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第3章「ゴルゴダの丘」
第69話 ラーマの意地
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明けの明星様が配役を決めてから、具体的な作戦を練ります。
私は先ず、これまでの事を整理してから、自分の考えを提案しました。
「異界の魔王様の話を聞いて、これまで疑問であったいくつかの謎が解けました。
争い続けていた人間同士の国があっという間にまとまって私たちを攻撃できるようになったのはなぜか。
私たち魔族の国でも奇跡ともいえる神々との契約を人間の国が可能だったのはなぜか。
どうして人間の国が私達の国にも神がいると知っていたのか?
そうして、何故戦争を始めたのか?」
私はこれまでの疑問点を上げてから明けの明星様から聞かされた内容を元に、その答えを出します。
「異界をお滅ぼしになられたほどのお力を持つ魔王様がこの世界も狙っているのであれば、15年近く戦争を続けていた人間の国同士をまとめ上げたのは、やはりその異界の魔王様でしょう。
魔神スーリ・スーラ・リーン様をはじめとする神々が人間の国と共に行動している理由も、その魔王様の御威光によるものなのでしょう。
そうして、人間の国がどうして戦争を始めたのか? その理由も異界の魔王様の胸一つの事で人間の側には実際にはないのでしょう。」
私はそこまで話してから自分の本題に入ります。深呼吸をするように一つ息を吸い込むと発表しました。
「戦争の目的も原因も人間の側にないのならば、私は人間を押さえて和平交渉に持ち込みます。」
その答えを聞いてアンナお姉様も魔神シェーン・シェーン・クー様もヴァレリオ様も溜息をつかれました。
私の案がいつも通りの事であったのと、その作戦の成功率が低いとお考えになっているからです。そうお考えになることは私も予想していた事なので文句はございません。
そして、案の定。ヴァレリオ様は私の案に疑問を口にされました。
「ラーマ。和平は構わないが、人間の国は6万の兵がいる。それに対してゴルゴダは2万の兵数だ。
この戦で人間が簡単に和平に応じるとは思えない。
君はこれまでの戦で覚えたはずだ。和平は相手に大ダメージを与えた後でないと成立しにくいという事を。」
「一般的に攻城戦は攻める側は守る側の3倍の数がいると言われているが、この法則に照らし合わせると人間の国の勢力は我らの首に手が届くぞ。
君はこれをどうやって解決するつもりだ?」
ヴァレリオ様のお言葉には他の方々も同意のご様子で私をじっと見つめておられます。
しかし、私もこれまでに戦争を乗り越えた一国の王。無策ではありません。私は答えました。
「まずは、ゴルゴダは2万の兵ですが、ここにフェデリコの増援がつくはずです。そうなれば、そう易々とこの城は落ちません。
そして、ヴァレリオ様が私に命じられました通り、私は私の兵法を尽くしてこの城の防御を最高に高めています。自信があります。この城は簡単に落ちません。」
私が自信をもってそう答えるとヴァレリオ様は更に尋ねられました。
「防御だけでは戦は勝てん。君は攻撃の策を持っているのかい?」
「いいえ。私には明確な攻撃の手段はございません。しかし、それでも勝つ手段があると申し上げておきます。
それを信じるか信じないかは皆様の勝手です。」
自信をもってそう答える私にヴァレリオ様は驚いたような目で私を見ていました。
その眼はまるで
『あの大人しいラーマが僕に敵対するかのように意見するなんて・・・。
しかも、こんなに自信に満ちた態度をとって・・・』と、言いたげに見えました。
そうして、私の反論を聞いて固まってしまったヴァレリオ様を見て明けの明星様は嬉しそうに援護してくださいました。
「これこら、ヴァレリオ。いかんなぁ・・・少しはラーマを信じてやらにゃ。
そもそもラーマはお前の言いなりではないんやで?
大事に思ってるんやったら、俺のように少しはラーマの言う事を信じてたれや・・・。」
そうです!
そうなのですっ!! 私も幼いころより兵法を学んだ一国の姫。ヴァレリオ様も私の兵法をもう少し信じてくださってもいいのです。
そもそも明けの明星様の仰る通り、私はヴァレリオ様の籠の鳥では御座いませんわっ!!
私の事を想って下さっておられるのでしたら、もう少し私を信頼してくださっても良いと思うのです。
私は明けの明星様のお言葉に大賛成ですっ!!
