17 / 33
セカンドラブの二週間
二日目 ゲーマーの日常
しおりを挟む朝、いつも通り登校する。教室に入り自分の席にカバンを置くと廊下に出る。
よう、と昂輝に声を掛けて他愛もない話をするのが日課だ。人より早く来て静かな学校で穏やかに昂輝と話していると落ち着く。喧騒の中から一日が始まるのは苦手だった。一人二人と少しずつ登校してきて、自分の耳を、感覚を鳴らしていく。そうこうしているうちに周りをいろんな奴に囲まれ一日が始まるのだ。
「昨日さ、悪かったな。昂輝、ゲームしないのにあいつらに声掛けちゃって」
「べつに、いんじゃね。楽しかったんだろ」
「ああ。タイムリープした感が半端ねえ」
「なら、良かったな。これで死んでも本望だろ」
「いや、更にやり残したことが…」
「その為にタイムリープしたのか?」
「そうかも」
昂輝とは長い付き合いだが、真剣に話をしたことはなかった。いつもこうやって茶化して終わり。俺の思いや後悔に気づいているのに触れてこない。程よい距離感を敢えて保ってくれている昂輝の思いやりや優しさに救われて、ここまでやってこれたと思っている。
「「おっはよう」」
茉莉花とすみれがやってきた。いつも登校する時間より少し早い。SNSの話題で盛り上がっているようで、そうしていれば確かにカースト最上位にいる二人、に見える。教室に「きゃあきゃあ」言いながら入っていったかと思うとすぐに二人とも出てきた。
「昨日は楽しかったね。昂輝とももっと一緒におしゃべりしたかったよ」
「俺は、いい」
「そんなはっきり断らなくても。相変わらずつれないな~」
「昂輝くんは全くゲームしないんだ?」
「ああ」
「昂輝はクールでロックなバンドマンだからな」
「馬鹿にされているようにしか聞こえない」
「俺、心を込めていったのに」
「バンド?ロックってどんなのやるの?何聞いてるの?」
すみれは昂輝の好きな洋楽アーティストも曲も知っているようで、傍から見ると確かにゲーマーだとは思われないだろうな。本人は隠している様子はないけど、いろんな話題に乗っかれるっていうのは擬態というよりは本人の資質の問題だろう。
登校してきた生徒たちが洋楽の話題を聞きつけ、音楽に興味のあるやつらが今日は集まってきた。俺は正直言ってあまりよくわからなかったけれど、昂輝がたまに好きな曲や好きなアーティストを教えてくれるので、相槌を打つ程度には話せる。茉莉花をみると、ちんぷんかんぷんの様子が見て取れたが、すみれが昂輝と楽しそうに話していることに満足しているようだった。
あと少しでHRが始まるという時、夏樹の姿がみえた。今日も顔を上げることなく、目の前を通り過ぎようとする。定時に定型の挨拶。今日の俺は、それに一言付け加えた。
「おはよう、夏樹。またお茶しようね」
予定外の声掛けに躊躇った様子が見て取れるもいつも通り小さな声で視線を合わさず夏樹は返した。いつもならそれで終わるはずの朝の光景が今日は違った。
「おはよう、夏樹くん。また一緒にお茶しようね」
周りが一瞬騒めいたが、夏樹は俺の挨拶で既に耐性ができていたのだろう。表情を変えずにこちらにも小さな声で返す。周りから、悠一くんたち一緒にお茶したの?と聞かれたので、「昨日ね」と答えていたら、茉莉花が夏樹の教室に入っていった。すみれは気にした様子もなく、昂輝に話しかけている。気づくとチャイムが鳴り、それぞれの教室へと別れた。
放課後、教室にすみれの姿があった。一人で窓の外を眺めている。今日は茉莉花と一緒じゃないんだなと朧げに思ったが、今がチャンスとばかりに声を掛けた。
「すみれちゃん。一人?」
「悠一くんも?珍しいね。いつも大勢に囲まれているのに」
「そんなことないよ。みんな部活とか、行っちゃったし。昂輝は今日は仲間と練習だし」
「悠一くんはお勉強?」
「どうしようかなと思ってたとこ。塾行って自習室で勉強しようか、家でしようか、すみれちゃんとおしゃべりしようかってね」
「じゃあ、わたしとのおしゃべり分岐で」
「かしこまりました」
「じゃ、Free Wi-Fiあるとこ、行こう」
「それは、おしゃべりっていうかな?」
「コミュニケーションの形は人それぞれだよ」
