「七人の落ちこぼれ」

真田直樹

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消えた公安刑事

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雨が降っていた。

深夜二時。

警視庁の救急室。

神崎隼人はベッドに横になっていた。

肩の銃創は幸い貫通していた。

命に別状はない。

だが。

部屋の空気は重かった。

優斗が窓の外を見ている。

新宿の夜景。

遠くに
歌舞伎町のネオンが見える。

優斗が言った。

「黒田は逃げました」

神崎は静かに答える。

「想定内だ」

部屋には七人全員がいた。

藤川優斗
新田里奈
尾上紀子
内田佳祐
小林勝巳
富田さゆり
丹羽雅人

誰も座らない。

神崎を見ていた。

里奈が口を開いた。

「係長」

神崎は目を閉じたまま答える。

「十年前の話か」

里奈はうなずいた。

「黒田の背後にいる組織」

「あなたは知っている」

神崎は少し沈黙した。

そして。

ゆっくり目を開いた。

「十年前」

神崎が言った。

「東京湾で武器密輸事件があった」

公安部が追っていた。

組織の名前は

オルフェウス。

国際犯罪ネットワーク。

武器
資金
情報

世界中に広がる影の組織。

勝巳が言う。

「そんな組織が日本に?」

神崎はうなずく。

「日本は資金洗浄に最適だからだ」

そのとき。

密輸ルートを管理していたのが

黒田龍司。

だが黒田は幹部ではない。

ただの管理人。

佳祐が聞く。

「じゃあ黒幕は」

神崎は答えた。

「まだ日本にいる」

さゆりが言う。

「それで?」

神崎の目が暗くなる。

「その事件で」

「一人の公安刑事が消えた」

優斗が聞く。

「消えた?」

神崎はゆっくり言った。

「俺の相棒だ」

その男の名前は

高城修一。

公安部のエース刑事。

潜入捜査のスペシャリスト。

神崎と十年以上コンビを組んでいた。

事件の日。

東京湾の倉庫で

密輸組織を追い詰めた。

あと少しで逮捕だった。

しかし。

突然。

組織が逃げた。

勝巳が言う。

「情報漏れ」

神崎はうなずく。

「警察内部から情報が漏れた」

その結果。

組織は逃亡。

証拠は消えた。

そして。

高城も消えた。

雅人が小さく言う。

「まさか」

神崎は静かに言った。

「裏切った」

部屋が凍る。

高城修一。

公安のエース。

その男が

組織に寝返った。

里奈が言う。

「でも」

「なぜ」

神崎は答える。

「分からない」

十年間。

神崎は探していた。

しかし。

高城の足取りは完全に消えていた。

そのとき。

雅人のパソコンが鳴った。

「待って」

画面を見る。

監視カメラ。

歌舞伎町。

優斗が聞く。

「何が映った」

雅人の顔が青くなる。

「この人」

画面を拡大する。

そこに映っていた男。

黒田龍司の隣。

スーツ姿。

五十代。

鋭い目。

神崎が立ち上がった。

傷を押さえながら。

そして。

震える声で言った。

「……高城」

十年前に消えた公安刑事。

高城修一。

彼は生きていた。

そして今。

黒田の組織の中心にいる。

優斗が呟く。

「つまり」

神崎が答える。

「オルフェウスはまだ動いている」

そして。

低い声で言った。

「次は戦争になる」

七人の刑事はまだ知らない。

この事件が

ただの犯罪ではなく

国家レベルの陰謀に繋がっていることを。
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