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笹野 梨音 "rio"
しおりを挟む私はワンパターン。
今日もそう。
同じ味の卵焼き作って同じ大きさに切って。
お弁当にプチトマトを入れるのは絶対。
味噌汁の味噌の量も昨日と同じ。多分一昨日も。
いとこと私の分を取り分けて食卓につく。
毎朝聞いてるラジオ体操。
この家に来てから自分でやることが増えた。
食事、洗濯、掃除…
「梨音、ちょっとお茶取って」
「はーい」
私は冷蔵庫からペットボトルをとる。
「さんきゅー」
この人は私がここにきてから何もしなくなった。
私はいとこで私より6つ上。
高卒のくせに市役所員で稼ぎまくってる。
顔もそこそこいいし、ギターも弾ける。
もう結婚すればいいのに本人は全く関心がない。
この人ならイケメンで安定した収入でいい人
捕まえられると思うんだけどな。
「梨音、今日帰るの遅いからー」
「また友達?」
「いやエステ」
「は?また?一昨日もじゃない?」
「違うの!割引で30分70%OFFだよ?行くしかないでしょー」
「あっそ。ほんと自分磨きしか興味ないのね」
「あんたも私ぐらいになればわかるわよ」
「ってことは立川まで行くってこと?」
「そそそ!帰りにチョコ買ってきてあげる?」
「ありがと、どうせまた忘れてた!って買ってこないパターンだから期待しとかないでおく」
「もー冷たいわねー。とりあえず夜ご飯適当にたべておいてね!」
バタンっ
そう言ってあの人は自分の部屋に入ってった。
ご飯を食べるスピードだけはあの人を超す人はいないと思う。
『本日多摩市の最高気温は17.5度。晴れ後…』
ラジオから流れてくる天気は良いみたいだった。
窓の外からは近くの小学生が騒ぐ声が聞こえる。
ここから学校まで1時間はある。
今から出たって間に合わない。
そんなのもう日常。
私は3限からしか学校には行けない。
別にいじめられてるわけでも友だちがいないわけでも
勉強が嫌いとか先生が嫌いだからとかじゃなく
ただ単純に行きたくないだけ。
でも3限からならなんとなく行く気になるから行く。
毎日繰り返してる。
都立だけどまぁ進学する気もないし
休んだってどうってことにはならないけどね。
とりあえずお皿洗って洗濯しなくちゃいけない。
学校よりはるかに家事の方が楽。
もはやお嫁に行った方がいいんじゃないかとかおもったけど、まぁまだ16だし…
なんかワンパターンだわ。
「梨音ー!」
「なにー?」
「ちょっと来て来て!」
「はいよー」
はぁ。騒がしい。
「なに?」
「この服可愛くない?」
でたよこの人の服自慢。
「うん。可愛い可愛い」
「でしょー!」
「でも、そのブランド結構高くないの?」
「そなのー!エステの先生が買ってくれたの?」
また新たな男を手玉にとったのかこの人は。
「へー。あんまし歩く財布みたいに扱わないようにね。」
「またまたーwんじゃ行ってくる!」
「行ってらっしゃい」
バタンっっ
自室に入ってったときより大きな音でドアを締めでかけってった。
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