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「…!」
加瀬の長い黒髪が、愁の頬を撫でる。見上げれば、加瀬の形の良い唇と黒い瞳が見下ろしていた。
まるで愁の声が合図のように、一瞬の出来事だった。
バニラムスクの香りが愁の鼻を掠める。それはなぜか官能を思わせ、加瀬から放たれていることに気付き、愁は眉をひそめた。
「まだ、分からないって、顔してんな」
加瀬は、低く囁いた。
その声が緊張した色を含んでいることに気付き、愁はその顔を見た。
痛みを堪える様な加瀬の瞳が、愁の瞳と交わるなり、突如加瀬の手が、愁の顎を掴んだ。
「ここへ何しに来た?」
愁の瞳を覗く加瀬の瞳が、細められる。
「俺に、またレイプされに来たわけじゃねェだろ?」
「…っ」
愁は、言葉を失って、加瀬を見た。加瀬は、唇を歪めて微笑を浮かべると、愁の首筋に顔を埋めた。
「…!ア…!」
加瀬の指が、乱雑にベルトを取り去ると、投げ捨てる。加瀬はそのまま、愁の肌を強く吸い上げた。
チクリ、と肌は痛んだ。加瀬は、紅く残っているベルトの跡を丁寧に舐めるように、愁の首筋を辿っていく。
愁は、拒むこともできずに、徐々に熱くなっていく肌を感じていた。
「…ッ、…ぁ…」
不意に加瀬の指が、そっと愁の首を締め上げる。
愁は、体を強張らせ、僅かに開いた唇から、呻きを漏らした。
「…ん、ぁ、ぅ…」
反射のように、身体の奥底で甘い何かが目覚めようとするのを静かに感じていた。
すでに、抗えない何かが、体を支配していた。
見上げた愁の瞳を、真っすぐに見返して、加瀬は小さく笑うと、その指に力を加えた。
「…ッ」
白く染まっていく視界の中で、愁は、加瀬の瞳を見ていた。黒い双眸は細められ、愁を見る。
まるで内側を覗かれているような感覚に愁は陥った。
「ハ…ほっせェ首だな」
嘲笑うように加瀬は言い捨てると、締め上げていた首を手放した。気管に入り込む酸素に、愁は激しく咳込むと加瀬を見上げた。
加瀬は冷たく愁を見下ろし、首を傾げた。
「こんなんじゃ、刺激が足りないって…?」
言って、ライダースジャケットのポケットから、何かを取り出し、愁の目前に晒す。
「コレだろ?探してんの?」
愁の鼻先に突き出したのは、昨晩の写真だった。
「あッ!」
「おっと」
かじりつく様に写真を奪おうとする愁から、加瀬は身を翻し躱す。
「返せよ!」
「オマエんじゃねェだろ」
「俺が写ってるから俺の写真だろ!」
「………」
加瀬は、愁を見つめ黙り込む。写真を奪おうと何度も飛び跳ねる愁は、その視線に気づき、睨み返した。
静かに愁を見下ろしていた加瀬は、小さく笑うと唇を舐めた。
「…っ」
形の良い唇から現れる深紅の舌の感触。それを知っているような感覚があった。
愁は、不意に視線を逸らし、足元を見る。
空調が静かに鳴っている。
突然、加瀬の指が愁のタンクトップを掴み上げ、愁を強引に引き寄せた。
「あ…!」
ぶつかる、と思ったときには、唇を唇で塞がれていた。
驚いた愁が何事かを喚こうと口を開くと、加瀬の舌が強引に咥内に侵入した。
「…ん!ぁ…ん」
加瀬の舌ピアスが、咥内を愛撫する。
愁は、抱き寄せられたまま、その胸を叩いたが、意外なことにびくともしなかった。
熱く、ひんやりとした感触が、咥内をくすぐる。愁は驚きながら受け入れていた。
どこかで、こんなことがあったような。
いや、そんなはずはない。
大人しくなった愁の唇を、加瀬はそっと離すと、糸を引いた唾液を舐めた。
「か…加瀬…」
下向いた愁は、加瀬の胸を叩き続けた。恐らく、耳まで赤くなっているに違いない。
なぜ赤らまなくてはならないのか、愁は自分が信じられなかった。
「シュウ」
加瀬が、耳元で囁いた。その声音に驚いて、愁は顔を上げる。
間近に美しい黒の双眸を見て、愁は目を瞠った。
「…セックス、させろ」
