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気づけば、薄暗い部屋にいた。
「…ッつ、ててて…」
両腕が、引き攣るような痛みを訴えた。その両腕は背後に回され、椅子の背もたれを潜るようにして親指で拘束されていた。
思い出せば、確か先ほどまで手足は自由だった。こちらが動かなくなるまで殴る蹴るを繰り返した男たちは、消えていた。
口の中に血の味を思い出して、加瀬は唾を吐いた。
唇を拭うことも出来ずに、何時もの様に舐める。そこにも血の味を覚えて、諦めたように俯く。
闇の中に、誰かが近づく音が響いた。僅かに目を動かし音源を探すと、ドアが見えた。
間を置かずに、ドアは開き、男を従えた貴遠が部屋に現れた。貴遠は加瀬を見るなり、近づき、甲で殴りつけた。
「…ッつ…、いてぇな、いきなり」
加瀬は睨み上げると、貴遠は見下ろしていた。ハンカチを差し出す男を手で下げると、貴遠は静かに口を開いた。
「お前たちは下がっていい」
貴遠は加瀬の手に施した手枷を外させると、加瀬に近づく。
「へぇ、お兄ちゃんが相手してくれるんだ?」
男たちが静かに部屋から出るのを待って、貴遠は加瀬の長い髪を掴み上げた。
「綺麗な顔が台無しだな?礼?」
「別に大した傷じゃねぇよ。体ばっか痛めつけんのはお前の指図だろ」
礼と呼ばれた加瀬は、再び唾を吐く。貴遠は避けるそぶりもなく、唾はその脇を掠め暗闇に消えた。
「で、俺に何の用?まさか、寝取られた腹いせじゃねぇだろ?」
「まさか。今日は、お前に報告することがあったんでね」
加瀬は、僅かに眉を寄せる。
「は?」
「俺はいままで用無しのこの俺がオマエよりも年上であったことを恨んでいたが、今は母に感謝している」
「妾腹のキオンが何言ってんだよ」
加瀬の言葉に瞬時に貴遠の目の色が変わる。あからさまな怒りを浮かべ、貴遠は加瀬の頬を殴った。
「その妾腹に殴られる屈辱の味はどうだ?礼?」
「大した味でもねェな」
「…ハッ、お前はまだ生かしておいてやる。大切な嫡男が死んだとなれば、婚礼が遠のくからな」
貴遠の言葉に、加瀬はふと真顔になる。
「婚礼?誰の」
「俺に決まっているだろう」
「…ちょっと、待て。あいつはどうなる」
「あいつ?あぁ、愁のことか」
貴遠は笑うと、加瀬の顔を覗き込んだ。
「お下がりでよければ、お前にやるよ、礼。奴隷でも、肉便器でも、お前の好きなようにすればいい。お前好みの、被虐嗜好の男だ」
貴遠は、加瀬の乳首辺りを指で弾く真似をし、立ち上がる。
「…子供を孕むことがねぇって点で好き勝手してきたのは、おまえの母親の入れ知恵か?このタマ無し野郎」
「…なんだと?お前こそ、本当のタマ無しにしてやろうか?」
「あぁ、好きなようにしろよ」
貴遠は再び加瀬の髪を掴む。
覗き込もうとする貴遠の額に、加瀬は頭突きを入れた。驚き、手を放した貴遠の隙を突くと、胸倉を掴んで引き倒した。
派手な音を立てて、貴遠は転がった。
加瀬は見下ろし、歯を見せて笑った。
「アレ?何してんの?オニイチャン?」
扉の向こうで足音が響く。加瀬は、男たちが部屋に雪崩込んでくるのを、静かに見つめた。
再び意識が無くなるまで、そう時間はかからなかった。
「…ッつ、ててて…」
両腕が、引き攣るような痛みを訴えた。その両腕は背後に回され、椅子の背もたれを潜るようにして親指で拘束されていた。
思い出せば、確か先ほどまで手足は自由だった。こちらが動かなくなるまで殴る蹴るを繰り返した男たちは、消えていた。
口の中に血の味を思い出して、加瀬は唾を吐いた。
唇を拭うことも出来ずに、何時もの様に舐める。そこにも血の味を覚えて、諦めたように俯く。
闇の中に、誰かが近づく音が響いた。僅かに目を動かし音源を探すと、ドアが見えた。
間を置かずに、ドアは開き、男を従えた貴遠が部屋に現れた。貴遠は加瀬を見るなり、近づき、甲で殴りつけた。
「…ッつ…、いてぇな、いきなり」
加瀬は睨み上げると、貴遠は見下ろしていた。ハンカチを差し出す男を手で下げると、貴遠は静かに口を開いた。
「お前たちは下がっていい」
貴遠は加瀬の手に施した手枷を外させると、加瀬に近づく。
「へぇ、お兄ちゃんが相手してくれるんだ?」
男たちが静かに部屋から出るのを待って、貴遠は加瀬の長い髪を掴み上げた。
「綺麗な顔が台無しだな?礼?」
「別に大した傷じゃねぇよ。体ばっか痛めつけんのはお前の指図だろ」
礼と呼ばれた加瀬は、再び唾を吐く。貴遠は避けるそぶりもなく、唾はその脇を掠め暗闇に消えた。
「で、俺に何の用?まさか、寝取られた腹いせじゃねぇだろ?」
「まさか。今日は、お前に報告することがあったんでね」
加瀬は、僅かに眉を寄せる。
「は?」
「俺はいままで用無しのこの俺がオマエよりも年上であったことを恨んでいたが、今は母に感謝している」
「妾腹のキオンが何言ってんだよ」
加瀬の言葉に瞬時に貴遠の目の色が変わる。あからさまな怒りを浮かべ、貴遠は加瀬の頬を殴った。
「その妾腹に殴られる屈辱の味はどうだ?礼?」
「大した味でもねェな」
「…ハッ、お前はまだ生かしておいてやる。大切な嫡男が死んだとなれば、婚礼が遠のくからな」
貴遠の言葉に、加瀬はふと真顔になる。
「婚礼?誰の」
「俺に決まっているだろう」
「…ちょっと、待て。あいつはどうなる」
「あいつ?あぁ、愁のことか」
貴遠は笑うと、加瀬の顔を覗き込んだ。
「お下がりでよければ、お前にやるよ、礼。奴隷でも、肉便器でも、お前の好きなようにすればいい。お前好みの、被虐嗜好の男だ」
貴遠は、加瀬の乳首辺りを指で弾く真似をし、立ち上がる。
「…子供を孕むことがねぇって点で好き勝手してきたのは、おまえの母親の入れ知恵か?このタマ無し野郎」
「…なんだと?お前こそ、本当のタマ無しにしてやろうか?」
「あぁ、好きなようにしろよ」
貴遠は再び加瀬の髪を掴む。
覗き込もうとする貴遠の額に、加瀬は頭突きを入れた。驚き、手を放した貴遠の隙を突くと、胸倉を掴んで引き倒した。
派手な音を立てて、貴遠は転がった。
加瀬は見下ろし、歯を見せて笑った。
「アレ?何してんの?オニイチャン?」
扉の向こうで足音が響く。加瀬は、男たちが部屋に雪崩込んでくるのを、静かに見つめた。
再び意識が無くなるまで、そう時間はかからなかった。
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