「七人の落ちこぼれ」

真田直樹

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公安の影

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深夜一時。

歌舞伎町のネオンが、雨に濡れて揺れていた。

七人の刑事は、歌舞伎町の外れにある古いビルの屋上に集められていた。

潜入捜査は一時中断。

空気は重かった。

最初に口を開いたのは
藤川優斗だった。

「神崎係長」

神崎は街を見下ろしている。

優斗が続ける。

「さっき言ってましたよね」

「警察内部に裏切り者がいるって」

神崎は振り返らない。

静かな声。

「いる」

富田さゆりが聞く。

「どうして分かるんですか」

神崎は答えた。

「黒田龍司は普通の犯罪者じゃない」

黒田。

歌舞伎町の裏社会を支配する男。

しかし神崎は首を振る。

「奴はただのフロントだ」

優斗が聞く。

「フロント?」

神崎は言う。

「本当の組織は別にある」

そして。

ゆっくり振り向いた。

「国家レベルの犯罪組織だ」

七人が黙る。

神崎はポケットから古い写真を出した。

十年前の事件。

そこには港の倉庫が写っている。

神崎が言う。

「十年前」

「東京湾で大規模な武器密輸事件があった」

その事件を追っていたのが

公安部外事課。

つまり神崎だった。

そのとき。

密輸組織の背後にいたのは

外国の犯罪ネットワーク。

武器
資金
情報

すべてが日本に流れていた。

だが。

捜査は突然止められた。

理由は一つ。

警察内部の情報漏洩。

新田里奈が言う。

「つまり」

「その組織が今も動いている?」

神崎はうなずく。

「黒田はその資金管理役だ」

佳祐が拳を握る。

「じゃあ逮捕すれば」

神崎は遮った。

「証拠がない」

そして続ける。

「証拠がない理由は」

低い声。

「警察内部に味方がいるからだ」

その言葉で、七人の間に沈黙が落ちた。

誰も言葉を出さない。

そして。

神崎は言った。

「問題は」

「そいつが誰かだ」

 裏切り者

翌日。

警視庁本部。

人材特別調整係の部屋。

七人はテーブルを囲んでいた。

しかし。

空気は明らかに変わっていた。

さゆりが小さく言う。

「信じられない」

「警察の中にスパイなんて」

勝巳が腕を組む。

「珍しくない」

冷たい声。

「大きい組織には必ずいる」

そのとき。

神崎が入ってきた。

机に一つのファイルを置く。

「内部調査をした」

優斗が聞く。

「もう分かったんですか」

神崎は答えない。

代わりに言った。

「情報が漏れたのは三回」

資料を開く。

一回目
→ 潜入捜査情報

二回目
→ 黒田の監視計画

三回目
→ 七人の配属

里奈が気づく。

「……つまり」

神崎は言った。

「この七人の情報も漏れている」

部屋の空気が凍る。

佳祐が机を叩く。

「誰だ!」

神崎は静かに言う。

「落ち着け」

そして。

神崎はゆっくり言った。

「裏切り者は」

「この七人の中にいる可能性がある」

沈黙。

誰も動かない。

優斗が言う。

「冗談ですよね」

神崎は真顔だった。

さゆりが震えた声で言う。

「私たちが疑われてるんですか」

神崎は答える。

「そうだ」

そして続ける。

「俺も含めてな」

七人全員が顔を上げる。

「係長も?」

神崎はうなずく。

「この事件は」

「誰も信用できない」

その瞬間。

雅人のパソコンが音を鳴らした。

「待って」

画面を見ている。

優斗が聞く。

「どうした」

雅人の顔が青くなる。

「今」

「歌舞伎町の監視カメラに映った」

里奈が近づく。

画面を見る。

そこには

黒田龍司が映っていた。

しかし。

黒田の隣に立っている男を見た瞬間。

七人は凍りついた。

そこにいたのは。

警視庁の警察官だった。

しかも。

その顔は。

七人全員が知っている人物だった。

神崎が低く言う。

「……やはり来たか」

優斗が聞く。

「誰なんですか」

神崎は画面を見ながら言った。

「十年前の事件で」

「消えた男だ」

そして。

その男の名前を口にした。

その瞬間。

七人は理解する。

この事件は

ただの犯罪捜査ではない。

警察そのものを揺るがす事件だということを。

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