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誰だろうか。
貴遠が鍵を忘れて出かけたのかもしれない。玄関はオートロックだった。
「貴遠…?鍵忘れたのか?」
言って、すぐさま鍵を開ける。
確認、するべきだったのだ。
ノブを回す前に、いきなり玄関ドアは開いた。
驚く間もなく、厚底の黒い革ブーツがドアと玄関の合間に突き刺さるように現れた。
アーマーリングで飾られた指が、見えた。細く、だが節ばった手。
この手をよく、知っていた。
「よォ、元気?シュウちゃーん」
ふざけたような、高い声が響いた。
黒い帽子を目深にかぶった男は、下からのぞき込むように愁の顔を見た。
「か…加瀬…?」
どうしてここにいるのか、信じられなかった。
「そう、俺」
ニタニタと笑う唇は、その動きからは考えられぬほど形は良いはずだった。
この男がもし物静かだったら、美しい人形を思わせる姿をしていた。大学内でも一、二を争う風貌をしていたに違いない。
男女分け隔てなく、彼を放ってはおかないだろう。だが、それは決定的に違った。
皆、口を揃えて、彼をこう呼んだ。
不安定な情緒を持ったナイフ。
つまりは、「危ないヤツ」という意味だった。
貴遠が鍵を忘れて出かけたのかもしれない。玄関はオートロックだった。
「貴遠…?鍵忘れたのか?」
言って、すぐさま鍵を開ける。
確認、するべきだったのだ。
ノブを回す前に、いきなり玄関ドアは開いた。
驚く間もなく、厚底の黒い革ブーツがドアと玄関の合間に突き刺さるように現れた。
アーマーリングで飾られた指が、見えた。細く、だが節ばった手。
この手をよく、知っていた。
「よォ、元気?シュウちゃーん」
ふざけたような、高い声が響いた。
黒い帽子を目深にかぶった男は、下からのぞき込むように愁の顔を見た。
「か…加瀬…?」
どうしてここにいるのか、信じられなかった。
「そう、俺」
ニタニタと笑う唇は、その動きからは考えられぬほど形は良いはずだった。
この男がもし物静かだったら、美しい人形を思わせる姿をしていた。大学内でも一、二を争う風貌をしていたに違いない。
男女分け隔てなく、彼を放ってはおかないだろう。だが、それは決定的に違った。
皆、口を揃えて、彼をこう呼んだ。
不安定な情緒を持ったナイフ。
つまりは、「危ないヤツ」という意味だった。
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