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第3話「猪皮蒼」
#7
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「蒼さん。なんだか最近、比良人さんと近いですわ」
「そ、そうかなっ?」
責めるような咲の瞳に、蒼は心当たりがないとばかりに笑みを作る。
今の今まで俺に詰め寄り似たような質問を浴びせていたにも関わらずだ。
そろそろ、向こうから真実を語らなければこちらも答えない、というスタンスに切り替えた方が良いのかもしれない。
などと今後の方針を考えていると、咲が輪から外れるように一歩離れる。
「それではわたくしは帰りますわね」
「あれ、今日は一緒じゃないの?」
一人で教室を出ようとする咲に疑問を持って、蒼が彼女と俺を交互に見やる。
確かに放課後はいつも俺と一緒に帰っているが、毎日と言うわけもない。これまでにも何度かはあったことだ。
「今日は少し用事がありますの」
ただ、今までの何度かとは、今日の表情は違っていた。
以前は喜び浮足立っているようにも思えたが、今回は顔色が優れない。
と言うか最近だ。
多くても月に一度程度の用事は、二年生になってから週一ぐらいと頻度が増えている。その増えた辺りから、彼女は日頃からどこか、一人の時は憂いを帯びるようになっていた。
気にはなるが、咲は意地っ張りなところもあるし決して悩みは打ち明けないだろう。それに言わないということは多分、ずっと俺に隠していることとも関係しているはずだ。
それなりに付き合いが長いから表情でなんとなくは察して、俺は特に何も言わず彼女へ片手を上げた。
「じゃあな」
「はい。また明日ですわ」
「じゃ、じゃあねー」
咲が教室を出ていくのを見送ってから、さて、と俺も立ち上がる。
「蒼は今日もバイトなんだろ? 頑張れよ」
「えっ? あ、ああうんっ」
試しに聞いてみれば、やはり蒼はまた妙な反応を見せる。
相手が言わないから、こちらで考えようと試みているが、やはり答えには至らない。そうして色々考えながら俺も、一人で下校へと向かった。
高校から俺の家までは徒歩で十五分くらい。中学も徒歩通学で、道中にその懐かしの校舎は建っている。
ふとなんとなく、二年前には自分もいた教室を眺めていると、横へと動いた視界の隅に何かが映った。
立ち止まり集中すれば、物音も聞こえ。
誰かが、俺をつけているようだ。
俺はすぐにその誰かを暴こうとはせず、確実性を求めチャンスを見計らうことにした。
そうして、隠れる場所の少ない一本道へと入り、勢いよく振り返る。
「っ!?」
すると、慌てたように電柱へと隠れる姿。
一瞬見えた顔立ちに、俺は呆れ顔を引きつらせた。
「何してんだアイツ……」
電柱は隠れるには頼りなく、肩や頭部がはみ出ている。その部分的な要素からすぐに蒼だと判断出来た。
彼は必死に息を殺してやり過ごそうとしている。その様子をしばらく眺めていると、気を抜いてか電柱の陰から顔が覗き、ばっちりと目があった。
気づかれていると知って、蒼は慌てて引き返す。
けれどもそれは距離を離しただけで、一本道に入る角、十全に体を隠した状態で、未だに観察は続けていた。
俺はその光景に不気味さと滑稽を見出しながら、追いかけても逃げられるだけだろうなと仕方なく帰宅へと戻る。
結局、家に入るその瞬間まで、蒼は俺を尾行していた。
「そ、そうかなっ?」
責めるような咲の瞳に、蒼は心当たりがないとばかりに笑みを作る。
今の今まで俺に詰め寄り似たような質問を浴びせていたにも関わらずだ。
そろそろ、向こうから真実を語らなければこちらも答えない、というスタンスに切り替えた方が良いのかもしれない。
などと今後の方針を考えていると、咲が輪から外れるように一歩離れる。
「それではわたくしは帰りますわね」
「あれ、今日は一緒じゃないの?」
一人で教室を出ようとする咲に疑問を持って、蒼が彼女と俺を交互に見やる。
確かに放課後はいつも俺と一緒に帰っているが、毎日と言うわけもない。これまでにも何度かはあったことだ。
「今日は少し用事がありますの」
ただ、今までの何度かとは、今日の表情は違っていた。
以前は喜び浮足立っているようにも思えたが、今回は顔色が優れない。
と言うか最近だ。
多くても月に一度程度の用事は、二年生になってから週一ぐらいと頻度が増えている。その増えた辺りから、彼女は日頃からどこか、一人の時は憂いを帯びるようになっていた。
気にはなるが、咲は意地っ張りなところもあるし決して悩みは打ち明けないだろう。それに言わないということは多分、ずっと俺に隠していることとも関係しているはずだ。
それなりに付き合いが長いから表情でなんとなくは察して、俺は特に何も言わず彼女へ片手を上げた。
「じゃあな」
「はい。また明日ですわ」
「じゃ、じゃあねー」
咲が教室を出ていくのを見送ってから、さて、と俺も立ち上がる。
「蒼は今日もバイトなんだろ? 頑張れよ」
「えっ? あ、ああうんっ」
試しに聞いてみれば、やはり蒼はまた妙な反応を見せる。
相手が言わないから、こちらで考えようと試みているが、やはり答えには至らない。そうして色々考えながら俺も、一人で下校へと向かった。
高校から俺の家までは徒歩で十五分くらい。中学も徒歩通学で、道中にその懐かしの校舎は建っている。
ふとなんとなく、二年前には自分もいた教室を眺めていると、横へと動いた視界の隅に何かが映った。
立ち止まり集中すれば、物音も聞こえ。
誰かが、俺をつけているようだ。
俺はすぐにその誰かを暴こうとはせず、確実性を求めチャンスを見計らうことにした。
そうして、隠れる場所の少ない一本道へと入り、勢いよく振り返る。
「っ!?」
すると、慌てたように電柱へと隠れる姿。
一瞬見えた顔立ちに、俺は呆れ顔を引きつらせた。
「何してんだアイツ……」
電柱は隠れるには頼りなく、肩や頭部がはみ出ている。その部分的な要素からすぐに蒼だと判断出来た。
彼は必死に息を殺してやり過ごそうとしている。その様子をしばらく眺めていると、気を抜いてか電柱の陰から顔が覗き、ばっちりと目があった。
気づかれていると知って、蒼は慌てて引き返す。
けれどもそれは距離を離しただけで、一本道に入る角、十全に体を隠した状態で、未だに観察は続けていた。
俺はその光景に不気味さと滑稽を見出しながら、追いかけても逃げられるだけだろうなと仕方なく帰宅へと戻る。
結局、家に入るその瞬間まで、蒼は俺を尾行していた。
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