぐ行くから待ってて、と返事を打ち返し今度は急ぐ。心なしか、足取りも軽い。軽いのに、気持ちの方がその何倍もせいでしまって、歩く自分の足がもどかしい。本当なら走ってしまいたいのに変な矜持が頭をもたげ、それもできない。でも、このまま走り出したら俺の足は絡まり縺れ前に進めなかったに違いない。

 駅前にすみれは立っていた。







「昨日あんなに私に負けたのに、懲りないね」

「負けたからだ。勝ち逃げしたいんだ、俺は」

「ふふ。じゃあ、一生かかっても無理だ」

「努力って言葉、教えてやるよ」

「わたしも、経験て言葉の意味を教えてあげる」


 ………。デートって雰囲気には程遠い。でも、全ては一つ一つの積み重ね。俺の社交スキルを全て駆使して距離を詰めてやる、と誓ったのだったが。
すみれに必要なのは、社交スキルではなかったかもしれないと、この後思い知らされる。


「経験値、上げてから、ね」

「修行してまいります」

「うそうそ。一緒にレベリングしよっか」


 優しいすみれの言葉にちょっと感動する。俺のこと、気にかけてくれたんだろうか。


「このままだと、一緒にクエ受けられないもんね。頑張ろう、悠一」



 ん???
 俺の為じゃ、ないね、それ。



 どうしたら、俺のこと、ちゃんと男として見てくれんのかな?
本気で頭を抱える日々の始まりだった。











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