同級生

真田直樹

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キス後、里奈がまた家で大混乱する夜

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――静かな部屋で、心だけ大騒ぎ――

玄関のドアを閉めた瞬間だった。

「……はぁ……」

新田里奈は、思わずその場にしゃがみ込んだ。

心臓が、まだ早い。

屋上の夕焼け。
優斗の真剣な目。
頬に触れた指先。
そして――ほんの一瞬、重なった唇。

(キス……した……)

声に出した途端、全身が熱くなる。

里奈は靴を脱ぎ散らかしたまま自分の部屋に直行して、布団にダイブした。

「むりむりむりむり……!」

枕に顔を埋めて、足をばたばた。

昨日はハグで大混乱。
今日はキス。

進展が早すぎる。

胸の奥がきゅーっと締まって、でも同時に、ふわっと軽い。

仰向けになって天井を見つめる。

(あんな顔するんだ……優斗)

緊張して、震えてて、それでもちゃんと「いい?」って聞いてくれた。

里奈は布団の端を握りしめる。

(優しすぎでしょ……)

スマホを手に取る。

通知はまだ来ていない。

画面には、江の島の夕焼けの写真。
そこに写る二人の影。

里奈はその写真を見つめながら、そっと唇に指を当てた。

……何も変わってない。

でも、確かに“初めて”だった。

胸がまた高鳴る。

「軽かった……」

キスは一瞬だったのに、余韻だけがずっと残っている。

里奈は再び布団を転がる。

右。
左。
うつ伏せ。

「……ああもう」

枕を抱きしめて、静かに叫ぶ。

(これ、恋人ってレベル超えてない?)

今までは、

手をつないで、
抱きしめられて、
それだけで精一杯だったのに。

今日は“キス”。

里奈は膝を抱えてベッドに座り直す。

(私、ちゃんと大人になれてるのかな)

少し不安になって、でもすぐに思い直す。

優斗の「大事すぎてどうしていいか分かんない」という言葉。

あれは、嘘じゃなかった。

里奈は小さく笑った。

「同じだよ……」

そのとき、スマホが震える。

優斗から。

無事帰った?

里奈は一瞬ためらってから返す。

帰った
優斗は?

すぐに既読。

俺も
……さっきのこと、変じゃなかった?

胸がきゅっとなる。

里奈は、指を止めて、深呼吸してから打った。

変じゃない
ちゃんと嬉しかった

少し間があって。

よかった
正直、めちゃくちゃ緊張した

里奈は思わず笑う。

私も
今、布団で転がってる

既読。

数秒後。

想像できる

「なんで分かるの……」

里奈はスマホを胸に抱きしめて、また布団に倒れ込んだ。

天井を見つめながら、里奈は思う。

まだキスしただけ。
抱き合っただけ。

でも、それだけで世界が少し変わった。

誰かの腕の中にいた感覚。
誰かと唇を重ねた記憶。

それが全部、優斗だった。

里奈は布団の中で小さく丸まる。

(明日、絶対また目合わせられない……)

そう思いながらも、口元は緩んでしまう。

キス後の夜は、静かな部屋とは裏腹に、
里奈の心だけが大騒ぎしていた。
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