四人の令嬢と公爵と

オゾン層

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事の発端

婚約解消から婚約へ

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 ラヴェルト公爵家

 この名はロズワートも耳伝いに知ってはいた。


「聞いたことがある。隣国であるベルフェナールは、人間以外の種族で溢れた強豪国であると。そしてその国を治めるラヴェルト公爵家は、『化物公爵』として恐れられていると!!」

「しかしながら、ラヴェルト公爵家の財政力と戦力は他の国と比にならないほどに勝るものです。そのような場所な嫁げたのなら、どれほど我が王国に貢献できるのでしょうか」


 早くガルシア令嬢達を追いやりたいのか、アレッサは結論付けるように言葉を足した。それに賛同するのも紛れもなく王太子、ロズワートしかいない。


「そうだ!それもそうだ!いくら辺境伯の田舎娘といえど、婚約成立で結婚にまで辿り着けば、我が国も安泰ではないか!それに公爵家は兄弟がたくさんいただろう?ならば人数であぶれる問題もない!早速婚約の手続きをしてやろう!」

「お、お待ちくださいロズワート様」


 慌てて口を出したのはオリビアだったが、ロズワートはその声に舌打ちをした。


「なんだ!婚約解消された令嬢がこれ以上キズモノにならなかっただけ良いではないか!?これ以上私達を困らせるな!!貴様らのような性根の腐った田舎娘は、王国に貢献することさえ光栄だと思え!!」


 ロズワートはそう吐き捨てると、呼び止めるオリビアの声も聞かずにアレッサと共に立ち去っていった。



__________



 そうして今、ガルシア姉妹を乗せた馬車は、隣国のベルフェナールへと向かっていた。

 今乗っている馬車はベルフェナールからの使いがよこした者で、あちらの御者は付き添いに来た姉妹達の使用人が軽く悲鳴をあげるほどに大層背が高く細い体をしており、黒いスーツに身を包んでいた。
 その御者が今、馬車の運転をしているのである。

 馬車の中は、鬱蒼とした空気で膨れ上がっており、誰もかれもが顔を青くしていた。
 それもそのはずである。姉妹達が耳にしていたラヴェルト公爵家の噂……『化物公爵』について聞いたことがあったからだ。



 『化物公爵』……隣国の公爵がそう呼ばれるのには、その容姿にあったとされる。

 ラヴェルト公爵家の現当主とも言える兄弟達は、皆人ならざる姿をしている。それは人間とは別の種族であるからというのもあるが、それだけではなく彼らはとても恐ろしい姿をしているのだという。

 見た者の中には失神する者もいたそうで、その話を風の噂で聞いていた姉妹達はその公爵家に嫁ぐことを酷く恐れていた。

 しかし、王太子の権力もあり婚約の話は順調に進み、ガルシア姉妹の両親にも事情を通すことなく成立してしまったのだ。



 揺れる馬車の中、姉妹達はただただ憂鬱で仕方なかった。
 最後に両親との別れを告げることもできず、御者に促されるまま乗ってしまったこの状況。しかし、御者が親切に促してくれたことは正直に嬉しかった。


「お気になさることは御座いません。申し遅れました、私は公爵家御用達の御者、ガハルと申します。以後お見知り置きを」


 姉妹達が謝ろうとした際も御者…ガハルはそう言って姉妹達を快く迎えてくれたのだ。他所の国の令嬢を無理矢理嫁がせようとしている王国の粗相を寛容にあしらってくれているようで。
 ただそれでも、姉妹達の気が晴れるわけではなかった。


「……お姉様」


 ルーナは、か細い声でオリビアを呼んだ。


「私、ロズワート様に笑顔が汚いと言われました。そんなに私の顔は醜いのでしょうか」

「そんなことはありませんよ、ルーナ。貴女は私達のことをいつも笑顔にしてくれだじゃありませんか」


 オリビアはそう言って励ますが、ルーナの顔は全く笑っていなかった。


「私も、頭の病気があると言われました。でももしかすると、病気なのでしょうか?」


 エレノアも続いて話すが、ロズワートの話していたこと全てを理解できてはいないようで、落ち込みつつもキョトンともしていた。


「大体!私は昔っからロズワート様のああいうところが嫌でしたのに!!粗暴だなんて……あんまりですわ」


 クロエは強気に話したが、やはり堪えていたのだろう。次第に言葉尻が小さくなっていく。


「……みんな。私達が何を言おうと、これはロズワート王太子が宣言したこと。受け入れて、これからのことを考えましょう。大丈夫、私達はこれまでも4人で頑張ったではありませんか。今回のことだって、きっと大丈夫……」


そう言うオリビアだったが、それでも今の状況を受け入れがたいと感じている自分を悔やんでいた。
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