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初めての“好きだよ”をはっきり言う回
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――言葉にする勇気――
それは、江の島デートから数日後の放課後だった。
部活の音が遠くから聞こえる校舎の屋上。
夕焼けがフェンス越しに広がっていて、空気はまだ少し冷たい。
里奈と優斗は並んで立っていた。
特別な約束があったわけじゃない。
なんとなく一緒に帰る流れで、なんとなく屋上に寄っただけ。
でも、二人とも分かっていた。
今日は、何か言わなきゃいけない気がしていた。
「この前の電車さ」
里奈が先に口を開く。
「私、完全に寝てたよね」
優斗は小さく笑う。
「うん。めちゃくちゃ」
「……恥ずかしい」
里奈は頬を押さえる。
「でも」
優斗は少し間を置いてから言った。
「嫌じゃなかった」
里奈は顔を上げる。
「むしろ、安心した」
風がフェンスを鳴らす。
優斗は言葉を探すように視線を泳がせ、それから意を決したように里奈を見る。
「俺さ」
胸がどくん、と鳴る。
「里奈といると、落ち着くんだ」
里奈は黙って聞いている。
「楽しいし、緊張もするし、嫉妬もするし……」
苦笑して続ける。
「正直、めんどくさい感情ばっかだけど」
一歩、近づく。
「全部ひっくるめて」
優斗は深く息を吸った。
そして、はっきり言った。
「里奈が好きだよ」
初めてだった。
ごまかさない。
照れ隠しもしない。
ちゃんとした“好きだよ”。
里奈の目が大きく見開かれる。
胸の奥が熱くなって、言葉が詰まる。
少し遅れて、里奈も前に出た。
「……ずるい」
「え?」
「そんな言い方されたら」
里奈は小さく笑って、でも目は潤んでいた。
「私も言わなきゃじゃん」
優斗の手を、そっと握る。
「優斗」
一拍置いて。
「私も、好きだよ」
今度は里奈の番だった。
声は震えていたけれど、まっすぐだった。
優斗の表情が、一瞬固まり、次の瞬間ふっと緩む。
まるで重たい荷物を下ろしたみたいに。
「……よかった」
それだけ言って、里奈の手を強く握り返す。
夕焼けが二人の影を重ねる。
キスもしない。
抱きしめもしない。
でも、指と指が絡まったその感触だけで十分だった。
帰り道。
並んで歩きながら、里奈がぽつりと言う。
「言葉にすると、なんか変だね」
優斗はうなずく。
「でも、大事」
「うん」
二人は顔を見合わせて笑った。
初めての“好きだよ”。
それは派手じゃなくて、静かで、少し不器用で。
でも確かに、二人の関係を一段深くした言葉だった。
それは、江の島デートから数日後の放課後だった。
部活の音が遠くから聞こえる校舎の屋上。
夕焼けがフェンス越しに広がっていて、空気はまだ少し冷たい。
里奈と優斗は並んで立っていた。
特別な約束があったわけじゃない。
なんとなく一緒に帰る流れで、なんとなく屋上に寄っただけ。
でも、二人とも分かっていた。
今日は、何か言わなきゃいけない気がしていた。
「この前の電車さ」
里奈が先に口を開く。
「私、完全に寝てたよね」
優斗は小さく笑う。
「うん。めちゃくちゃ」
「……恥ずかしい」
里奈は頬を押さえる。
「でも」
優斗は少し間を置いてから言った。
「嫌じゃなかった」
里奈は顔を上げる。
「むしろ、安心した」
風がフェンスを鳴らす。
優斗は言葉を探すように視線を泳がせ、それから意を決したように里奈を見る。
「俺さ」
胸がどくん、と鳴る。
「里奈といると、落ち着くんだ」
里奈は黙って聞いている。
「楽しいし、緊張もするし、嫉妬もするし……」
苦笑して続ける。
「正直、めんどくさい感情ばっかだけど」
一歩、近づく。
「全部ひっくるめて」
優斗は深く息を吸った。
そして、はっきり言った。
「里奈が好きだよ」
初めてだった。
ごまかさない。
照れ隠しもしない。
ちゃんとした“好きだよ”。
里奈の目が大きく見開かれる。
胸の奥が熱くなって、言葉が詰まる。
少し遅れて、里奈も前に出た。
「……ずるい」
「え?」
「そんな言い方されたら」
里奈は小さく笑って、でも目は潤んでいた。
「私も言わなきゃじゃん」
優斗の手を、そっと握る。
「優斗」
一拍置いて。
「私も、好きだよ」
今度は里奈の番だった。
声は震えていたけれど、まっすぐだった。
優斗の表情が、一瞬固まり、次の瞬間ふっと緩む。
まるで重たい荷物を下ろしたみたいに。
「……よかった」
それだけ言って、里奈の手を強く握り返す。
夕焼けが二人の影を重ねる。
キスもしない。
抱きしめもしない。
でも、指と指が絡まったその感触だけで十分だった。
帰り道。
並んで歩きながら、里奈がぽつりと言う。
「言葉にすると、なんか変だね」
優斗はうなずく。
「でも、大事」
「うん」
二人は顔を見合わせて笑った。
初めての“好きだよ”。
それは派手じゃなくて、静かで、少し不器用で。
でも確かに、二人の関係を一段深くした言葉だった。
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