「おっしゃる通りです」
「では、迅速な対応を!」
「Roger」
「いつ敵に遭遇するかわからないから、周り良くみて」
「Okey。指示お願い」
「では速やかに階段をおりて玄関に向かう。階段下に敵が潜んでいることが多いので、気を付けて」
「Got it」
荷物を取りに俺のクラスに一緒に寄りながら馬鹿な事言い合う。我ながらお馬鹿な会話してんなと思うが、こんなあほな会話、普通の女子とはできないし勿論したこともないとくすりと笑みがこぼれる。階段下まで降りて廊下を曲がったとき、それは起きた。
「悠一くん、今帰り?」
「え。二人で帰るの?」
「今日、何かあるの?」
同級生の女子たちにバッタリ会ってしまい、即座に質問攻撃が始まった。ああ、せっかくいい流れだったのにマジかよとうんざりしながら、さて、なんて返そうかと思案する。
「ターゲット発見。ここは任せた。私は玄関に移動後、校門にて待機」
小声ですみれは耳打ちすると、素早い動きで駆けて行った。勘弁してくれ、いろいろと……。俺の中で複雑な思いが絡み合う。俺の耳はくすぐったい微風に遊ばれ心までくすぐられたが、女の子たちのすみれの背中を見る目が鋭く一瞬で心が凍った。
「みんなはこれから部活?ユニフォーム、かわいいね。似合ってる」
「嘘。ホント。ありがと。嬉しい」
きゃーという声に少し落ち着くも隙を与えちゃだめだと、引き締める。
「このあと、みんなでお茶するんだけど、部活なら一緒に出来ないね。残念。また今度ね」
にっーこり笑って、バイバイと手を振る。
危ない、階段下には気を付けよう。さすがすみれちゃん、予知能力、この場合経験値か、尋常じゃない。校門に寄り掛かる後ろ姿に静かに近寄ると俺は告げた。
「任務完了。次の指示をどうぞ」
「その前にSANチェックしますか?」
「イエケッコウデス」
「うふふ。ではA地点に向かう。そのまま索敵を続けるように」
「……A地点。ドコデスカ」
「ドコニシヨウ」
「ふはっ。あほだな、すみれちゃんは」
「それにのっかる悠一くんもね」
「悠一、悠一でいいよ。くんづけはなんか、ノリ的に合わない」
「じゃ、わたしは戦士バリスで」
「Veto.露出が多いぞ」
「そういう問題?」
「大事なことだろ」
「そうかな?そうかも」
「少なくとも俺は自分の彼女にはあの格好はしてほしくないよ、すみれ」
「だから、バリスで!」
「はいはい。じゃ、水着にどーぞ」
「……やっぱ、すみれで。水着は無理」
「で、どこ行く?」
「まだ、この町詳しくないから、A地点の確認は悠一に任せるよ」
ちょーくっだらねえなあと思う。
こんな頭の悪い会話、女の子とするか、普通。っつか普通の女の子はしないぞ。
ああ、また普通。普通ってなんだよ。でもこれがほんとの俺の普通じゃんか。すみれは、こんな会話をする俺は、恋愛対象になるんだろうか。クールでスマートな俺がいいんじゃないのか?並んで歩きながら、すみれの様子を伺う。俺の視線に気づいたのか、こっちを見上げてくる。
「何?索敵中?」
「お前の脳内いつもゲームか」
「常にトレーニングだはと思っている」
「awesome」
「馬鹿にしたね?」
「いえ、褒めた方の意味です」
「nice one」
「あ、ほら、ついた。ここ、どう?」
「……GJ」
俺は扉のノブに手を掛けると、すみれを颯爽とエスコートした。一昨日、来たばかりの郎んちのカフェに。
0
あなたにおすすめの小説
俺をフッた幼馴染が、トップアイドルになって「もう一度やり直したい」と言ってきた
夏見ナイ
恋愛
平凡な大学生・藤堂蓮には忘れられない過去がある。高校時代、告白した幼馴染の星宮瑠奈に「アイドルになるから」とこっ酷くフラれたことだ。
数年後、瑠奈は国民的アイドル『LUNA』として輝いていた。遠い世界の住人になった彼女との再会なんて、あるはずもなかった――そう、変装した彼女が俺の前に現れ、「もう一度やり直したい」と泣きつくまでは。
トップアイドルの立場を使い強引に迫る元幼馴染と、過去の傷。揺れ動く俺の日常を照らしてくれたのは、俺の才能を信じてくれる後輩・朝霧陽葵の存在だった。
俺をフッた幼馴染か、俺を支える後輩か。過去の清算と未来の選択を描く、ほろ苦くも甘い、逆転ラブコメディ、開幕。