そうしてその意思を示すかのように胸を張ってヴァレリオ様を見つめ返すと、ヴァレリオ様は困ったように横を向いてしまいました。
・・・ふっ!! 勝ちましたわ~~~っ!!
私の勝ちですっ!! 私、見事にヴァレリオ様に勝ったのですっ!!
私は心の中でガッツポーズを取って喜びます。しかし、今度は魔神シェーン・シェーン・クー様が意見なさいます。
「うん。ラーマ。お前に作戦があるのはわかった。
しかし、話を聞いた限り、それは持久戦に持ち込みたいってことだろ?」
シェーン・シェーン・クー様は見事に私の策を読まれました。私は驚いて尋ねます。
「っ!! ど、どうして、そのことを?」
「いや、それは簡単だろ。攻撃の手段がないというならそれしかないよ。
当然、そのことは人間の国王も直ぐに気が付く。その持久戦に対応されたらどうするんだ?
知っての通り、敵は人間の国の大都市モデナに補給基地を持っている。補給はそんなに難しくない。
そうなれば、互いに国力を削りあって、そのうちに必ず両軍ともに日殺しになるぞ。城内も城外も飢えた兵士で一杯だ。その時、お前はどうするつもりだ。」
シェーン・シェーン・クー様の意見を聞いているヴァレリオ様も全く同じ意見だとばかりに私を見つめていますが、これにも私は言い返します。
「私には秘策がございます。その秘策には日殺しも含まれます。
作戦が漏れぬようにこれ以上は申し上げられませんが、どうぞ、ご心配無きようお願いします。」
作戦が漏れぬようにという部分が若干引っかかったようにシェーン・シェーン・クー様はあからさまに不機嫌そうな顔をなさいましたが、明けの明星様が制止するように掌を見せるジェスチュアをすると、それ以上は何もおっしゃいませんでした。
しかし、今度はタヴァエルお姉様が私に質問なさいます。
・・・私、信頼感無さ過ぎじゃありませんか? そんな間抜けなことを普段からしてますでしょうか?
「ラーマ。あなたの作戦はわかりました。
しかし、では人間の国とどのような和平条約を結ぶおつもり?
まさか対等な関係を提案するつもりではないでしょうね?」
タヴァエル様は鋭いご指摘をなさいます。
しかし、私はこの質問に対しても自信をもって否定します。
「いいえ。タヴァエルお姉様。
私はあくまで対等な関係を望みます。お互いに手を取り合って助け合うべきだと考えます。」
タヴァエルお姉様は、そんな私の返事をキラキラしたおめめで聞いておられましたが、やがて嬉しそうに私の手を取って褒めてくださいました。
「そうですっ!! ああっ、ラーマ。あなたはなん時良い魂の持ち主。
それでこそ運命の聖女。
あと、もっとお姉様って呼んでっ!!」
タヴァエルお姉様は凄い圧で私にお姉様呼びを求めてきます。仕方なく私はお答えします。
「タヴァエルお姉様っ!! タヴァエルお姉様っ!! タヴァエルお姉様っ!!」
「ああんっ!! ラーマ、もっと言ってぇ~~」
「タヴァエルお姉様っ!! タヴァエルお姉様っ!! タヴァエルお姉様っ!!」
「もっと、もっと言ってっ!!」
「タヴァエルお姉様っ!! タヴァエルお姉様っ!! タヴァエルお姉様っ!!」
「ああっ・・・もっと、もっとぉ~~!!」
「・・・て、鬱陶しいからやめんか~~いっ!!」
私とタヴァエルお姉様の会話がエンドレスに回りそうになった時、明けの明星様が制止してくださいました。
・・・いや、正直良かったです。本当に助かりました。
あのままでは私、この先一生「タヴァエルお姉様っ!!」しか話せない女になるところでした。
「まあええっ!! ラーマ。お前のやりたいようにやってみい。
失敗してもお前の国民が皆殺しになるだけじゃ。
人間、一回くらいは失敗してみるのもええ。失敗の事なんか気にせずにやったらええっ!! この話はこれで終りやっ!!」
・・・・・・。あれ? 明けの明星様も地味に私の事を責めていませんか?
