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第2話「夜風繋」
#1
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高校生活は、中学時代に比べれば随分と穏やかだった。
「最近、変な夢見るんだよねー」
なんと言っても、この俺に友人が出来たのだ。
俺の席までやってきて雑談を繰り広げる者の名は、猪皮蒼。
入学してすぐの体育で、余り者同士ペアを組んでから友人関係へと昇格したクラスメイトだ。
女子みたいな顔立ちで全体的にナヨッとしているように見えるが、意外と体力や筋肉は俺よりも優れている。けれどどこの部活にも所属していないらしい。
彼とはなんとなく気が合って、ここ数日は毎日のようにつるんでいる。数年ぶりの同性との日常会話は楽しく、俺はいつも心弾ませながら言葉のボールを投げ返していた。
「夢は、その時の精神状態と関係してるとかはよく言うよな」
「精神状態ねぇ。じゃあ、普通に三付と話してるだけの夢って、どういう意味かな?」
例を挙げられ、俺は回答よりも先に疑問を浮かべる。
「それのどこが変な夢なんだ?」
「いやそれが、その夢を見た何日後かに全く同じ内容の会話をしてるんだよ。話してると、あれこれ夢で見たな、ってなってさ。さっきもそうだったんだよね」
どうやらつい先ほどの体験が、この話題の発端らしかった。
「予知夢ってやつか? それかデジャブか。やっぱ実際、夢なんてあんまり覚えてないもんだし、そんな気がする、みたいなもんじゃないのか?」
「んーそうかなぁ? まあ別に困ってるわけじゃないからいいんだけど」
あははーと猪皮は笑い、解決出来ないと判断して話を切り上げる。
俺も夢に詳しいわけではないし、それ以上は話を広げられず次のトピックを投げた。
現在は授業前の休憩時間。咲も自分のクラスで友達が出来たらしく、短い休憩中に来ることは少なくなっていた。
ただ、昼飯はいつもこちらに来て一緒に食べている。そうなれば当然、周囲の注目を集め。
しかし、中学生と比べ高校生はやはり大人なようで、教室内が殺伐したりなんかはせず、多少噂話をされるぐらいに留まっていた。
噂をしている生徒も、わざわざちょっかいをかける面倒をしたがる奴はいない。
故に俺は、ノンビリと友人との会話を謳歌出来ているわけだった。
同性との気兼ねないやり取りが楽しく、積極的に俺から話題を提供していると、不意に気配が近づいて、すぐさま猪皮が反応した。
「ごめんっ。邪魔だったよね」
「え? ああいやっ、大丈夫だよっ」
猪川が謝罪を向けるのは一人の女子生徒。
俺の隣席の彼女は、猪皮の立ち位置が邪魔になって着席を躊躇っていたようだ。
猪川がその場を離れると、控えめなその女子生徒は申し訳なさそうに座る。
「じゃあもう授業も始まっちゃうし」
「おう」
時計を見れば授業開始まであと一分。猪皮はそのまま、少し離れた自席へと戻っていってしまった。
ちょっとした名残惜しさを感じながらも、胸の内には充足感がある。
やはり、同性の友達は素晴らしい。
咲には悪いが、そんなことを思う日々だった。
「最近、変な夢見るんだよねー」
なんと言っても、この俺に友人が出来たのだ。
俺の席までやってきて雑談を繰り広げる者の名は、猪皮蒼。
入学してすぐの体育で、余り者同士ペアを組んでから友人関係へと昇格したクラスメイトだ。
女子みたいな顔立ちで全体的にナヨッとしているように見えるが、意外と体力や筋肉は俺よりも優れている。けれどどこの部活にも所属していないらしい。
彼とはなんとなく気が合って、ここ数日は毎日のようにつるんでいる。数年ぶりの同性との日常会話は楽しく、俺はいつも心弾ませながら言葉のボールを投げ返していた。
「夢は、その時の精神状態と関係してるとかはよく言うよな」
「精神状態ねぇ。じゃあ、普通に三付と話してるだけの夢って、どういう意味かな?」
例を挙げられ、俺は回答よりも先に疑問を浮かべる。
「それのどこが変な夢なんだ?」
「いやそれが、その夢を見た何日後かに全く同じ内容の会話をしてるんだよ。話してると、あれこれ夢で見たな、ってなってさ。さっきもそうだったんだよね」
どうやらつい先ほどの体験が、この話題の発端らしかった。
「予知夢ってやつか? それかデジャブか。やっぱ実際、夢なんてあんまり覚えてないもんだし、そんな気がする、みたいなもんじゃないのか?」
「んーそうかなぁ? まあ別に困ってるわけじゃないからいいんだけど」
あははーと猪皮は笑い、解決出来ないと判断して話を切り上げる。
俺も夢に詳しいわけではないし、それ以上は話を広げられず次のトピックを投げた。
現在は授業前の休憩時間。咲も自分のクラスで友達が出来たらしく、短い休憩中に来ることは少なくなっていた。
ただ、昼飯はいつもこちらに来て一緒に食べている。そうなれば当然、周囲の注目を集め。
しかし、中学生と比べ高校生はやはり大人なようで、教室内が殺伐したりなんかはせず、多少噂話をされるぐらいに留まっていた。
噂をしている生徒も、わざわざちょっかいをかける面倒をしたがる奴はいない。
故に俺は、ノンビリと友人との会話を謳歌出来ているわけだった。
同性との気兼ねないやり取りが楽しく、積極的に俺から話題を提供していると、不意に気配が近づいて、すぐさま猪皮が反応した。
「ごめんっ。邪魔だったよね」
「え? ああいやっ、大丈夫だよっ」
猪川が謝罪を向けるのは一人の女子生徒。
俺の隣席の彼女は、猪皮の立ち位置が邪魔になって着席を躊躇っていたようだ。
猪川がその場を離れると、控えめなその女子生徒は申し訳なさそうに座る。
「じゃあもう授業も始まっちゃうし」
「おう」
時計を見れば授業開始まであと一分。猪皮はそのまま、少し離れた自席へと戻っていってしまった。
ちょっとした名残惜しさを感じながらも、胸の内には充足感がある。
やはり、同性の友達は素晴らしい。
咲には悪いが、そんなことを思う日々だった。
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