加瀬の長い黒髪が、愁の頬を撫でる。見上げれば、加瀬の形の良い唇と黒い瞳が見下ろしていた。
まるで愁の声が合図のように、一瞬の出来事だった。
バニラムスクの香りが愁の鼻を掠める。それはなぜか官能を思わせ、加瀬から放たれていることに気付き、愁は眉をひそめた。
「まだ、分からないって、顔してんな」
加瀬は、低く囁いた。
その声が緊張した色を含んでいることに気付き、愁はその顔を見た。
痛みを堪える様な加瀬の瞳が、愁の瞳と交わるなり、突如加瀬の手が、愁の顎を掴んだ。
「ここへ何しに来た?」
愁の瞳を覗く加瀬の瞳が、細められる。
「俺に、またレイプされに来たわけじゃねェだろ?」
「…っ」
愁は、言葉を失って、加瀬を見た。加瀬は、唇を歪めて微笑を浮かべると、愁の首筋に顔を埋めた。
「…!ア…!」
加瀬の指が、乱雑にベルトを取り去ると、投げ捨てる。加瀬はそのまま、愁の肌を強く吸い上げた。
チクリ、と肌は痛んだ。加瀬は、紅く残っているベルトの跡を丁寧に舐めるように、愁の首筋を辿っていく。
愁は、拒むこともできずに、徐々に熱くなっていく肌を感じていた。
「…ッ、…ぁ…」
不意に加瀬の指が、そっと愁の首を締め上げる。
愁は、体を強張らせ、僅かに開いた唇から、呻きを漏らした。
「…ん、ぁ、ぅ…」
反射のように、身体の奥底で甘い何かが目覚めようとするのを静かに感じていた。
すでに、抗えない何かが、体を支配していた。
見上げた愁の瞳を、真っすぐに見返して、加瀬は小さく笑うと、その指に力を加えた。
「…ッ」
白く染まっていく視界の中で、愁は、加瀬の瞳を見ていた。黒い双眸は細められ、愁を見る。
まるで内側を覗かれているような感覚に愁は陥った。
「ハ…ほっせェ首だな」
嘲笑うように加瀬は言い捨てると、締め上げていた首を手放した。気管に入り込む酸素に、愁は激しく咳込むと加瀬を見上げた。
加瀬は冷たく愁を見下ろし、首を傾げた。
「こんなんじゃ、刺激が足りないって…?」
言って、ライダースジャケットのポケットから、何かを取り出し、愁の目前に晒す。
「コレだろ?探してんの?」
愁の鼻先に突き出したのは、昨晩の写真だった。
「あッ!」
「おっと」
かじりつく様に写真を奪おうとする愁から、加瀬は身を翻し躱す。
「返せよ!」
「オマエんじゃねェだろ」
「俺が写ってるから俺の写真だろ!」
「………」
加瀬は、愁を見つめ黙り込む。写真を奪おうと何度も飛び跳ねる愁は、その視線に気づき、睨み返した。
静かに愁を見下ろしていた加瀬は、小さく笑うと唇を舐めた。
「…っ」
形の良い唇から現れる深紅の舌の感触。それを知っているような感覚があった。
愁は、不意に視線を逸らし、足元を見る。
空調が静かに鳴っている。
突然、加瀬の指が愁のタンクトップを掴み上げ、愁を強引に引き寄せた。
「あ…!」
ぶつかる、と思ったときには、唇を唇で塞がれていた。
驚いた愁が何事かを喚こうと口を開くと、加瀬の舌が強引に咥内に侵入した。
「…ん!ぁ…ん」
加瀬の舌ピアスが、咥内を愛撫する。
愁は、抱き寄せられたまま、その胸を叩いたが、意外なことにびくともしなかった。
熱く、ひんやりとした感触が、咥内をくすぐる。愁は驚きながら受け入れていた。
どこかで、こんなことがあったような。
いや、そんなはずはない。
大人しくなった愁の唇を、加瀬はそっと離すと、糸を引いた唾液を舐めた。
「か…加瀬…」
下向いた愁は、加瀬の胸を叩き続けた。恐らく、耳まで赤くなっているに違いない。
なぜ赤らまなくてはならないのか、愁は自分が信じられなかった。
「シュウ」
加瀬が、耳元で囁いた。その声音に驚いて、愁は顔を上げる。
間近に美しい黒の双眸を見て、愁は目を瞠った。
「…セックス、させろ」
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