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第三章 出会いと契約
閑話 カルナーク戦線02
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ハンス大佐は厳しい戦況の中、常に私に構ってくれた。
二日もすると口の動きにも慣れてきて、私は幼女のような喋り方を卒業することが出来た。
すると、私にとって困惑することが起きた。
大佐は私を副官としてではなく、自分の娘のように扱っていたのだ。
自分を異世界派遣軍の連隊長の副官として捉えていた私は困った。
人間の娘としてふるまうのはパートナーアンドロイドの役割だ。
だが、人間に求められるのならそうしなくてはならない。
悩んだ末に私はハンス大佐の娘として振舞うことにした。
それが、私が出来る大好きな人類への貢献だったからだ。
そうして数か月もすると、私は副官の任務をこなせるようになった。
「パパ、ダグラス隊から伝令です。サイクロプスが待ち伏せ、先頭の戦車が擱座、至急増援求む」
「またか……よし、クラレッタとシャーの隊を、指揮車の直掩から戦車を二両付けて前進させろ。敵が出た周辺をまとめて焼き払うんだ」
「パパ大丈夫? この指揮車が危険になったら、心配だよ」
当時の私はこうして甘えることで、ハンス大佐は喜ぶのだと思っていた。
今思えば単に私が甘えたかったのだろう。
まあ、そういうとダグラスは決まって
「あのおっさんは喜んでたよ、スケベだったから」
などと言うのだ。
この時期はまだそうではなかったはずだ。
大佐は私と、別れた奥さんと一緒に火星に移住した娘さんを重ねていたのだ。
だから二人きりの時だけだが、私がパパと呼ぶことも許してくれていたのだ。
「これ以上割ける戦力がない、やむを得ない。指揮をとれるアンドロイドは残り少ないし、ベテランの歩兵をこれ以上失えば連隊自体の戦闘能力に支障が出る。残った部隊は再編成を急がせろ」
このころは本当に大変だった。
連隊の指揮官クラスのアンドロイドはダグラス、シャー、ミャオ、クラレッタ、ミユキ、シャルル、ポリーナしかいなかった。
他は当時の自分と同じか、それ以下の自我が固まっていない歩兵型と装甲車両型SAしかいなかった。
そんな未熟な部隊は、サイクロプスと呼ばれるカルナーク原住の亜人種による待ち伏せにめっぽう弱かった。
サイクロプス。これは蔑称で、今ではアイアオ人と呼ばれる人種は、人類と明確に起源を別とする種族だ。
姿は頭部以外は人間と変わりないが、その顔が特徴的だった。
名称の通り、顔の上半分を占める巨大な単眼が特徴なのだ。
この単眼は明確には眼球ではなく、顔面に露出するほど肥大化した脳の表面を覆う保護膜が目のように見えているだけなのだという。
カルナーク人はこのアイアオ人の保護膜を生体レンズとして重宝しており、当初は戦艦や戦車の測距儀として用いるレンズを採取するため、各地に国営牧場を設置していた。
この生体レンズは拳銃弾程度ならはじくほど頑強でありながら、ゼラチン質で割れず歪まず、非常な高精度を誇ったという。
だが、この種族の真価はその目が捉える物にあった。
彼らの目は赤外線やレーダー波、粒子に電波、電磁波、量子通信の痕跡など、凡そ人間の肉眼には見えないものを捉えることが出来たのだ。
さらにはアイアオ人同士であればこの特性を生かして探知されづらい形での通信なども行える。
その上重火器の射撃管制を独自に行うことすらでき、この能力を生かした長距離狙撃や待ち伏せ戦法は大きな被害を出していた。
そうして、この待ち伏せ部隊の後を追っていた私たちは、忌まわしいあの街にたどり着いたのだ。
二日もすると口の動きにも慣れてきて、私は幼女のような喋り方を卒業することが出来た。
すると、私にとって困惑することが起きた。
大佐は私を副官としてではなく、自分の娘のように扱っていたのだ。
自分を異世界派遣軍の連隊長の副官として捉えていた私は困った。
人間の娘としてふるまうのはパートナーアンドロイドの役割だ。
だが、人間に求められるのならそうしなくてはならない。
悩んだ末に私はハンス大佐の娘として振舞うことにした。
それが、私が出来る大好きな人類への貢献だったからだ。
そうして数か月もすると、私は副官の任務をこなせるようになった。
「パパ、ダグラス隊から伝令です。サイクロプスが待ち伏せ、先頭の戦車が擱座、至急増援求む」
「またか……よし、クラレッタとシャーの隊を、指揮車の直掩から戦車を二両付けて前進させろ。敵が出た周辺をまとめて焼き払うんだ」
「パパ大丈夫? この指揮車が危険になったら、心配だよ」
当時の私はこうして甘えることで、ハンス大佐は喜ぶのだと思っていた。
今思えば単に私が甘えたかったのだろう。
まあ、そういうとダグラスは決まって
「あのおっさんは喜んでたよ、スケベだったから」
などと言うのだ。
この時期はまだそうではなかったはずだ。
大佐は私と、別れた奥さんと一緒に火星に移住した娘さんを重ねていたのだ。
だから二人きりの時だけだが、私がパパと呼ぶことも許してくれていたのだ。
「これ以上割ける戦力がない、やむを得ない。指揮をとれるアンドロイドは残り少ないし、ベテランの歩兵をこれ以上失えば連隊自体の戦闘能力に支障が出る。残った部隊は再編成を急がせろ」
このころは本当に大変だった。
連隊の指揮官クラスのアンドロイドはダグラス、シャー、ミャオ、クラレッタ、ミユキ、シャルル、ポリーナしかいなかった。
他は当時の自分と同じか、それ以下の自我が固まっていない歩兵型と装甲車両型SAしかいなかった。
そんな未熟な部隊は、サイクロプスと呼ばれるカルナーク原住の亜人種による待ち伏せにめっぽう弱かった。
サイクロプス。これは蔑称で、今ではアイアオ人と呼ばれる人種は、人類と明確に起源を別とする種族だ。
姿は頭部以外は人間と変わりないが、その顔が特徴的だった。
名称の通り、顔の上半分を占める巨大な単眼が特徴なのだ。
この単眼は明確には眼球ではなく、顔面に露出するほど肥大化した脳の表面を覆う保護膜が目のように見えているだけなのだという。
カルナーク人はこのアイアオ人の保護膜を生体レンズとして重宝しており、当初は戦艦や戦車の測距儀として用いるレンズを採取するため、各地に国営牧場を設置していた。
この生体レンズは拳銃弾程度ならはじくほど頑強でありながら、ゼラチン質で割れず歪まず、非常な高精度を誇ったという。
だが、この種族の真価はその目が捉える物にあった。
彼らの目は赤外線やレーダー波、粒子に電波、電磁波、量子通信の痕跡など、凡そ人間の肉眼には見えないものを捉えることが出来たのだ。
さらにはアイアオ人同士であればこの特性を生かして探知されづらい形での通信なども行える。
その上重火器の射撃管制を独自に行うことすらでき、この能力を生かした長距離狙撃や待ち伏せ戦法は大きな被害を出していた。
そうして、この待ち伏せ部隊の後を追っていた私たちは、忌まわしいあの街にたどり着いたのだ。
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