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第三章 開戦の序章
第三話
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「・・・・カハッ!!な、なんなんだいまのは」
「い、いまの、ベルルちゃん、ですよね」
「ハア、ハア、ハア、ハァ」
なんなんだロスルは。というより、アイツあんなに強かったのか?なにも反応できなかったぞ。たぶん・・・いやきっと、もしロスルが敵だったら今頃俺たちは既に死体になっている。
「ッチ!!さっきのガキに邪魔されてナライがやられちまった。だが・・・・・そのサキュバスだけは連れて帰る!!」
「させっかよ!!」
ミーナに向かって走っていたギリアスの前に転移する。ロスルのせいで場は荒れちまったが、コイツは敵のままだ。
「邪魔なんだよ!!『ヘビーバレット』!!」
「チッ!!」
ギリアスが片方の銃に魔力を込めて撃つ。それに反応してミーナを抱えて横に避ける。弾丸は背後にあった木に当たると粉々になる。生け捕りってレベルじゃないぞ。
「ヒャハハハハハ!!死ね死ね死ね死ねぇ!!」
「こんのっ」
ばら撒かれる弾丸を避ける。いまのところ避けきれているが、いつまで持つことか。
「チッ、ただばら撒くだけじゃダメか。・・・・・じゃあ、これならどうよ!!」
「なっ!?」
いきなりギリアスの肩にも機関銃が出現した。あれも発砲されたら流石にマズイ!!
「“てん「させっかよ!!」チィ!!」
一旦体制を整えるために転移を使用しようとした瞬間、ギリアスが機関銃の発砲を始める。転移をいま使うと発動までのラグで蜂の巣になる。かといってミーナを抱えたままだと致命傷を避けれない。てかなんで反動で吹っ飛ばないんだよ!!
「終わりだぁぁぁぁ!!」
「呪符展開、輪転せし風壁」
視界に文字が書かれた紙が舞っているのが見えた。それがミーナが言葉を発するとすべて砕け散ってあちらこちらに動きまわる。すると、ギリアスが放った弾丸の動きが鈍くなり、そして落ちていく。これはいったい?
「チッ、風の壁か。厄介なものを」
「キリサメさん。いまのうちに態勢を」
「あ、ああ」
よくわからないがミーナが時間稼ぎをしてくれているのはわかった。一度態勢を整えるために後ろに跳ぼうとする。その瞬間なにか嫌な予感がしミーナと共に横に跳ぶ。すると突然上からなにかが飛んできて先程まで俺がいた場所にいた。その手に地面に刺している剣を持った状態で。
「へぇ、まさか僕の剣を躱せるなんて思わなかったよ。これでも殺気は隠していたつもりだったのに。自信無くすなぁ」
そいつは背中にコウモリのような翼を生やしたタキシードのヤサ男だった。こいつも幹部なのか?・・・いや、ヒュプノスほどではないがかなりの魔力と気を感じる。まさか
「魔王・・・・」
「そうだよ。初めましてだね」
魔王であることを肯定し、恭しくお辞儀をすると口を開く。
「僕は魔王 イジュン。さた、僕の花嫁は渡してもらったよ」
その瞬間、ふと自分の腕からミーナがいなくなっていたことに気付く。そして、ミーナはイジュンの腕の中にいた。
「ミーナ!!」
俺はミーナに手を伸ばす。だが、その手は空を切り少し離れた場所に現れる。
「ギリアス、そいつは殺していいよ。あの魔王 ヒュプノスの幹部の席を2つも空席にすれば僕たちに有利になる。だから、頼んだよ」
「へへ、了解!!」
ギリアスに俺を殺すことを命じたイジュンはミーナを連れて消えて行った。俺は転移で接近しようとしたが、その瞬間ギリアスの銃撃が再開したため集中できなかった。
「・・・・・クソ」
ダメ、か。というか俺、こっちに来て魔族にまともに勝ったことがない。ヒュプノスの一件に関しては俺が基準値に達したから負けてくれたようなものだ。アレは俺の勝ちじゃない。
これが死か。ほんと、どうしようもできないな。人助けなんてガラじゃなかったのかもな。
ああクソッ。ほんと、俺って無力だよな。油断しない以前に実力がこれだからな。
ミーナ、助けられなくてごめん。
(呪符展開、衝風)
「あん?」
ミーナがイジュンと一緒に消える瞬間にそんな声が聞こえた。それはギリアスも一緒だったのか思わず動きが止まる。そのとき、ギリアスの足元に破れていない呪符があることに気がついた。そして、その呪符には風が集まりだしていた。
「しまっ」
ギリアスが気がつくより先に呪符が爆発し、爆風を引き起こした。
その爆風はギリアスに襲いかかり、そのまま吹き飛ばした。吹き飛んだ後すぐに水に落ちる音が聞こえた。『空間把握』を使ってみるとどうやら川があったらしく、ギリアスはそのまま流されていった。
つまり、俺は死なずに済んだ。
・・・なんだよ、これ。
「最後にあんなことできるなら、なんで自分のために使わないんだよ」
思わずそう呟いた。その解答は帰って来ず、木の葉が風に吹かれる音だけが聞こえてきた。
_________________________________________
友人にヒュプノスのイラストを描いてもらいました。
「い、いまの、ベルルちゃん、ですよね」
「ハア、ハア、ハア、ハァ」
なんなんだロスルは。というより、アイツあんなに強かったのか?なにも反応できなかったぞ。たぶん・・・いやきっと、もしロスルが敵だったら今頃俺たちは既に死体になっている。
「ッチ!!さっきのガキに邪魔されてナライがやられちまった。だが・・・・・そのサキュバスだけは連れて帰る!!」
「させっかよ!!」
ミーナに向かって走っていたギリアスの前に転移する。ロスルのせいで場は荒れちまったが、コイツは敵のままだ。
「邪魔なんだよ!!『ヘビーバレット』!!」
「チッ!!」
ギリアスが片方の銃に魔力を込めて撃つ。それに反応してミーナを抱えて横に避ける。弾丸は背後にあった木に当たると粉々になる。生け捕りってレベルじゃないぞ。
「ヒャハハハハハ!!死ね死ね死ね死ねぇ!!」
「こんのっ」
ばら撒かれる弾丸を避ける。いまのところ避けきれているが、いつまで持つことか。
「チッ、ただばら撒くだけじゃダメか。・・・・・じゃあ、これならどうよ!!」
「なっ!?」
いきなりギリアスの肩にも機関銃が出現した。あれも発砲されたら流石にマズイ!!