などと気にしていましたが、明けの明星様は気にせず作戦を続けます。
「それでや。向こうの神々は奴の命令で人間に加担しとるけど、行動に制約は与えられてないらしい。
せやったら、神々には戦の前に合図してこいつらの戦争の邪魔にならんようにせなならん。わかるか?」
明けの明星様は神々に言い聞かせるようにしてから、アンナお姉様に指示をなさいます。
「アンナ。俺の見立てでは奴らが決戦を仕掛けてくるんは2日後の明け方や。
せやからお前は他のモンをつれて、向こうの魔神たちに呼びかけせい。わかったな?」
その命令を受けたアンナお姉様は、ビクッと体を震わせると困ったように言いました。
「わ、私がですか?
で、でも・・・向こうには魔神スーリ・スーラ・リーンがいます・・・。」
スーリ・スーラ・リーン様にお会いしたくないアンナお姉様がそう仰るのは無理も御座いません。しかし、明けの明星様はそんなお姉様に対して、
「お前がやらなアカン。そうすれば、この作戦、成功する。
なに、魔神スーリ・スーラ・リーンにはこいつらが指一本触れさせんよ。」と言って、アンナお姉様を説得し、同意させるのでした。
そうして、大まかな戦の流れが決まったところで明けの明星様は両手をポンと叩き鳴らしてから、
「それよりも真の魔王様の帰還やぞっ!!
豪勢な食事を用意せいっ!! 皆で一緒に食おうっ!!」と、仰いました。
「あ、駄目です。これから長期戦になるのですから、無駄な浪費はお控えくださいませ。」
私がピシャリとそれを拒絶すると、明けの明星様は泣きそうなお顔をされて私を見つめました。
そんな明けの明星様を見た魔神シェーン・シェーン・クー様は、嬉しそうに手を上げて明けの明星様に報告なさいます。
「はいはい、は~~いっ!!
俺が狩りをしてきて、旦那様に御料理しますっ!!」
「おお、皆の分も頼むぞっ!!」
「は~いっ!!」
魔神シェーン・シェーン・クー様は嬉しそうに返事をなさると風よりも早く外に出かけると、一瞬で大量の動物を捕獲して戻ってこられました。
「ああ。これ、妖精の国から取ってきたやつだから・・・この国の食料を減らしたりはしてないぞ。」
魔神シェーン・シェーン・クー様はあっさりととんでもないことを仰るのでした。
でも、お陰様でその晩は楽しい宴になりました。シェーン・シェーン・クー様のお料理は相変わらず大変美味しゅうございました。だから、全員が上機嫌でお食事をとったのでした。
私は先ず、これまでの事を整理してから、自分の考えを提案しました。
「異界の魔王様の話を聞いて、これまで疑問であったいくつかの謎が解けました。
争い続けていた人間同士の国があっという間にまとまって私たちを攻撃できるようになったのはなぜか。
私たち魔族の国でも奇跡ともいえる神々との契約を人間の国が可能だったのはなぜか。
どうして人間の国が私達の国にも神がいると知っていたのか?
そうして、何故戦争を始めたのか?」
私はこれまでの疑問点を上げてから明けの明星様から聞かされた内容を元に、その答えを出します。
「異界をお滅ぼしになられたほどのお力を持つ魔王様がこの世界も狙っているのであれば、15年近く戦争を続けていた人間の国同士をまとめ上げたのは、やはりその異界の魔王様でしょう。
魔神スーリ・スーラ・リーン様をはじめとする神々が人間の国と共に行動している理由も、その魔王様の御威光によるものなのでしょう。
そうして、人間の国がどうして戦争を始めたのか? その理由も異界の魔王様の胸一つの事で人間の側には実際にはないのでしょう。」
私はそこまで話してから自分の本題に入ります。深呼吸をするように一つ息を吸い込むと発表しました。
「戦争の目的も原因も人間の側にないのならば、私は人間を押さえて和平交渉に持ち込みます。」
その答えを聞いてアンナお姉様も魔神シェーン・シェーン・クー様もヴァレリオ様も溜息をつかれました。
私の案がいつも通りの事であったのと、その作戦の成功率が低いとお考えになっているからです。そうお考えになることは私も予想していた事なので文句はございません。
そして、案の定。ヴァレリオ様は私の案に疑問を口にされました。
「ラーマ。和平は構わないが、人間の国は6万の兵がいる。それに対してゴルゴダは2万の兵数だ。
この戦で人間が簡単に和平に応じるとは思えない。
