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婚約
ロズワートとアレッサ
しおりを挟む__正午。
アミーレアの王宮。その中庭にて、ロズワートとアレッサは呑気に茶会を催していた。
白い丸テーブルには高価なティーカップや菓子が置かれ、二人はそこに対面する形で席についていた。
二人共浮かれている様子で、楽しそうに紅茶を嗜んでいる。
「あの令嬢達がいなくなって清々したよ。10年もあの四人に振り回されたが、ようやく真実の愛を見つけることができたからね」
「ふふ、令嬢様に失礼ですわよ」
なんとも見当違いな会話をする二人は、全く別の思惑を抱いていた。
ようやく。ようやくだ。
あの田舎娘達と縁を切れた。
昔からあの令嬢達は邪魔だった。好みのタイプは一人もいないし皆つまらない。
あんなの、父上の言いつけが無ければ付き合っていなかった。
だが、辛抱していた甲斐はある。
1年前に彼女が来てくれたからだ。
アレッサはこの世の誰よりも美しく、そして健気な女性だ。
こんなに素敵な女性を放って置くことなどできるはずがない。
たった1年で私達は相思相愛になったが、此処で邪魔者になったのがあの四人だった。
四人は、アレッサを虐めていた。
アレッサから聞いた数々の所業を、私は見逃せるわけがなかった。
私にはアレッサがいればそれでいい。
彼女を傷つけるものは、私が許さない。
だから、私はあの女共をあの『化物公爵』のいる隣国に追いやったんだ。
奴らは自国と隣国の橋渡しに相応しい。
精々アミーレア繁栄の礎となればいいさ。
そして私が国王になった暁には、アレッサを妃として迎え、二人で生きていくんだ。
ロズワートは、自分の成したことを誇りに感じていた。
ちょろい男。
ちょっと優しくしたらすぐに落ちるとか、阿呆でしかないわ。
こんな奴、好きなわけないじゃん。
ただ顔とプロポーションが良かったから近づいただけ。あ、あと王家の一族だったから?
にしても、あの令嬢も気の毒だわ。
10年も婚約候補になってたんでしょ?それで捨てられるとか可哀想。原因私だから言えた口じゃないけど。
でも、あんな女好きになるやつなんていないでしょ?
10年の年季物より私みたいな新品の方が男は喜ぶのよ。この美貌に勝るものなんて何も無いわ。
ああ、新しいドレスが欲しいわ。それに指輪も、首飾りも。もっと綺麗で大きな宝石も欲しい。
まあ、今私の目の前にいる彼がどうにかしてくれるのだけど。
彼が国王になれば、私が妃になるのは間違いないわ。
そしたら今よりもっと充実した生活が送れるのでしょうね。
楽しみだわ。
アレッサは、仮定している未来に目を輝かせていた。
「それにしても、父上は何故あれほどまでに怒っていたのだ?」
「何故でしょうかね?」
「ガルシア辺境伯など、我が国の手中なのだから従わせることなど容易いであろうに」
二人は知らなかった。
外交の支えであるガルシア領がベルフェナールに占領されたことも。
国王であるアグナスがベルフェナールから送られてきた手紙に苦悶していたことも。
今の二人には知る由もなかった。
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