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2024/6/18の天使
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今日は火曜日。三限の授業には天使がいる。
先週の出来事が夢でなければ、あの白い肌と白玉のような見るに柔らかそうなほっぺたと長いまつ毛の彼の横で授業を受けた。陽の光の中に咲く花のような彼の名は光。
「詩音ちゃん?お隣いい?」
ぽわぽわと綿毛のような柔らかい声とともにのぞき込まれた。
「光くん!?」
「わっ!声おっきいって、びっくりした~笑」
「ごめ…隣どうぞ…」
「ありがと。それより、名前覚えててくれたんだ!」
そういった彼は本当に嬉しそうにその綺麗な顔を崩していて、それでさえも美しく目も心も奪われる。
「だって…」
私は、毎日のように光くんの夢を見ているからと言いかけて踏みとどまった。彼は金木犀のハンドクリームを手に塗りながら、「うれしいなぁ」と呟いていた。その姿はやっぱり浮世離れして見えた。
「詩音ちゃんもハンドクリーム使う?」
「えっ?」
「ずーっと見てるから使うかな~と思って。」
「あ、いや、え、」
「詩音ちゃんやっぱり面白い。ほら、手出して!」
彼に流されるまま手を差し出すと、こわれものを扱うように優しく握られた。
「つけすぎちゃったからちょうど良かった。ありがと。」
「えっ、あ、うん。」
「詩音ちゃん、手冷たい。」
「教室の冷房寒いから。」
「そっかぁ、俺そんなにかも。」
「うん、あったかい。」
「詩音ちゃん、顔は赤いけどね笑」
彼はいたずらをした子どものように無邪気笑った。咄嗟に手を離そうとするとギュッと強く握られた。
「ダメだよ。指まで馴染ませないと。」
白くて細くて透き通るような美しい手が私の手に絡みつく。心臓があまりに騒ぐから目を閉じる。
「やだった?」
「そんなこと…ないよ。」
「ほんと?良かったぁ!じゃあ…」
チャイムがなったのに光くんは左手を離してくれない。
「このまま受けようよ。」
後ろからも見えないようにとギュッと詰められた距離。金木犀の香りと体温の共有は2人だけが知っている秘密。ノートを取れないことなんてどうでも良くなって、彼に全てを預けたくなる。
「うん。」
金木犀の香りと体温を共有出来ても、思考は共有できなくて。彼か何を思って、私の手を握るのか分からなくて。そのもどかしさはどこか恋に似ているような気がした。まだ名前しか知らないのにと現実的な思考は捨てきれずに静かに『今日の天使』に今日の光くんを記した。
先週の出来事が夢でなければ、あの白い肌と白玉のような見るに柔らかそうなほっぺたと長いまつ毛の彼の横で授業を受けた。陽の光の中に咲く花のような彼の名は光。
「詩音ちゃん?お隣いい?」
ぽわぽわと綿毛のような柔らかい声とともにのぞき込まれた。
「光くん!?」
「わっ!声おっきいって、びっくりした~笑」
「ごめ…隣どうぞ…」
「ありがと。それより、名前覚えててくれたんだ!」
そういった彼は本当に嬉しそうにその綺麗な顔を崩していて、それでさえも美しく目も心も奪われる。
「だって…」
私は、毎日のように光くんの夢を見ているからと言いかけて踏みとどまった。彼は金木犀のハンドクリームを手に塗りながら、「うれしいなぁ」と呟いていた。その姿はやっぱり浮世離れして見えた。
「詩音ちゃんもハンドクリーム使う?」
「えっ?」
「ずーっと見てるから使うかな~と思って。」
「あ、いや、え、」
「詩音ちゃんやっぱり面白い。ほら、手出して!」
彼に流されるまま手を差し出すと、こわれものを扱うように優しく握られた。
「つけすぎちゃったからちょうど良かった。ありがと。」
「えっ、あ、うん。」
「詩音ちゃん、手冷たい。」
「教室の冷房寒いから。」
「そっかぁ、俺そんなにかも。」
「うん、あったかい。」
「詩音ちゃん、顔は赤いけどね笑」
彼はいたずらをした子どものように無邪気笑った。咄嗟に手を離そうとするとギュッと強く握られた。
「ダメだよ。指まで馴染ませないと。」
白くて細くて透き通るような美しい手が私の手に絡みつく。心臓があまりに騒ぐから目を閉じる。
「やだった?」
「そんなこと…ないよ。」
「ほんと?良かったぁ!じゃあ…」
チャイムがなったのに光くんは左手を離してくれない。
「このまま受けようよ。」
後ろからも見えないようにとギュッと詰められた距離。金木犀の香りと体温の共有は2人だけが知っている秘密。ノートを取れないことなんてどうでも良くなって、彼に全てを預けたくなる。
「うん。」
金木犀の香りと体温を共有出来ても、思考は共有できなくて。彼か何を思って、私の手を握るのか分からなくて。そのもどかしさはどこか恋に似ているような気がした。まだ名前しか知らないのにと現実的な思考は捨てきれずに静かに『今日の天使』に今日の光くんを記した。
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