「“てん「させっかよ!!」チィ!!」
一旦体制を整えるために転移を使用しようとした瞬間、ギリアスが機関銃の発砲を始める。転移をいま使うと発動までのラグで蜂の巣になる。かといってミーナを抱えたままだと致命傷を避けれない。てかなんで反動で吹っ飛ばないんだよ!!
「終わりだぁぁぁぁ!!」
「呪符展開、輪転せし風壁」
視界に文字が書かれた紙が舞っているのが見えた。それがミーナが言葉を発するとすべて砕け散ってあちらこちらに動きまわる。すると、ギリアスが放った弾丸の動きが鈍くなり、そして落ちていく。これはいったい?
「チッ、風の壁か。厄介なものを」
「キリサメさん。いまのうちに態勢を」
「あ、ああ」
よくわからないがミーナが時間稼ぎをしてくれているのはわかった。一度態勢を整えるために後ろに跳ぼうとする。その瞬間なにか嫌な予感がしミーナと共に横に跳ぶ。すると突然上からなにかが飛んできて先程まで俺がいた場所にいた。その手に地面に刺している剣を持った状態で。
「へぇ、まさか僕の剣を躱せるなんて思わなかったよ。これでも殺気は隠していたつもりだったのに。自信無くすなぁ」
そいつは背中にコウモリのような翼を生やしたタキシードのヤサ男だった。こいつも幹部なのか?・・・いや、ヒュプノスほどではないがかなりの魔力と気を感じる。まさか
「魔王・・・・」
「そうだよ。初めましてだね」
魔王であることを肯定し、恭しくお辞儀をすると口を開く。
「僕は魔王 イジュン。さた、僕の花嫁は渡してもらったよ」
その瞬間、ふと自分の腕からミーナがいなくなっていたことに気付く。そして、ミーナはイジュンの腕の中にいた。
「ミーナ!!」
俺はミーナに手を伸ばす。だが、その手は空を切り少し離れた場所に現れる。
「ギリアス、そいつは殺していいよ。あの魔王 ヒュプノスの幹部の席を2つも空席にすれば僕たちに有利になる。だから、頼んだよ」
「へへ、了解!!」
ギリアスに俺を殺すことを命じたイジュンはミーナを連れて消えて行った。俺は転移で接近しようとしたが、その瞬間ギリアスの銃撃が再開したため集中できなかった。
「・・・・・クソ」
ダメ、か。というか俺、こっちに来て魔族にまともに勝ったことがない。ヒュプノスの一件に関しては俺が基準値に達したから負けてくれたようなものだ。アレは俺の勝ちじゃない。
これが死か。ほんと、どうしようもできないな。人助けなんてガラじゃなかったのかもな。
ああクソッ。ほんと、俺って無力だよな。油断しない以前に実力がこれだからな。
ミーナ、助けられなくてごめん。
(呪符展開、衝風)
「あん?」
ミーナがイジュンと一緒に消える瞬間にそんな声が聞こえた。それはギリアスも一緒だったのか思わず動きが止まる。そのとき、ギリアスの足元に破れていない呪符があることに気がついた。そして、その呪符には風が集まりだしていた。
「しまっ」
ギリアスが気がつくより先に呪符が爆発し、爆風を引き起こした。
その爆風はギリアスに襲いかかり、そのまま吹き飛ばした。吹き飛んだ後すぐに水に落ちる音が聞こえた。『空間把握』を使ってみるとどうやら川があったらしく、ギリアスはそのまま流されていった。
つまり、俺は死なずに済んだ。
・・・なんだよ、これ。
「最後にあんなことできるなら、なんで自分のために使わないんだよ」
思わずそう呟いた。その解答は帰って来ず、木の葉が風に吹かれる音だけが聞こえてきた。
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友人にヒュプノスのイラストを描いてもらいました。
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