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第一章 新しい日常

第一話

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食堂に到着した。周りを見渡すと、既に席に座って昼食をとっている者たちがいた。券売機にもかなりの行列ができている。

「かなり並んでるな。今のうちになに食うか決めておくか」

この食堂は和食系も充実しており、どちらかというと肉よりは魚が好きな俺にとってはいいところだった。今のところ気に入っているのは海鮮丼だ。切り身から「グギャー」とかいう声が聞こえてくるのと切り身の色が紫、黒、緑なのを無視すればかなり美味い。

初めは躊躇いがあったが、今となってはよく食べるものだ。

お、やっと俺たちの番か。それじゃあいつも通り海鮮丼を・・・って、売り切れかよ。仕方がない。ここはサーンの塩焼き定食で妥協するか。

「先に行って席取っておくぞ」
「わかりました。あとで向かわせていただきます」

フラミに声を掛けてから席を探すがなかなか見当たらない。少人数だから全員で食おうと思ったが時間が合わなかったのでその場にいたメンバーだけで来たのだが、それでも全員で座れそうな場所がないな。

「そこにおるのはキリサメではないか!!こっちだこっち!!」
「あん?」

声がした方に顔を向けると、そこにはムロムリがいた。・・・大人数の子供と一緒に。なんなの?オマエの私服=張り付いた子供達という公式でもできてんの?相変わらず意思疎通(一方)が使えないから考えが読めない。いったいなんでだ?

「いったいなんだ」
「うむ。この子がオマエと一緒に食べたいそうだったから呼んだのだ」
「にへへー。まてやったね」
「どうだ?可愛かろう?」
「その道に引き摺り込もうとするのはやめろ!!」

まあ、席には座るけど。全員座れそうだし。

「それで、主はまだ注文しておらぬのか?」
「まあな。取り敢えず席を取ってから行こうと思ってる」
「なるほどな。メンドくさそうにしていた割には面倒見がよいのだな」
「仕方がないだろ。どれだけメンドくさかろうがそうなったんだ。受け入れるしかないだろ。それよりもいま俺は別の疑問がある」
「ほう。なんだ?我が何故こんなにもレディー達にモテるのかということか?」
「いや、アンタにじゃない。というかどうでもいいし聞きたくない。それよりも、なんで俺の膝の上に座っているんだ?このガキは」
「にへへー」

先程の幼女が俺の膝の上にいつのまにか座っていた。なんか無駄にいい匂いがする。ガキに興味は無いが。

「おいガキ」
「がきじゃないおー。べううだおー」
「べうう?名前か?」
「ちがうー!!べううだおー」
「だから、べううだろ?」
「ちがうちがうー!!」

べううじゃない。だがべうう。まさかとは思うが発音ができていない?けうう、べうう、べうう、べうう・・・・・まさか。

「べルルか?」
「にへー。そうあよー」

笑っていやがる。どうやら合っていたらしいな。尻尾をブンブン振っていやがるし。

「んで、その両手のはなんだ?」

よく見るとベルルの両手には犬のパペットを付けていた。

片方はガラが悪そうな、もう片方はキリッとした顔をしていた。

「べううのおともだちなの!!こっちはけうう。こっちはろすうなの!!」

すごい名前だな。というかガラが悪そうなほうがケルルっていう名前なのかよ。どちらかというとロスルだろ。ガラが悪そうで色々と失ってそうだし。

「そうか。それで、なんでここに座っているんだ?ほらアッチに行け。いまならまだ何もされない」

俺がな。ムロムリがメッチャ見てくる。「わかるよ。幼子は可愛いよね」というその目をやめろ。潰すぞ。

「ハッハッハッハッ」

あれ?なんか物凄い荒い息が近くから感じる。ふとベルルを見ると

「ハッハッハッハッ」

・・・とても息が荒い。まさかとは思うんだが発情期?いや、そんなわけはない。よし、取り敢えず一旦どけるか。なんか怖いし。

そんなことを考えているときだった。

「あの、隊長?」

そう聞き慣れた声が聞こえてきた。この声って。

「・・・フラミか」
「はい。フラミでございますよロリ隊長」
「まて、いま聞き捨てならない言葉が聞こえてきたぞ。取り消せ」
「いえいえ、それはすみませんでしたロリ隊長」
「わざとか?わざとなのか?」

そんな言い争いをしていると、俺の部隊の主戦力が集まってきた。

「一体なんの騒ぎですかロリ隊長」
「面白いことになっておりますねロリ隊長」
「ふふふ。なかなかいいご趣味をしていますねキリサメ様」
「ロリたいちょー!!」
「テメェらしばく!!」
「ふえ!!お、おにいちゃん。べううのおみみがいたいよ~」
「誰がお兄ちゃんだ」

なんか、この時点で疲れてきた。午後からゴロージとの剣の訓練があるのに。

「はあ。先に注文に行ってくる。オマエたちもくるか?」
「いいえ。お先にどうぞロリ隊長」
「・・・明日の自主練のとき、覚えてろよ」
「わかりましたロリ隊長」
「ほんといい性格してるはオマエ」

自分の部下共をどう痛めつけようか考えながら、俺は注文をしに行く。丁度カウンターにミーナがいたのでそこで注文することにした。

「サーンの塩焼き定食を頼む」
「・・・・・」
「?おーい。ミーナ?」
「!?き、キリサメさん!?いったいいつからこちらに」
「ついさっきからだ」

なんかいつもと様子が違うな。何かあったのか?

「す、すみません。ぼーとしてました。それで、ご注文は?」
「ん?ああ、サーンの塩焼き定食1つ」
「サーンの塩焼き定食ということは、海鮮丼は売り切れていたんですね?」
「そうなんだよ。アレ、そこそこ高いけどかなり美味いんだよ」
「ふふ。そうですね。アレにはこの国で取れたばかりの新鮮な魚をつかっているんですよ。それに、ここのお米は品質にこだわっているんですよ」
「へー。やっぱりそうなんだ」

いつも通りに見えるが、やっぱりどこかおかしい。

「・・・なあ、ミーナ」
「はい?」
「今日の夜、俺の部屋に来てくれないか?」
「・・・・・・は、はい!?」

?顔が赤くなったな。熱でもあるのか?

「そ、そ、そ、それって」
「どうしたんだ?」
「あ、あ、あの・・・・・。りょ、料理作って来ます!!」

そう言ってミーナは料理を作りに行った。

「にしてもなんで今日はあんな様子なんだ?昨日まではいつも通りだったのに」

まあそれは今日の夜にわかることだ。

「サーンの塩焼き定食、おまたせしました!!」
「・・・・・相変わらず出てくるまでが早いな」

取り敢えず今はできたての飯を食うとしよう。
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