君はこれまでの戦で覚えたはずだ。和平は相手に大ダメージを与えた後でないと成立しにくいという事を。」
「一般的に攻城戦は攻める側は守る側の3倍の数がいると言われているが、この法則に照らし合わせると人間の国の勢力は我らの首に手が届くぞ。
君はこれをどうやって解決するつもりだ?」
ヴァレリオ様のお言葉には他の方々も同意のご様子で私をじっと見つめておられます。
しかし、私もこれまでに戦争を乗り越えた一国の王。無策ではありません。私は答えました。
「まずは、ゴルゴダは2万の兵ですが、ここにフェデリコの増援がつくはずです。そうなれば、そう易々とこの城は落ちません。
そして、ヴァレリオ様が私に命じられました通り、私は私の兵法を尽くしてこの城の防御を最高に高めています。自信があります。この城は簡単に落ちません。」
私が自信をもってそう答えるとヴァレリオ様は更に尋ねられました。
「防御だけでは戦は勝てん。君は攻撃の策を持っているのかい?」
「いいえ。私には明確な攻撃の手段はございません。しかし、それでも勝つ手段があると申し上げておきます。
それを信じるか信じないかは皆様の勝手です。」
自信をもってそう答える私にヴァレリオ様は驚いたような目で私を見ていました。
その眼はまるで
『あの大人しいラーマが僕に敵対するかのように意見するなんて・・・。
しかも、こんなに自信に満ちた態度をとって・・・』と、言いたげに見えました。
そうして、私の反論を聞いて固まってしまったヴァレリオ様を見て明けの明星様は嬉しそうに援護してくださいました。
「これこら、ヴァレリオ。いかんなぁ・・・少しはラーマを信じてやらにゃ。
そもそもラーマはお前の言いなりではないんやで?
大事に思ってるんやったら、俺のように少しはラーマの言う事を信じてたれや・・・。」
そうです!
そうなのですっ!! 私も幼いころより兵法を学んだ一国の姫。ヴァレリオ様も私の兵法をもう少し信じてくださってもいいのです。
そもそも明けの明星様の仰る通り、私はヴァレリオ様の籠の鳥では御座いませんわっ!!
私の事を想って下さっておられるのでしたら、もう少し私を信頼してくださっても良いと思うのです。
私は明けの明星様のお言葉に大賛成ですっ!!
そうしてその意思を示すかのように胸を張ってヴァレリオ様を見つめ返すと、ヴァレリオ様は困ったように横を向いてしまいました。
・・・ふっ!! 勝ちましたわ~~~っ!!
私の勝ちですっ!! 私、見事にヴァレリオ様に勝ったのですっ!!
私は心の中でガッツポーズを取って喜びます。しかし、今度は魔神シェーン・シェーン・クー様が意見なさいます。
「うん。ラーマ。お前に作戦があるのはわかった。
しかし、話を聞いた限り、それは持久戦に持ち込みたいってことだろ?」
シェーン・シェーン・クー様は見事に私の策を読まれました。私は驚いて尋ねます。
「っ!! ど、どうして、そのことを?」
「いや、それは簡単だろ。攻撃の手段がないというならそれしかないよ。
当然、そのことは人間の国王も直ぐに気が付く。その持久戦に対応されたらどうするんだ?
知っての通り、敵は人間の国の大都市モデナに補給基地を持っている。補給はそんなに難しくない。
そうなれば、互いに国力を削りあって、そのうちに必ず両軍ともに日殺しになるぞ。城内も城外も飢えた兵士で一杯だ。その時、お前はどうするつもりだ。」
シェーン・シェーン・クー様の意見を聞いているヴァレリオ様も全く同じ意見だとばかりに私を見つめていますが、これにも私は言い返します。
「私には秘策がございます。その秘策には日殺しも含まれます。
作戦が漏れぬようにこれ以上は申し上げられませんが、どうぞ、ご心配無きようお願いします。」
作戦が漏れぬようにという部分が若干引っかかったようにシェーン・シェーン・クー様はあからさまに不機嫌そうな顔をなさいましたが、明けの明星様が制止するように掌を見せるジェスチュアをすると、それ以上は何もおっしゃいませんでした。
しかし、今度はタヴァエルお姉様が私に質問なさいます。
・・・私、信頼感無さ過ぎじゃありませんか? そんな間抜けなことを普段からしてますでしょうか?
「ラーマ。あなたの作戦はわかりました。
しかし、では人間の国とどのような和平条約を結ぶおつもり?
