今日の天使

こんぶおにぎり

文字の大きさ
1 / 2

2024/6/11の天使

しおりを挟む
私の大学には天使がいる。話したこともなければ、名前すら知らない。知っているのは、火曜のお昼後の3限の心理学の授業で1番前の窓際の席で堂々とお昼寝していること。

今日、お弁当も財布も忘れてしまった私。一緒に過ごしたいと思えるような友達もいないからと1人でいた事が仇となり、やりたいことも昼食を摂る術もない。

「まあ、いっか…」

私は特に何もすることがないからと、3限の心理学の教室に向かった。教室では、何人かの男子が前の方の席で楽しそうに話していた。私はその明るい雰囲気から逃げるように後ろの廊下側の席に座った。

「お腹空いた…」
「ラムネならあるよ。」

ほら、と横からラムネを差し出されたから、反射で手を出すと、コロンと白いラムネが落とされた。ラムネのように白い手を辿っていくと、目の前には天使がいた。彼の周りだけで踊る光を纏って。

「ありがと…。いつの間に横…」
「珍しくない?こんな早くに教室来るの。」
「えっ?いや…お弁当忘れて…財布も忘れて…」
「だからお腹空いてたんだ笑」

私の隣に座って、いつものように机に伏せる彼。こちらに顔を向けてニコッと微笑む。どこか御利益さえありそうなその笑みを前にして、いつも通りでいられる人なんているのだろうか。

「今日はここにしよっかな。」

彼はそういうと立ち上がって、前の方の席にいる男子に大声で声をかけた。

「ねえ!俺のカバン持ってきて~」
「なんでだよ、めんどくせぇな。」
「いいじゃん!お願い!」
「ほら、持ってきてやったよ。この子は?」

カバンを持ってきた男子が私を指す。

「詩音ちゃん。ラムネあげたから友達。」
「なんだよそれ笑」

呆れるように笑ってその男子は友達の元へ戻って行った。

「なんで私の名前知ってるの…?」
「んー、なんか響きが好きだから。」
「私と友達…?」
「うん、友達。このラムネ友だちの証。やだった?」

覗き込むように顔を見られて、彼の眩しさに目が眩みながら首を横に振った。

「面白いね。詩音ちゃん。」
「からかわないでよ…」
「可愛い。」

真っ直ぐな言葉に驚いて、隣の彼を見るとさっきと同じようにニコッと微笑まれた。

「俺の名前、光!好きなように呼んで!」
「こう…くん。」
「そ、こうくん。来週まで覚えててね。」

光くんの佇まい、柔らかい声、朗らかな笑顔、名前通りだと感じながら、心に『今日の天使』という日記をしたためる。チャイムが鳴って教授が来た。

「おやすみ!」

堂々とそう言って、光くんは机に伏せた。腕の隙間から見える彼の寝顔はやっぱり天使のようで。この世のものでは無いような、そんな不思議な感じがした。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ちょっと大人な物語はこちらです

神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な短編物語集です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

片思い台本作品集(二人用声劇台本)

樹(いつき)@作品使用時は作者名明記必須
恋愛
今まで投稿した事のある一人用の声劇台本を二人用に書き直してみました。 ⚠動画・音声投稿サイトにご使用になる場合⚠ ・使用許可は不要ですが、自作発言や転載はもちろん禁止です。著作権は放棄しておりません。必ず作者名の樹(いつき)を記載して下さい。(何度注意しても作者名の記載が無い場合には台本使用を禁止します) ・語尾変更や方言などの多少のアレンジはokですが、大幅なアレンジや台本の世界観をぶち壊すようなアレンジやエフェクトなどはご遠慮願います。タイトル変更も禁止です。 ※こちらの作品は男女入れ替えNGとなりますのでご注意ください。 その他の詳細は【作品を使用する際の注意点】をご覧下さい

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です

朝陽七彩
恋愛
 私は。 「夕鶴、こっちにおいで」  現役の高校生だけど。 「ずっと夕鶴とこうしていたい」  担任の先生と。 「夕鶴を誰にも渡したくない」  付き合っています。  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  神城夕鶴(かみしろ ゆづる)  軽音楽部の絶対的エース  飛鷹隼理(ひだか しゅんり)  アイドル的存在の超イケメン先生  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  彼の名前は飛鷹隼理くん。  隼理くんは。 「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」  そう言って……。 「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」  そして隼理くんは……。  ……‼  しゅっ……隼理くん……っ。  そんなことをされたら……。  隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。  ……だけど……。  え……。  誰……?  誰なの……?  その人はいったい誰なの、隼理くん。  ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。  その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。  でも。  でも訊けない。  隼理くんに直接訊くことなんて。  私にはできない。  私は。  私は、これから先、一体どうすればいいの……?

彼の言いなりになってしまう私

守 秀斗
恋愛
マンションで同棲している山野井恭子(26才)と辻村弘(26才)。でも、最近、恭子は弘がやたら過激な行為をしてくると感じているのだが……。

処理中です...