僕は誰も選べない

蓮見 黎

文字の大きさ
上 下
3 / 33

1-2

しおりを挟む
 そういえば、この間まで半袖で過ごしていたのに、なんだか上着を羽織ることが増えていた。そろそろ衣替えの季節かもしれない。
 普段から煩わしいと裸でいることが多い自分には、関係のない話だが。
 ふと、姿見のミラーが目についた。
 乳首から下がるリング式のピアスが鋭く光っていた。ブルーがかった金髪に、色白の肌。耳元にはシルバーのピアス。
 華奢な体つき。パンクファッション好きといえば聞こえがいいが、何処から見ても完璧なチャラ男がそこにいた。
 スーツを着こなす貴遠の隣に、本当に自分が並んでいてもいいのかと何度も思ったし、尋ねた。
 貴遠は決まって優しく笑ってキスをした。
「チ…勝てねえ…」
 何に、というわけでもないが、勝負をするつもりもなかった。
 
「…さむ…」
 肌寒いくらいが丁度いい自分には珍しく、肌が粟立った。

 インターホンが鳴ったのは、その時だった。
しおりを挟む

処理中です...