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第3話「猪皮蒼」
#3
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「………」
蒼が、なぜか異様なほどに俺を見つめている。
しかももう数時間近くだ。
彼が朝一の授業に途中参加して、現在は昼休みを目前とした数学。
その間、俺は蒼と一言も交わせていない。
向けられる視線に応えれば慌てて目を逸らすし、直接話を聞こうとしても休憩時間に突入したと同時に教室を飛び出して行ってしまう。
戻ってくるのも始業チャイムの直前で。
何か話しかけようとしている雰囲気はあるのだが、決心がつかないと言った感じ。
横目で向こうからのアクションを待っていると、蒼は唐突に深呼吸を始めた。
それからようやく、覚悟を決めて口を開く。
「ね、ねぇっ」
「なんだ?」
待ちかねたと振り向けば、しかしやっぱり彼の視線は、準備不足とばかりに右往左往して。
……あまりにも蒼らしくない仕草だ。
本来の彼は、中世的な顔立ちに似合わず、思い切りが良く行動力も備えている。
だが今目の前にいるのは、まるで正反対とも取れる、おどおどとした態度。
一体彼の身に何があったのか、と訝しんでいると蒼はようやく言葉を絞り出した。
「えぇっとあの、聞きたいことが——」
だがそれは部外者に遮られる。
「おいそこっ! 何を話している!?」
「はへっ!?」
私語を見つけて教師が怒りをあらわにした。
するとただでさえ、緊張している様子だった蒼は余計汗を流し、顔を真っ赤にする。
そのまま硬直して指摘に何も言えない蒼に俺はため息をつき、代わりに注目を寄せるよう挙手をした。
「すいません。話聞いてなかったんでページ教えてもらってました」
「授業はちゃんと聞けっ。日頃の態度も内申に関わってるからな」
怒りは一旦俺に向くも、すぐに教師は教科書の解説を再開した。場をどうにか流せたことにホッとする。
チラリと隣を見れば、蒼が奇妙な表情を向けてきていた。その意図は分からないものの、俺はとりあえずと自分のノートの端に文章を書き込む。
『また叱られると面倒だから、何かあるならここに書け』
中学時代にも散々行った授業中の会話。過去を少し懐かしく思いながら、俺はどこか先輩風を吹かせ、千切ったノートの切れ端を隣席に放る。
すると蒼は、その手があったかとばかりに目を見開いて、すぐに返信をつづり始めた。
そしてしばらくして、蒼から切れ端が返却される。
その内容を見て、俺は眉をしかめてしまった。
「どういう、意味だよ……」
よく見れば、何度も書き直した跡がある。色のないへこみにはいくつもの疑問符が重なっていて、どうやらいくつかの質問で決めかねていたようだ。
そして、最終的に選ばれたものが、
『将来の夢ってなに?』
その、何とも取りがたい問いかけで、俺は意図を読めず。
素直に『特に決まってない』とだけ返したのだった。
蒼が、なぜか異様なほどに俺を見つめている。
しかももう数時間近くだ。
彼が朝一の授業に途中参加して、現在は昼休みを目前とした数学。
その間、俺は蒼と一言も交わせていない。
向けられる視線に応えれば慌てて目を逸らすし、直接話を聞こうとしても休憩時間に突入したと同時に教室を飛び出して行ってしまう。
戻ってくるのも始業チャイムの直前で。
何か話しかけようとしている雰囲気はあるのだが、決心がつかないと言った感じ。
横目で向こうからのアクションを待っていると、蒼は唐突に深呼吸を始めた。
それからようやく、覚悟を決めて口を開く。
「ね、ねぇっ」
「なんだ?」
待ちかねたと振り向けば、しかしやっぱり彼の視線は、準備不足とばかりに右往左往して。
……あまりにも蒼らしくない仕草だ。
本来の彼は、中世的な顔立ちに似合わず、思い切りが良く行動力も備えている。
だが今目の前にいるのは、まるで正反対とも取れる、おどおどとした態度。
一体彼の身に何があったのか、と訝しんでいると蒼はようやく言葉を絞り出した。
「えぇっとあの、聞きたいことが——」
だがそれは部外者に遮られる。
「おいそこっ! 何を話している!?」
「はへっ!?」
私語を見つけて教師が怒りをあらわにした。
するとただでさえ、緊張している様子だった蒼は余計汗を流し、顔を真っ赤にする。
そのまま硬直して指摘に何も言えない蒼に俺はため息をつき、代わりに注目を寄せるよう挙手をした。
「すいません。話聞いてなかったんでページ教えてもらってました」
「授業はちゃんと聞けっ。日頃の態度も内申に関わってるからな」
怒りは一旦俺に向くも、すぐに教師は教科書の解説を再開した。場をどうにか流せたことにホッとする。
チラリと隣を見れば、蒼が奇妙な表情を向けてきていた。その意図は分からないものの、俺はとりあえずと自分のノートの端に文章を書き込む。
『また叱られると面倒だから、何かあるならここに書け』
中学時代にも散々行った授業中の会話。過去を少し懐かしく思いながら、俺はどこか先輩風を吹かせ、千切ったノートの切れ端を隣席に放る。
すると蒼は、その手があったかとばかりに目を見開いて、すぐに返信をつづり始めた。
そしてしばらくして、蒼から切れ端が返却される。
その内容を見て、俺は眉をしかめてしまった。
「どういう、意味だよ……」
よく見れば、何度も書き直した跡がある。色のないへこみにはいくつもの疑問符が重なっていて、どうやらいくつかの質問で決めかねていたようだ。
そして、最終的に選ばれたものが、
『将来の夢ってなに?』
その、何とも取りがたい問いかけで、俺は意図を読めず。
素直に『特に決まってない』とだけ返したのだった。
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