まさか対等な関係を提案するつもりではないでしょうね?」
タヴァエル様は鋭いご指摘をなさいます。
しかし、私はこの質問に対しても自信をもって否定します。
「いいえ。タヴァエルお姉様。
私はあくまで対等な関係を望みます。お互いに手を取り合って助け合うべきだと考えます。」
タヴァエルお姉様は、そんな私の返事をキラキラしたおめめで聞いておられましたが、やがて嬉しそうに私の手を取って褒めてくださいました。
「そうですっ!! ああっ、ラーマ。あなたはなん時良い魂の持ち主。
それでこそ運命の聖女。
あと、もっとお姉様って呼んでっ!!」
タヴァエルお姉様は凄い圧で私にお姉様呼びを求めてきます。仕方なく私はお答えします。
「タヴァエルお姉様っ!! タヴァエルお姉様っ!! タヴァエルお姉様っ!!」
「ああんっ!! ラーマ、もっと言ってぇ~~」
「タヴァエルお姉様っ!! タヴァエルお姉様っ!! タヴァエルお姉様っ!!」
「もっと、もっと言ってっ!!」
「タヴァエルお姉様っ!! タヴァエルお姉様っ!! タヴァエルお姉様っ!!」
「ああっ・・・もっと、もっとぉ~~!!」
「・・・て、鬱陶しいからやめんか~~いっ!!」
私とタヴァエルお姉様の会話がエンドレスに回りそうになった時、明けの明星様が制止してくださいました。
・・・いや、正直良かったです。本当に助かりました。
あのままでは私、この先一生「タヴァエルお姉様っ!!」しか話せない女になるところでした。
「まあええっ!! ラーマ。お前のやりたいようにやってみい。
失敗してもお前の国民が皆殺しになるだけじゃ。
人間、一回くらいは失敗してみるのもええ。失敗の事なんか気にせずにやったらええっ!! この話はこれで終りやっ!!」
・・・・・・。あれ? 明けの明星様も地味に私の事を責めていませんか?
などと気にしていましたが、明けの明星様は気にせず作戦を続けます。
「それでや。向こうの神々は奴の命令で人間に加担しとるけど、行動に制約は与えられてないらしい。
せやったら、神々には戦の前に合図してこいつらの戦争の邪魔にならんようにせなならん。わかるか?」
明けの明星様は神々に言い聞かせるようにしてから、アンナお姉様に指示をなさいます。
「アンナ。俺の見立てでは奴らが決戦を仕掛けてくるんは2日後の明け方や。
せやからお前は他のモンをつれて、向こうの魔神たちに呼びかけせい。わかったな?」
その命令を受けたアンナお姉様は、ビクッと体を震わせると困ったように言いました。
「わ、私がですか?
で、でも・・・向こうには魔神スーリ・スーラ・リーンがいます・・・。」
スーリ・スーラ・リーン様にお会いしたくないアンナお姉様がそう仰るのは無理も御座いません。しかし、明けの明星様はそんなお姉様に対して、
「お前がやらなアカン。そうすれば、この作戦、成功する。
なに、魔神スーリ・スーラ・リーンにはこいつらが指一本触れさせんよ。」と言って、アンナお姉様を説得し、同意させるのでした。
そうして、大まかな戦の流れが決まったところで明けの明星様は両手をポンと叩き鳴らしてから、
「それよりも真の魔王様の帰還やぞっ!!
豪勢な食事を用意せいっ!! 皆で一緒に食おうっ!!」と、仰いました。
「あ、駄目です。これから長期戦になるのですから、無駄な浪費はお控えくださいませ。」
私がピシャリとそれを拒絶すると、明けの明星様は泣きそうなお顔をされて私を見つめました。
そんな明けの明星様を見た魔神シェーン・シェーン・クー様は、嬉しそうに手を上げて明けの明星様に報告なさいます。
「はいはい、は~~いっ!!
俺が狩りをしてきて、旦那様に御料理しますっ!!」
「おお、皆の分も頼むぞっ!!」
「は~いっ!!」
魔神シェーン・シェーン・クー様は嬉しそうに返事をなさると風よりも早く外に出かけると、一瞬で大量の動物を捕獲して戻ってこられました。
「ああ。これ、妖精の国から取ってきたやつだから・・・この国の食料を減らしたりはしてないぞ。」
魔神シェーン・シェーン・クー様はあっさりととんでもないことを仰るのでした。
でも、お陰様でその晩は楽しい宴になりました。シェーン・シェーン・クー様のお料理は相変わらず大変美味しゅうございました。だから、全員が上機嫌でお食事をとったのでした。
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