『夜明けのミッドナイト』

真田直樹

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第一部 出会い

第12章 初ライブ

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第12章 初ライブ

春が過ぎ、初夏の空気が街に流れ始めていた。

高校の文化祭当日。

校門の前には大きな看板が立っている。

「文化祭」

校庭には屋台。
体育館では演劇。
校舎の廊下には人の笑い声が響いていた。

藤川優斗は、体育館の裏口で立っていた。

胸が少しざわついている。

その理由は――

今日、演奏するからだった。

初ライブ。

喫茶ミッドナイトで始まったセッションが、
文化祭のステージに出ることになった。

「優斗!」

後ろから声がする。

新田里奈だった。

手を大きく振りながら走ってくる。

「緊張してる?」

優斗は少し笑う。

「ちょっと」

里奈は言う。

「大丈夫!」

「失敗しても文化祭だし!」

その後ろから内田桂一が歩いてきた。

「その考え方は危険だ」

里奈が言う。

「桂一はいつも真面目!」

桂一は静かに言う。

「成功確率は低い」

優斗は苦笑した。

「今それ言います?」

そのとき、体育館のドアが開いた。

尾上紀子が顔を出す。

「もうすぐ出番だよ」

ピアノ担当の紀子は、落ち着いた表情だった。

しかし指先が少し震えていた。

優斗はそれに気づく。

「紀子も緊張してる?」

紀子は小さく笑う。

「少し」

「人前で弾くのは初めてだから」

そこへ富田さゆりが来た。

「皆いる?」

さゆりは今日、司会の手伝いをしていた。

「客席、けっこう人いるよ」

里奈が目を輝かせる。

「本当!?」

その後ろから丹羽雅人も来た。

「そろそろだ」

短い言葉だった。

しかし、皆の背中を押すような声だった。

そのとき、優斗のスマートフォンが鳴った。

画面を見る。

小林勝巳

優斗は電話に出た。

「マスター?」

電話の向こうから、落ち着いた声が聞こえた。

「聞いた」

「ライブやるらしいな」

優斗は笑った。

「はい」

勝巳は少しだけ笑った。

「ジャズはな」

「失敗してもいい」

優斗は驚く。

「え?」

勝巳は続けた。

「ただ」

「楽しめ」

電話が切れる。

優斗は深呼吸した。

体育館の中から声が聞こえる。

「次は――」

「バンド演奏です!」

さゆりの声だった。

「尾上紀子と仲間たち!」

里奈が言う。

「いこう!」

五人はステージの裏から歩き出した。

ライトがまぶしい。

客席には学生たちがいる。

ざわざわしている。

優斗の心臓が少し速くなる。

紀子がピアノの前に座る。

優斗はマイクの前に立った。

桂一が機材を調整する。

雅人がドラムの前に座る。

里奈が手を振る。

「こんにちはー!」

客席から少し笑いが起きた。

紀子が最初の音を弾く。

優しいメロディー。

体育館に広がる。

ドラムが入る。

ギターが重なる。

音が一つになった。

優斗は思った。

(これが…ライブ)

ミッドナイトで始まった音楽が、

今、ここで鳴っている。

客席の空気が少し変わった。

最初はざわついていた学生たちが、
少しずつ静かになる。

そして――

曲が終わる。

一瞬の静寂。

次の瞬間。

拍手が起きた。

大きくはない。

でも、確かに拍手だった。

里奈が叫ぶ。

「やったー!」

優斗は笑った。

紀子も笑っている。

桂一も少し笑っていた。

雅人は静かにうなずいた。

さゆりは舞台袖で拍手している。

そのとき優斗は思った。

まだ小さなステージ。

まだ小さな拍手。

それでも――

この瞬間が

七人の夢の

最初の一歩になることを。

このとき誰も知らない。

この小さな文化祭ライブが

やがて

伝説の音楽プロジェクトの始まりになることを。
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