久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…
しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。
高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。
数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。
そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…
俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。
true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。
それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。
これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。
日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。
彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。
※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。
※内部進行完結済みです。毎日連載です。
思い出さなければ良かったのに
田沢みん
恋愛
「お前の29歳の誕生日には絶対に帰って来るから」そう言い残して3年後、彼は私の誕生日に帰って来た。
大事なことを忘れたまま。
*本編完結済。不定期で番外編を更新中です。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
SSS級の絶世の超絶美少女達がやたらと俺にだけ見え見えな好意を寄せてくる件について。〜絶対に俺を攻略したいSSS級の美少女たちの攻防戦〜
沢田美
恋愛
「ごめんね、八杉くん」
中学三年の夏祭り。一途な初恋は、花火と共に儚く散った。
それ以来、八杉裕一(やすぎ・ゆういち)は誓った。「高校では恋愛なんて面倒なものとは無縁の、平穏なオタク生活を送る」と。
だが、入学した紫水高校には《楽園の世代》と呼ばれる四人のSSS級美少女――通称《四皇》が君臨していた。
• 距離感バグり気味の金髪幼馴染・神行胱。
• 圧倒的カリスマで「恋の沼」に突き落とす銀髪美少女・銀咲明日香。
• 無自覚に男たちの初恋を奪う、おっとりした「女神」・足立模。
• オタクにも優しい一万年に一人の最高ギャル・川瀬優里。
恋愛から距離を置きたい裕一の願いも虚しく、彼女たちはなぜか彼にだけ、見え見えな好意を寄せ始める。
教室での「あーん」に、放課後のアニメイトでの遭遇、さらには女神からの「一緒にホラー漫画を買いに行かない?」というお誘いまで。
「俺の身にもなれ! 荷が重すぎるんだよ!」
鋼の意志でスルーしようとする裕一だが、彼女たちの純粋で猛烈なアプローチは止まらない。
恋愛拒否気味な少年と、彼を絶対に攻略したい最強美少女たちの、ちょっと面倒で、でも最高に心地よい「激推し」ラブコメ、開幕!
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
隣人の幼馴染にご飯を作るのは今日で終わり
鳥花風星
恋愛
高校二年生のひよりは、隣の家に住む幼馴染の高校三年生の蒼に片思いをしていた。蒼の両親が海外出張でいないため、ひよりは蒼のために毎日ご飯を作りに来ている。
でも、蒼とひよりにはもう一人、みさ姉という大学生の幼馴染がいた。蒼が好きなのはみさ姉だと思い、身を引くためにひよりはもうご飯を作りにこないと伝えるが……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる