Find me ~俺に近づく三人が明らかに怪しい。~

落光ふたつ

文字の大きさ
33 / 63
第5話「計アdかdケd」

#4

しおりを挟む
「………」
 比良人は、隣に並んで信号を待つ少女を横目に見た。
 少女と言っても具体的な年齢は不詳で、ただ妙な、目を離せない魅力を持っている。

 彼女の名前はエミ。
 それは、彼女から求められ、比良人が与えた名前だった。

 なぜそんな名前を付けたのか。
 特に笑顔が印象的と言うわけはなく、むしろ感情の起伏は乏しい方だ。それなのに反射的にその案を出したのは、記憶に濃く残っていたからだろう。

 河川敷での記憶。あの場所で出会ったオッサンが、エミと重なる幻影に向けて放った言葉。

 多分、名前で間違いない。何故かは分からないがそう確信していて、そして隣の彼女の名であることも同様に理解していた。
 そんなことを考え、周りが見えないでいると、

 ——ゴスッ。

 突然、背中に衝撃が襲った。

「何すんだよっ」

 振り向けば握られた拳があって、それを辿っていけば、無表情ながらに不服を訴える瞳が比良人を刺していた。

「……信号」

 エミは前方を指差し、灯る矢印を示す。周囲の人だかりも歩き出していて、変に足を止めていた現状に比良人はバツが悪くなった。
 そうして横断歩道を歩き出しながら、殴られた背中をさする。
 その痛みは、何度か覚えのあるもので。

 ……今までもこいつが?
 そんな荒唐無稽な推測が浮かんで、なわけないかと否定する。

 それからなんとなく、周囲の景色を見渡した。
 いつもの街並み。比良人が暮らし、通学路として何度も通った道。
 けれど何かが足りないような気がして、でもその欠落の答えまでは浮かばない。
 その疑問も時間が経てばすぐに霧散し、比良人はふと今更な疑問を抱く。

「……てか、いつまでついてくるんだ?」
「他に行く場所ないから」
「他って、もしかしてこのまま俺の家についてくるつもりだったのか?」

 まさかと思いながら問いかければ、エミは下手に演技っぽく小首を傾げた。

「養ってほしいな」

 じっと向けられる瞳にウッとなるも、比良人はとっさに常識を引っ張り出す。

「いやいやいやっ、俺普通の高校生だからっ。親もいるしっ」
「……なら、きみんちの玄関先で寝泊まりするしかない」
「そっちの方が勘弁なんだが……」

 代替案に顔を引きつらせる。とは言え、最初の案にも頷けず。
 そうこうしながら無言を貫いている間、エミは動かず比良人を見つめ続けている。
 深く、吸い込まれそうな瞳。
 そこに映し出されるとなんだか堪らず、ついには折れたと項垂れた。

「……親に相談するから待ってくれ。許可出なかったら俺の知り合い当たってみるから」
「ありがと」
「言っとくが、一泊だけだからな!?」

 今日はもう遅い。見る限りエミは荷物を何も持っていないし、これから宿泊場所を探すには苦労するだろう。それこそ野宿になりかねない。
 寒い時期でないとは言え、当てのない少女を外に放り出すのはさすがに気が引けた。
 なんだか自分の考えで動いていない感覚を味わいながらも、約束した以上はとケータイで母の連絡先へと繋げる。
 既に帰宅していた親たちは事情を説明すればあっさりとオッケーを出してきて、比良人は渋々、エミを自宅に案内するのだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

還暦の性 若い彼との恋愛模様

MisakiNonagase
恋愛
還暦を迎えた和子。保持する資格の更新講習で二十代後半の青年、健太に出会った。何気なくてLINE交換してメッセージをやりとりするうちに、胸が高鳴りはじめ、長年忘れていた恋心に花が咲く。 そんな還暦女性と二十代の青年の恋模様。 その後、結婚、そして永遠の別れまでを描いたストーリーです。 全7話

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

ちょっと大人な物語はこちらです

神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な短編物語集です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

復讐のための五つの方法

炭田おと
恋愛
 皇后として皇帝カエキリウスのもとに嫁いだイネスは、カエキリウスに愛人ルジェナがいることを知った。皇宮ではルジェナが権威を誇示していて、イネスは肩身が狭い思いをすることになる。  それでも耐えていたイネスだったが、父親に反逆の罪を着せられ、家族も、彼女自身も、処断されることが決まった。  グレゴリウス卿の手を借りて、一人生き残ったイネスは復讐を誓う。  72話で完結です。

【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜

来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、 疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。 無愛想で冷静な上司・東條崇雅。 その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、 仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。 けれど―― そこから、彼の態度は変わり始めた。 苦手な仕事から外され、 負担を減らされ、 静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。 「辞めるのは認めない」 そんな言葉すらないのに、 無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。 これは愛? それともただの執着? じれじれと、甘く、不器用に。 二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。 無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。 ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。

処理中です...