ようやく死ねた吸血鬼、転生したら動画配信者にさせられた件

ウケン

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サタン@現実世界/カトリーナ・メルクーリ編

吸血鬼から産まれる『始祖の子』

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「プリビアスキャッチャー?」


「はい」


母の問いにエドガーが窓際から振り返る。

その笑顔は、一点の曇りも無いように見えた。

「トカゲのゲイルが言うには、こちらの世界から向こうへ転生した者の中に、前世の記憶を持ったまま生まれる者がいるそうです」

「前世の記憶を持ったまま……?」

「ええ。それを僕は『プリビアスキャッチャー(前世を掴む者)』と名付けました」

そしてその後話されたエドガーの話はとてもじゃないがまともに聞くことはできないほど意味不明なものであった。

まず、俺たちパンパネラの種族の謎を明らかにするためには、『異世界』へ行くことが絶対条件であること。

そこへ行けば、自分たちのルーツがわかるし、エドガーの予想によると俺たちバンパネラのルーツは恐らくその世界の『王族』ないしは支配階級ではないか、ということ。

そして、その世界へ行くための鍵が判明したとのことだった。


「それが、英国に保管されている『銀の弾丸』、それから………」


「それから?」

父がぶっきらぼうに問う。


「『始祖の子』です」


「なんだと!?」

その単語に弾かれるように初めて父が大声を上げた。

「なぜ始祖の子が必要なのかしら?」

母も鋭い目つきになる。

「ちょっとちょっと。怖いなぁ。そんなに始祖の子って産んだらいけないんですか?」

エドガーがはにかんだ笑いをする。

「ダメに決まってんだろ!お前はアレがどんなもんかわかっちゃいねぇ」

「父さんのその口ぶりだと、始祖の子を見たことがあるように聞こえますが」

「うるせぇ!いいからやめろっつってんだよ!」

「いえ。僕は!僕の"目標"のためには絶対に必要なことなんです。何か知っているなら教えて下さい!」

珍しくエドガーも熱くなっている。


「お前なぁ……!!」


「……アーク」


母が立ち上がり、父の背中に手を当てる。


「……っ。エバ……」


「もう、エドガーちゃんたちに言ってもいいんじゃないかしら」

「………………」

「私たちも、もう前を向いていかなくちゃ。同じことを繰り返させないためにも………きちんと話しましょう」

父と母は悲しい目になりながら、ポツリポツリと語り出した。

「実はね。あなたたち2人が生まれる遥か昔、私たちは一度だけ、自分たちの子、つまり眷属を作ってみたことがあるの」


「あ!?なんだって!?」


あまりの衝撃の事実に俺は目を見開いた。

「そ、それは本当ですか?」


「ええ」


エドガーの問いに母はハッキリと答える。


「そ、それでその子は……?」


「今はもういないわ。私たちが"殺した"」

「…………」

父は黙って俯く。


「なんでだよ……?」


俺は家族みたいに考えていた2人が隠していた真実に少しイラ立ちながら問いかける。

母はポツリポツリと当時を回顧しながら話し始めた。

「最初はね。普通の赤ん坊だったのよ。とても可愛くて、私たちは2人で幸せいっぱいだったわ」

エドガーを見ると、話を聞き逃すまいと母の姿をじっと見つめていた。

「でも、それが16歳を超えて、バンパネラの特性を持つようになったあたりから、彼が"普通"でないことに気づいた」

「普通じゃない……?」

「ええ。私たちが言えば聞くのだけれど、何も言わないと勝手に行動する。それ自体は良いのだけれど、その行動が常軌を逸していた」

母は絞り出すように言った。

「具体的には、人間を虐殺し始めたの。始祖の圧倒的な力を使って手当たり次第に」

「常軌逸しすぎだろ……」

思わず呟く。

「それだけじゃない。彼は誰に教わったわけでもなく、広範囲に無差別で効く『眷属印』を使って、自分の軍団を作り始めた」

「なんだそれ……」

「でもね。私たちにはわかっていた。それは彼の意志ではない。いえ。彼には子供の頃から『意志』というものが無かった。……"空っぽ"だったの」

「空っぽ?」

「そう。私たちの命令は聞くけど、それ以外に自分のアイデンティティは無い。だから、虐殺や軍団を作ったのは生物としての本能でやっていたんだと思うわ」

ヤバすぎる話に俺もエドガーも絶句する。

「そして、私たちは彼をある場所へ幽閉した。そこで何とか意思を持たせようと100年ほど対話を続けたわ」

「100年って……」

「でも、無理だった。何を言っても、ガチャガチャと鎖を外そうとするだけ。『やめなさい』と言えばピタッとやめる」

その時、母の目からポタリと涙がテーブに落ちた。

「でも……彼のそんな姿を見てはいられなかった……!これで永遠の生はあまりにも彼が不幸すぎる。私たちだっていつ何があるかわからない。だから……」

「………俺が殺した」

父アークは自分のやったことには責任を持つ、という決意の宿った目でこちらを見つめた。
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