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プロローグ

幕開け ②

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「テメェみたいな屑が草場さんと話してんじゃねぇよ」
「そうよそうよ。草場さんにどんな感情を抱いているのか知らないけど、草場さんとそういう関係になっていいのは河原様だけなんだから」
「というかあんたみたいなやつが河原様に話しかけないでくんない?根暗が感染るから」
「そりゃ言えてるな。アハハハハハハハ」
「「「「「「アハハハハハハハハハハハハ」」」」」」

まあ、こうなるわな。なにせ小学校からの幼馴染である芽依は学校内の彼女にしたいランキングの、親友である健一は彼氏にしたいランキングの一位常連だからだ。しかも2人とも俺によくよく話しかけてくる。

しかも芽依に至っては俺に抱きついてきたり、俺に弁当を作って渡してきたり、俺と話すときいつも頬を赤くしているのだ。

ひょっとしたら俺のことを好きなんじゃないのかと思うかもしれないが、俺はそうではないことを知っている。その理由はここでは語らなくていいだろう。

まあ、今回はいい方だろう。なにせ腹や足などの制服に隠れているところを中心にボコボコにしてきたり、教室に入った瞬間にバケツ一杯の水をぶっかけてきたり、ジャージに着替えようと思ったらそのジャージがカッターで切断されただけだからだ。
 因みにいつもはこれにチョークの粉を吸わせようとしたり、登校時間には上履きの中に、下校時間には靴の中に画鋲を入れていたり、机の上に白百合が生けてある花瓶が置かれたりするのだ。
他にもあるのだが、例を挙げたらキリがない。

全部躱そうと思えば躱せるのだが、そうするとあとが面倒くさそうなので躱さないでいる。

ついでに言うと先生達からもイジメられている。なにせ成績最下位の俺が成績上位の芽依と健一と連んでいるのが気にくわないらしい。まあ、最近教育実習できた人はそれに関与してこない。むしろ学校の中で俺は唯一信用できる人だ。

因みにうちの担任は基本的に男には無関心なのだが、自分が気に入った女に親しそうにしている男が気にくわないらしいから俺のイジメに加担しているらしい。
 前に体育館の倉庫で教育実習生を襲っていたのを邪魔したり、それ以外にも何度も邪魔したからだろう。確かに教育実習生の顔は凛としていてああいう奴らの好みだろうからな。あの女好きが気に入っても仕方がない。

奴等が未だ笑い続けていると、いきなりドアが開いた。そこから先程言った教育実習生が入ってきて

「あなた達、そこで一体何をしているの!!」
「あぁん?なんかおっしゃられましたでしょうか、眞条先生」
「ふざけないで!!何をしていたのかと聞いたのよ」
「チッ、そういう飾っているところ俺は好きだぜ。どうです?オレ達と楽しいことしませんか?朝まで退屈させないですよ」
「質問に答えなさい!!」
「うるせぇんだよ!!犯すぞ」

などという口論を始めていた。因みに彼女の名前は 眞城 伊那(まじょう いな)、性格はきつめで胸も小さめだが美人と言ってもいい顔をしているため狙っている人が多いらしい。

そして決まって俺はそれを止めている。

「すみません先生。少しはしゃぎ過ぎてしまいました。次から気をつけます」
「何を言っているの!!どう見てもこれはいじ「はしゃいでいただけです」・・・はあ、分かりました。次から気をつけなさい」

そう言うと眞城先生は教室の後ろにある教育実習生用のパイプ椅子に座った。それから暫くすると後ろから

「ムー君!!」
「うわっ!!」

という感じに抱きつかれた。こいつの名前は 草場 芽依(くさば めい)、俺の小学校からの腐れ縁で、要するに幼馴染であり、今の俺が暮らしている家の一人娘でもある。そして中学に入学したあたりから俺によく抱きつくようになった。

芽依が離れようとしなかったのでそのままなんでもない日常的な会話をしているともう1人の有名人が来た。

「よっ、相変わらずお前らラブラブだな」

こいつの名前は 河原 健一(かわはら けんいち)、俺の中学からの親友だ。こいつとはよくゲーセンなどで一緒に遊んだり、健一の家で芽依と3人でゲームをしたりして遊んでいた。そして高校に入ってから暇さえあれば俺に話しかけるようになっていた。

「そ、そんな健一君、ラブラブだなんてそんなことないよぉ」
「いやいや、顔を赤くしながら手を振っているところを見るとそう見えるんだよ」
「そ、そうかな。ねぇ、ムー君はどう思う?」

この質問には正直に答えた。

「僕は周りの事は基本的に気にしていないんだよ。だから、メーちゃんがそう思うならそれで良いと思うよ」
「えっ!?ホント!!えへへ、なんか照れるなぁ」

そんなこんなしているうちに先生が入ってきた。うちの担任の名前は 木村 義一(きむら よしかず)、女好きではあるが今のところ女生徒には手を出しておらず、俺を除く全生徒から人気のある先生だ。

「よーしお前ら全員座れ。ホームルームを始めるぞ」

先生がそう言ってクラス委員長である芽依が「起立」と言った瞬間教室の床全体が光り始め、そのまま教室中を包み込んだ。周りが焦り始めている中俺は誰かが「まさか、これは異世界召喚・・・よっしゃぁ!!俺が主人公ダァァァァ!!!」と叫ぶ声を聞超えた瞬間に芽依と健一、そして木村先生の方を向き、周りから人がどんどん消えている中、俺はただ一人でこれから起こることに期待を膨らませて微笑を浮かべていた。

さぁて、なんか面白いことが起きるかなぁ。

そう思った瞬間、俺も地球から姿を消した。
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